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第六話 ~魔族たちへ宣誓を行った~
しおりを挟む第六話
「おはよう、諸君。まずはこうして朝早い時間からこうして集まってくれたことに感謝する」
俺はそう言って話を始めた。
周りを見渡すと魔族たちが持つ感情が手に取るように理解できた。
まぁ『恐怖』が半分に『疑心』と『怒り』が残りと言ったところか。
「くくく……エルランド・ハーウッド。まぁこの名前を聞いて、怒りを覚える魔族は少なくないと思っている」
俺がそう言葉を放つと、怒りを持つ魔族の目が細くなった。まぁ当然の反応だろうな。
「処分しますか?エルランド様」
俺の後ろからルーシーがそう声をかけてきた。
姿が見えないが、そういう魔法か固有能力なのだろう。
「殺しはしない。彼らは立派な戦力だからな」
「そうですか。エルランド様は寛容ですね。必要になればいつでも声をかけてください」
俺がそう言葉を返すと、ルーシーの気配がスっと消えた。
まぁ、殺しに行った訳では無いだろう。
「さて。ここで諸君らに話しておくべきことがある」
俺はそう前置きをした上で話を続けた。
「この身体の持ち主。先代魔王 ラース・カラドボルグは『束縛』『洗脳』『隷属』の三つの固有能力を持っていた。諸君らもこの能力で先代魔王に『無理矢理従わされていた』そんな側面もあったのではないか?」
俺がそう問いかけると、眼下の魔族たちの少なくない数が視線を逸らした。
くくく……やはりそうか。
恐怖政治によって支配されていた記憶は根強いようだな。
その様子を見つめながら、俺はあらかじめ言おうと思っていたことを魔族たちに宣言をした。
「まずはここで諸君らに宣言しておこう。俺は先代魔王が行使していた三つの固有能力を諸君らに使用することは決して無い!!」
その言葉に、後ろに位置していたレティシアとルーシーは当然として、眼下の魔族たちも驚愕に包まれていた。
「この固有能力を知るために『四天王筆頭 リディア・レヴァンティン』には行使をした。だが、彼女にかけた洗脳や隷属も機を見て解除することを約束しよう」
そして、喧騒が収まらない中でも構わず俺は言葉を続けていく。
「諸君らから本当の意味での『信頼』を得るためには、固有能力に頼っていては行けないと思っているからだ。そして俺は、そんなものを使わなくとも信頼を得られると確信している!!」
「なるほど。それがエルランド様のやり方……なのですね……」
「ふふふ。とても素敵な殿方ですね。どこかの人間族の王とはやはり器が違います」
「くくく……でらまずは手始めとして、今日の人間軍との一戦での『勝利』を約束しよう!!そして、この俺が最前線に立つことで、味方であることを証明しようではないか」
俺がそう宣言をすると、眼下の魔族からは雄叫びが上がった。
くくく。それはそうだろう。格下だと侮っていた人間たちに連戦連敗を喫していたのだからな。
「この俺が諸君らの為に采配を振るう。魔王軍の勝利の為に共に邁進しようではないか!!」
俺はそう締めくくり、演壇を降りてレティシアの元へと歩いて行った。
後ろでは魔族たちが俺の名を叫んでいる。
その声は決して『怨嗟』の声では無い。
奴らの『期待』を裏切らないようにしなければな。
「お疲れ様です。エルランド様。流石の演説でした」
「まぁ大切なのはこれからだ。今の言葉が嘘にならないようにしなければな」
微笑みを浮かべるレティシアに俺はそう言葉を返した。
そして、隣に控えるルーシーに指示を飛ばした。
「ルーシー。東の城門前に『全魔族』を集結させろ。今すぐにだ」
「了解しました。直ちに」
彼女はそう言うと首を縦に振ったあと姿を消した。
「……全魔族ですか」
「そうだ。戦力の小出しは愚の骨頂だからな。今日の一戦を『圧勝』で終えることによって、さらに士気を上げて行くのが目的だ」
「なるほど。理解いたしました」
そして、俺は一つ笑みを浮かべながらレティシアの身体を抱き寄せる。
「さて。ルーシーが全魔族を集めるまでには一時間ほどと踏んでいる」
「ふふふ……そうですね。『多少の時間』は必要かと思いますからね」
俺の思考を読み取ったレティシアが蠱惑的な笑みを浮かべた。
「お前の身体を楽しませてもらうぞ、レティシア」
「はい。私もエルランド様に抱かれるのは幸せですので」
こうして、俺は昨夜と同じように彼女の身体を楽しみながら決戦までの時間を過ごして行った。
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