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第2章
番外編 ⑱ ~星くんの恋愛相談
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番外編 ⑱
星視点
バスン!!
俺が蹴ったサッカーボールがゴールネットを揺らした。
「まずは俺が一点だな」
「……ちぃ。まぁそうだな」
蓮堂くんのディフェンスと言う名のラフプレーを掻い潜り、俺は右足を振り抜いた。
ゴールキーパーは着けないことにしているため、枠内に蹴り込めばゴールになる。
俺はゴールネットの近くに転がるボールを手にして、蓮堂くんに蹴り返す。
「さぁ、君のターンだ」
「ふん。細枝みたいな身体で俺のオフェンスを止められると思うなよ!!」
サッカーボールを受け取った蓮堂くんは、所定の位置に立つ。
そして、
「行くぜ!!」
「来い!!」
蓮堂くんが猛然とこちらにドリブルを仕掛けてくる。
右に一回フェイントを入れてから左へと切り込む。
このパターンのコンボは『すれ違いざまに肘打ち』
場所は頭に目掛けて飛んでくることが多い。
俺は上体を低く沈ませて彼の肘打ちをかわす。
「……ちぃ!!だが、そんな崩れた体勢で俺に追いつけるかよ!!」
俺に肘打ちをかわされた彼の行動は早かった。
ドリブルに切りかえてこちらを振り切ろうとする。
だが、その行動も読んでいた俺は、彼の足元にスライディングを仕掛ける。
「ぐぁっ!!」
「よし!!」
蓮堂くんからボールを奪った俺は彼から離れた位置までボールを所持して移動する。
「君の攻撃は失敗だね」
「……てめぇ。こっちのことを調べてやがったな」
忌々しそうな視線を向ける蓮堂くんに、俺はニヤリと笑う。
「君の『コンボ』のことなら全て頭に入れてあるよ。右にフェイントを入れた場合は、肘打ちの確率が高い。かわされた場合はドリブルに切り替えることもわかってたよ」
「くそがぁ!!」
本来なら手の内を晒すのは愚策だ。
でも、短気な彼には逆にこの方がダメージになる。
ディフェンスもオフェンスも単調になった彼を相手にするのは楽だった。
俺の攻撃では二点目を決めて、彼攻撃は再び失敗に終わった。
「さぁ。この攻撃で俺がゴールを決めれば俺の勝ちだ。そうしたら、もう二度と首藤さんにつきまとうことは辞めるんだな」
「……まだ勝負はついてねぇぞ!!勝った気になってるんじゃねぇぞ、星ぃ!!!!」
獰猛な表情の彼。だが、なんの怖さも感じない。
俺は右、左……フェイントを二つ入れてから彼の横を抜く。
「負けねぇ!!俺は負けねぇぞ!!」
必死に食らいつく蓮堂くんを抜き去り、俺はシュートの体制に入る。
結局。首藤さんはどこに居たんだろうな。
こうして俺が彼に勝つところを見てもらいたかったけどな。
……なんて、思ってしまったのが不味かった。
「喰らいやがれ!!!!」
「ぐぁ!!」
ボールでは無く、軸足にスライディングを受けた俺は、シュートを枠外に外してしまう。
「……やってくれたな、蓮堂くん」
「くくく……身体的接触はありだったな?……いやぁわざとじゃねぇよ。ボールに向かってスライディングをしたんだが、俺は『下手くそ』だからな、スライディングの位置をミスっちまったよ」
ズキズキと痛む軸足を引きずりながら、俺はディフェンスの位置に着く。
大丈夫だ。この程度の負傷なんか問題じゃない!!
「さぁ行くぜ星!!」
「来い!!」
……だが、負傷した軸足で彼を止めることは難しく、更には彼の肘打ちをモロに食らってしまい、片目も流血で塞がってしまう。
二対二の同点に持ち込まれ、俺の攻撃のターンだった。
「……くくく。いいざまだな、星」
「この攻撃を俺が決めれば俺の勝ちなのは変わらない」
軸足は依然として痛み、流血で片目は見えない。
それでも俺は……負ける訳には行かないんだ!!
