学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第十話 ~狂乱の体育祭~ ⑰

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 第十話
 ~エピローグ~



 朱里視点



「わぁ……詩織ちゃんってすごいところに住んでるんだねぇ……」

 悠斗の病室を後にした私は、詩織ちゃんと一緒に彼女が住んでいるマンションに向かった。

 そして、今私の目の前にあるのは、病室からも見えていたとんでもない高さのマンションだった。

「まぁ、私にとっては牢屋のようなものだと思いますけどね」
「牢屋……」

「父親は愛人と一緒にどこかに消えました。毎月使い切れないほどのお金が口座には振り込まれています。まぁ口止め料みたいなものでは無いでしょうか?」

 私は詩織ちゃんのその言葉を聞いて、彼女の身体を抱きしめていた。

「あ、朱里さん!?」
「いや。抱きしめたくなったから」

 きっとすごく寂しかったんだと思う。
 そして、その寂しさを埋めたのが……悠斗だったんだ。

「はぁ……慰めてるつもりですか?そう言うのは間に合ってますので」

 呆れたようにそう言う詩織ちゃん。
 最初はそのつもりだったんだけど、今はちょっと違う。

「詩織ちゃんの身体って柔らかいね。抱きしめてたらムラムラしてきた」
「朱里さん!?」

 あぁ……これは癖になりそう。
 悠斗の気持ちがわかりそう。

「今夜は一緒に寝ようね、詩織ちゃん」
「な、なんか……貞操の危機を感じます……」


 そんな会話をしながら、私は詩織ちゃんの部屋へと案内される。

「どうぞ。ここが私の部屋です」
「わぁ……広いねぇ」

 3LDKと聞いている彼女の部屋は、一人で暮らすには明らかに広すぎると感じた。

「とりあえずそこのソファに座っててください。飲み物を出しますね」
「ありがとう、詩織ちゃん」

 私は彼女に言われたソファに座る。
 すごいふかふかだった……

「ちなみにそのソファで悠斗くんに告白をしました」
「……へぇ」

 コップに麦茶を入れて、ガラスのテーブルにそれを置く。
 そして、詩織ちゃんは私の隣に座った。

「そして、悠斗くんの味を初めて知ったのもこのソファです」
「なんて場所に座らせてるのよ……」

 と言うか、やっぱり悔しい……

 私よりも先に、彼女が悠斗と『そういう事』をした事実が。

『敗北』だと思ってる。

 だけど、もう負けない。彼女に先手は取らせない。

『正妻』は私なんだから!!

「さて、出前を頼んでその間にお風呂に入りましょうか。体育祭でいっぱい汗をかきましたからね」
「え!?私は詩織ちゃんの手料理が食べられると期待してたんだけど!!」

 私がそう言うと、詩織ちゃんはジトっとした目で見てくる。

「私の最初の手料理は悠斗くんに振る舞う予定ですので」
「くぅ……じゃあ悠斗に振舞ったら『解禁』だね!!」

「はぁ……良いですよ」
「やったぁ!!じゃあ一緒にお風呂に入ろうよ!!」

「い、一緒にですか!?」
「女の子同士なんだから良いでしょー」

「はぁ……わかりましたよ」
「やったね!!」

 そして、私と詩織ちゃんは出前で時間指定をしてピザを頼んだあと、一緒にお風呂に入った。




「…………あのおっぱいはずるい」
「いや、朱里さんの脚も中々のものですよね」

 お風呂から出たあと、私と詩織ちゃんはピザを食べていた。

 私はマルゲリータを。
 詩織ちゃんはミートデラックスってやつを。
 詩織ちゃんは本当にお肉好きだね……

「ねぇ、詩織ちゃん」
「はい、なんですか?」

 私はピザを頬張りながら、彼女に言う。

「進路はどうする予定なの?」
「東京の大学に行きます。ここを出て、近くに引っ越そうかと思ってます。一応その話を親にしたら『金は出してやる。好きにすればいい』と言われました」

 そう。詩織ちゃんは悠斗と同じ大学になると思う。
 そして、私は違う女子大にゆーこちゃんと進学する予定。

「詩織ちゃんにお願いがあるんだ」
「……なんですか?」

「悠斗も東京の大学に行くって話をしててね。そして、詩織ちゃんと同じように今の家を出て一人で暮らすって話をしてる」
「…………良いんですか?」

 私が言いたいことを理解してくれたのかな。

「私が悠斗くんと一緒に暮らして欲しい。そんなお願いをするつもりですよね?」
「そうだよ。そして、私はその方が安心出来る」

「…………敵の数を私一人にする。朱里さんの考えは理解出来ますが、私にとってはかなりのチャンスですよ?」
「それもあるけど、それだけじゃない」

 私はそう言うと、詩織ちゃんの目を見て言う。

「私は詩織ちゃんも心配なんだ。女の子の一人暮らしが安全だとは思えない。でも悠斗が暮らしてくれるなら安心出来る」

 私だって、大学の近くに引っ越すけど、ゆーこちゃんとルームシェアをする予定だ。

「悠斗のわがままのためってのもあるけど、私は詩織ちゃんも好きなんだ。だから貴女の安全のことにも配慮したい」
「……そうですか。それならお言葉に甘えますね」

 詩織ちゃんはそう言うと、私に向かって微笑んでくれた。

『聖女様』と呼ぶに相応しい。そんな微笑みだった。

「ありがとうございます。朱里さん。貴女のような方と出会えたことを幸せに思います」
「あはは……どういたしまして」

 私はそう言うと、最後のピザのピースを食べる。


「悠斗をお願いね、詩織ちゃん」
「はい。責任をもってお預かりいたします」



 そして、夕食を終えた私と詩織ちゃんは同じベッドに入る。

「ムラムラしてきた」
「辞めてください!!私の初めては悠斗くんです!!」

「あはは。冗談だよ。私の初めても悠斗だからさ」
「……お互いこんなところで初めてを散らせるのは辞めにしましょう……」

「おやすみ、詩織ちゃん」
「はい。おやすみなさい、朱里さん」

 そう言って部屋の明かりを落とす詩織ちゃん。

 私は目を閉じて、眠りにつく。




 彼女はライバルだけど、私の大切な人。

 悠斗とも一生一緒に居たいと思う。

 だけど、彼女とも一生一緒に居たい。

 悠斗のわがままは私のわがままでもある。

 こんな関係を、ずっとずっと……続けたいな。

 私はそう考えながら、夢の世界へと旅立った。
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