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第五話 ~レティシアと共に演説をする広間へと足を運んだ~
しおりを挟む第五話
「ご馳走様でした。ふふふ。朝からとても美味しかったですよ、ローレンス」
「お褒めに預かり光栄です。魔王様」
「俺のコーンスープもなかなかの味わいだった。王宮の一流シェフの作った食事と引けを取らないな」
「ありがとうございます。エルランド様。夕食も満足を頂けるよう、腕によりをかけてお待ちしております」
朝食を終えた俺とレティシアは、食後にフルーツのスムージーを飲んでいた。
そして時間を確認した俺はルーシーから指定されていた時間が近いことを知る。
「そろそろ良い時間だな。広間に向かうとしよう」
「了解しました。それでは広間までご案内いたします」
席を立った俺とレティシアは広間へと歩いて行った。
「ちなみにエルランド様はどのようなお話をされるつもりですか?」
広間へと向かう途中。レティシアが興味深そうな視線で俺にそう問いかけてきた。
「くくく。まぁ別に変なことを言うつもりは微塵も無い。俺が魔王軍に就任したことへの意気込みを話すだけだ」
「意気込み……だけでは無いと思いますが。ふふふ。それはこれからの楽しみにしておきますね」
そうしていると、俺たちの目の前にスっとルーシーが姿を現した。
「お疲れ様です。魔王様、エルランド様。広間には既に全ての魔王軍を集結させております」
「ふふふ。ご苦労さまでした、ルーシー」
「ありがとうございます。魔王様」
「お前の実力とレティシアの信頼の高さを見せてもらうことが出来て満足している。褒美がほしければ、今夜俺の部屋に来い」
「は、はい!!ありがとうございます、エルランド様」
赤い頬に潤んだ瞳。ルーシーが何を求めているかは一目瞭然だな。
くくく。今夜は彼女に楽しませてもらおうか。
そう話をしていると、目的地である広間を見渡せる場所へと辿り着いた。
「ではエルランド様。まずは私が話をさせていただきますね」
「了解だ。軽く場を温めてくれれば構わない」
「ふふふ。かしこまりました」
レティシアはそう言うと演壇に登り一礼をした。
その優雅な姿に、眼下の魔族が全員息を飲み、静けさに包まれた。
「皆さん。早朝からの呼び出しに答えて頂きありがとうございます」
彼女はそう言って配下に話し始める。
なるほど。レティシアは有象無象の部下に対しても『敬語』を使うんだな。
「本日は新しく魔王軍の『参謀』に就任した、エルランド・ハーウッド氏のお披露目と彼からのお話のために集まって頂きました」
彼女のその言葉に、眼下の魔族全員に緊張が走った。
くくく。まぁそうだろうな。
俺の名前はそれなりには知れ渡っているはずだ。
何せ『勝ち戦』だと思われていた場面から、連戦連敗の状況になり、『敗北寸前』の所まで追い込まれているのだからな。
そんな『敵の参謀』が味方になるとは夢にも思っていないだろうな。
「彼の名前を知らない者はここには居ないでしょう。エルランド氏の策略によって、数多くの魔族が死にました。人間軍との数多の戦で敗戦を喫しました」
魔族達の目が鋭くなり、少なくない否定的な声が聞こえてきた。
まぁ俺を恨んでいるのはリディアだけでは無いだろうな。
そんな人間をいきなり信用するのは無理と言える。
「そんな彼が、人間界の王の手によって謀殺されました。そして、その時に私はエルランド氏の魂を『先代魔王の身体』へと転生させました」
その言葉によって、騒いでいた魔族たちの言葉が再び消えることになった。
理由は『恐怖』だろうな。
先代魔王に『洗脳』と『隷属』を受けていた記憶が蘇っているのかも知れないな。
「ですが皆さん安心してください。エルランド氏は私たちの味方です」
レティシアのその言葉に、魔族たちには少なくない安堵の空気が広がるのを感じた。
「最高の頭脳に最強の身体を手にした彼が、私の配下に加わります。エルランド氏は共に人間軍と戦うことを約束してくれました」
彼女はそう言うと、俺の方へと視線を向けた。
そして、微笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「それではエルランド氏。お話をお願いします」
レティシアはそう言うと、演壇から降りてその場を俺に譲った。
「ご苦労だったな。レティシア」
「ふふふ。それではよろしくお願いいたします。エルランド様」
そして、俺はゆっくりと演壇へと登り、眼下に広がる魔王軍の面々を見下ろした。
ふむ……約一万と言ったところだな。
この数を一時間半で集めたというのだから優秀だと言えるな。
さて、話を始めるか。
俺は軽く息を吸って魔王軍の面々に向けて話を始めた。
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