俺がそう思ってた時だった。
『ターーーーイム!!!!』
「……え?」
「はあ?」
グラウンドに桐崎君の声が響いた。
「蓮堂くんに星くん。熱い勝負に水を差して悪かったね」
桐崎くんはそう言って俺たちのところに来る。
「何の用だよハーレム王」
不愉快そうな表情の蓮堂くんに桐崎くんはニコリと笑う。
「君の『多少の身体的接触による星くんの負傷』に関してはこちらから何かを言うことは無いよ」
「まぁな。これはルールのうちだからな」
ニヤリと笑う蓮堂くんに、桐崎くんは続けた。
「この戦いは『動画配信をしてる』という話は先にしていたよね?いやぁ視聴者から『血の映像は見たくない。せめて包帯くらい巻いてくれ』とメッセージが止まらなくてね」
桐崎くんはそう言うと、ノートパソコンの画面を見せた。
そこには彼の言うようなコメントに溢れていた。
「せめて星くんに包帯くらいは巻かせてくれないか?」
「……ちぃ。そういう事なら許してやるよ」
蓮堂くんは自分の不利を悟ったのか、了承をしてくれた。
「よし、蓮堂くんの許可が出たぞ!!首藤さん、星くんの手当をしてくれ!!」
「は、はい!!」
しゅ……首藤さん!!??
驚く俺の目の前に、救急箱を持った首藤さんが駆け寄ってくる。
そ、そうか。彼女は保健室に寄っていて、この展開になった時にスムーズに俺の治療をするために待機してたのか!!
桐崎くんは蓮堂くんに俺がこうして負傷させられることも視野に入れてたんだな。
ちょっとだけ……悔しいな……
「大丈夫ですか……星くん……」
「あはは……心配かけてごめん。でも大丈夫だよ、俺は負けない」
消毒液を染み込ませたガーゼで俺の傷を拭ってから、包帯を巻いていく。
「…………すぅ……はぁ」
「……首藤さん?」
治療を終えた首藤さんは、深呼吸をする。
その様子に、俺は訝しげな表情を浮かべた。
「おい!!治療が終わったんならさっさと勝負を再開させるぞ!!」
蓮堂くんの声がグラウンドに響く。
「首藤さん行くね」
「そ、その星くん!!」
首藤さんは決意を込めた目で俺を見る。
そして……
「ぜ、絶対に勝ってください!!」
「…………っ!!!!」
「はぁああああ!!!!???」
彼女は俺の唇にキスをした。
星視点
バスン!!
俺が蹴ったサッカーボールがゴールネットを揺らした。
「まずは俺が一点だな」
「……ちぃ。まぁそうだな」
蓮堂くんのディフェンスと言う名のラフプレーを掻い潜り、俺は右足を振り抜いた。
ゴールキーパーは着けないことにしているため、枠内に蹴り込めばゴールになる。
俺はゴールネットの近くに転がるボールを手にして、蓮堂くんに蹴り返す。
「さぁ、君のターンだ」
「ふん。細枝みたいな身体で俺のオフェンスを止められると思うなよ!!」
サッカーボールを受け取った蓮堂くんは、所定の位置に立つ。
そして、
「行くぜ!!」
「来い!!」
蓮堂くんが猛然とこちらにドリブルを仕掛けてくる。
右に一回フェイントを入れてから左へと切り込む。
このパターンのコンボは『すれ違いざまに肘打ち』
場所は頭に目掛けて飛んでくることが多い。
俺は上体を低く沈ませて彼の肘打ちをかわす。
「……ちぃ!!だが、そんな崩れた体勢で俺に追いつけるかよ!!」
俺に肘打ちをかわされた彼の行動は早かった。
ドリブルに切りかえてこちらを振り切ろうとする。
だが、その行動も読んでいた俺は、彼の足元にスライディングを仕掛ける。
「ぐぁっ!!」
「よし!!」
蓮堂くんからボールを奪った俺は彼から離れた位置までボールを所持して移動する。
「君の攻撃は失敗だね」
「……てめぇ。こっちのことを調べてやがったな」
忌々しそうな視線を向ける蓮堂くんに、俺はニヤリと笑う。
「君の『コンボ』のことなら全て頭に入れてあるよ。右にフェイントを入れた場合は、肘打ちの確率が高い。かわされた場合はドリブルに切り替えることもわかってたよ」
「くそがぁ!!」
本来なら手の内を晒すのは愚策だ。
でも、短気な彼には逆にこの方がダメージになる。
ディフェンスもオフェンスも単調になった彼を相手にするのは楽だった。
