学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

番外編 ⑰ ~星くんの恋愛相談~

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 番外編  ⑰


 星視点


 放課後。俺は海皇高校のグラウンドに、サッカー部のユニフォームを来てウォーミングアップをしていた。

 この一週間。空いている時間は全て蓮堂伊月のプレイ動画を見る行為に従事してきた。

 そして、掴んだのは彼のラフプレーには『コンボ』のようなものがある。という事。

 つまり、プレーの一連の流れの中で行われるからこそ、審判からは気が付かれないという事。

 良く考えられたプレーだと思ってしまった。

 こんな事ではなく、もっと真面目にテクニックを磨いていたのなら、彼は凄いプレイヤーになっていただろうな。

 そう思ったが、やはりそれは無理だろう。

 相手を痛めつけている時の彼の表情は、愉悦に歪んでいたからだ。

 ふぅ……やはりこんな奴には負けられないな。

 俺はそう思いながら、入念にストレッチをしていく。

「調子はどうかな、星くん」
「万全だね。負ける要素が見つからないくらいだよ」

 桐崎くんが様子を見にやって来てくれた。

 隣には新聞部の部長。三輪先輩が寄り添っている。

 どうも体育祭の後辺りから二人の距離感が近いような気がするが、気にしないことにしよう。

 彼の女性関係に踏み込むと、火傷では済まない気がするからね。

「蓮堂伊月に約束を守らせるために、怜音先輩にはカメラを用意してもらってる。ちなみに、これは予算会議の時と同じように、リアルタイムでオンライン配信をする手筈になってる」
「あぁ、それは知ってるよ。ちなみに、蓮堂くんにはその話はしてないけど、大丈夫なのかい?」

 俺のその問いに、桐崎くんはニヤリと笑う。

「その辺の話は俺がつけてやるよ。星くんは気にしないで平気だよ」
「そうか。君に任せられるなら安心だな」

 俺はそう言うと、軽く周りを見渡す。

「首藤さんの姿が見えないね?」
「彼女は『とある目的の為』に姿を隠してもらってる。今回のサッカーバトルのキーになると思ってる」

「そ、そうなのか……わかったよ」

 一体彼女に何をさせるつもりなのか。桐崎くんのかんがえることはよくわからないけど、信じることにしよう。

 そうしていると、グラウンドに金髪の男が姿を現した。

「よう、星!!来てやったぜ!!」
「蓮堂くん。待ってたよ」

 俺は彼にそう声をかける。
 蓮堂くんはゆっくりとこちらに歩いてくる。

 そんな彼に、桐崎くんが近づいていく。

「やぁ、蓮堂伊月くん。俺はこの高校で生徒会の副会長をしている桐崎悠斗と言う。今回の君と星くんのサッカーバトルの立会人になる」
「はん!!お前の話はこっちの高校にも届いてるぜ!!女たらしのハーレム王さんよ!!」

 蓮堂くんのその言葉に、桐崎くんは大して気にもせずに笑みを返す。

「そうか。俺も有名人になったもんだな。さて、制服のままで星くんとやり合うなんて言わないだろ?更衣室へ案内しよう」
「そうだな。星の実力は認めてるからな。俺が『本気』を出さないと勝てないってのはわかってるぜ」

 彼の言う『本気』と言うのはラフプレーと同義だと思うけどな。

「そして、君と星くんの戦いはエンターテインメントの一環として動画配信をさせてもらう予定だ」
「あん?そんな話は聞いてねぇぞ」

 案の定。蓮堂くんは不満そうな表情をする。
 だけど、桐崎くんは気にした風も見せずに言葉を返した。

「君が星くんを圧倒するシーンを動画として残せる。悪い話じゃないだろ?」
「はん!!お前、わかってるじゃねぇか!!」

 良いぜ!!動画配信は了承してやるよ!!

 蓮堂くんはそう言って動画の件も了承してくれた。

「では蓮堂くん。こっちが更衣室だ」
「悪いがその必要は無いな!!」
「……え?」

 俺と桐崎くんは蓮堂くんのその発言に疑問符を浮かべる。

「見られて恥ずかしいような身体をしてないからな!!ここで着替えてやるよ!!」

 蓮堂くんはそう言うと、グラウンドのど真ん中で制服を脱ぎ捨てた。

 鍛え抜かれた鋼と言って良い肉体。
 その身体を惜しげも無く晒しながら、彼は自身の高校のユニフォームに着替えた。

「待たせたな。ウォーミングアップはいらねぇよ。ここに来ること自体がウォーミングアップだからな」
「そうか。なら早速勝負と行こうか」

 俺はそう言うと、コートの真ん中へ行く。

「ルールは君が話した通りだ。一体一で三点を先に取った方の勝利。そして……」
「身体的接触はありにするぜ!!」

『多少』が消えたか。
 ……まぁ構わない。彼の『コンボ』は既に頭に叩き込んである。

 一撃も貰わずに完封してやるさ。

「あぁ、それで構わない」
「ははは!!潰してやるよ、星明!!」

 獰猛な笑みを浮かべる蓮堂くん。

 いまだに首藤さんの姿は見えないけど、気にしないことにしよう。

 俺はそう結論付けると、目の前の敵に神経を集中させた。
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