俺の攻撃では二点目を決めて、彼攻撃は再び失敗に終わった。
「さぁ。この攻撃で俺がゴールを決めれば俺の勝ちだ。そうしたら、もう二度と首藤さんにつきまとうことは辞めるんだな」
「……まだ勝負はついてねぇぞ!!勝った気になってるんじゃねぇぞ、星ぃ!!!!」
獰猛な表情の彼。だが、なんの怖さも感じない。
俺は右、左……フェイントを二つ入れてから彼の横を抜く。
「負けねぇ!!俺は負けねぇぞ!!」
必死に食らいつく蓮堂くんを抜き去り、俺はシュートの体制に入る。
結局。首藤さんはどこに居たんだろうな。
こうして俺が彼に勝つところを見てもらいたかったけどな。
……なんて、思ってしまったのが不味かった。
「喰らいやがれ!!!!」
「ぐぁ!!」
ボールでは無く、軸足にスライディングを受けた俺は、シュートを枠外に外してしまう。
「……やってくれたな、蓮堂くん」
「くくく……身体的接触はありだったな?……いやぁわざとじゃねぇよ。ボールに向かってスライディングをしたんだが、俺は『下手くそ』だからな、スライディングの位置をミスっちまったよ」
ズキズキと痛む軸足を引きずりながら、俺はディフェンスの位置に着く。
大丈夫だ。この程度の負傷なんか問題じゃない!!
「さぁ行くぜ星!!」
「来い!!」
……だが、負傷した軸足で彼を止めることは難しく、更には彼の肘打ちをモロに食らってしまい、片目も流血で塞がってしまう。
二対二の同点に持ち込まれ、俺の攻撃のターンだった。
「……くくく。いいざまだな、星」
「この攻撃を俺が決めれば俺の勝ちなのは変わらない」
軸足は依然として痛み、流血で片目は見えない。
それでも俺は……負ける訳には行かないんだ!!
俺がそう思ってた時だった。
『ターーーーイム!!!!』
「……え?」
「はあ?」
グラウンドに桐崎君の声が響いた。
「蓮堂くんに星くん。熱い勝負に水を差して悪かったね」
桐崎くんはそう言って俺たちのところに来る。
「何の用だよハーレム王」
不愉快そうな表情の蓮堂くんに桐崎くんはニコリと笑う。
「君の『多少の身体的接触による星くんの負傷』に関してはこちらから何かを言うことは無いよ」
「まぁな。これはルールのうちだからな」
ニヤリと笑う蓮堂くんに、桐崎くんは続けた。
「この戦いは『動画配信をしてる』という話は先にしていたよね?いやぁ視聴者から『血の映像は見たくない。せめて包帯くらい巻いてくれ』とメッセージが止まらなくてね」
桐崎くんはそう言うと、ノートパソコンの画面を見せた。
そこには彼の言うようなコメントに溢れていた。
「せめて星くんに包帯くらいは巻かせてくれないか?」
「……ちぃ。そういう事なら許してやるよ」
蓮堂くんは自分の不利を悟ったのか、了承をしてくれた。
「よし、蓮堂くんの許可が出たぞ!!首藤さん、星くんの手当をしてくれ!!」
「は、はい!!」
しゅ……首藤さん!!??
驚く俺の目の前に、救急箱を持った首藤さんが駆け寄ってくる。
そ、そうか。彼女は保健室に寄っていて、この展開になった時にスムーズに俺の治療をするために待機してたのか!!
桐崎くんは蓮堂くんに俺がこうして負傷させられることも視野に入れてたんだな。
ちょっとだけ……悔しいな……
「大丈夫ですか……星くん……」
「あはは……心配かけてごめん。でも大丈夫だよ、俺は負けない」
消毒液を染み込ませたガーゼで俺の傷を拭ってから、包帯を巻いていく。
「…………すぅ……はぁ」
「……首藤さん?」
治療を終えた首藤さんは、深呼吸をする。
その様子に、俺は訝しげな表情を浮かべた。
「おい!!治療が終わったんならさっさと勝負を再開させるぞ!!」
蓮堂くんの声がグラウンドに響く。
「首藤さん行くね」
「そ、その星くん!!」
首藤さんは決意を込めた目で俺を見る。
そして……
「ぜ、絶対に勝ってください!!」
「…………っ!!!!」
「はぁああああ!!!!???」
彼女は俺の唇にキスをした。
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