学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第十話 ~狂乱の体育祭~ ⑮

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 第十話
 ~エピローグ~


 蒼井視点




「ふぅ……これで終わりかな」

 体育祭の事後処理を終えた僕は生徒会室でグッと身体を伸ばした。

「お疲れ様、空」
「いやー三人でやったから何とかなったね」

「ありがとう、琴音に怜音。怜音が手伝ってくれなかったら終わらなかったよ」
「あはは。悠斗くんが倒れちゃって、黒瀬さんが付き添いで居なくなっちゃったからね。ここで手伝わなきゃ親友じゃないでしょ?」

 怜音は笑いながらそう答えてくれた。

 そう、あれは体育祭の最終種目。綱引きの時だった。




 私の目の前で、最愛の男性が倒れた。

 試合の前から何やら顔色が悪い気がしていた。

 でも、それは『正妻と側室の圧』によるストレスかなぁなんて思っていた。

『悠斗くん!!どうしたんだい!!』


 お腹を押えて倒れ込んだ彼。私が声を掛けても反応が無かった。

 すぐに、彼の彼女の藤崎さんが飛んできた。

『悠斗!!悠斗!!大丈夫!!どうしたの!!??』

『やだ!!やだ!!意識が無いよ!!悠斗が死んじゃう!!』

 そう言って彼の身体を揺すりながら取り乱す藤崎さんを、

『落ち着いてください!!』

 パシン!!

『し、詩織ちゃん……』

 黒瀬さんが藤崎さんの頬をビンタしていた。

『今、山野先生が救急車を呼びました。それがやってきます』
『うん……』

『今、私たちがしなければならないことは取り乱して泣き叫ぶことではありません』
『そうだね……ごめん。詩織ちゃん』

『蒼井生徒会長。大変申し訳ございませんが、私と朱里さんは彼に付き添います』

 強い目で、彼女は僕にそう言った。

 はぁ……本当なら僕も着いていきたいところだけどね。
 流石に琴音以外の生徒会役員が居なくなるのは問題だな。

『わかったよ。こっちのことは全部僕がやっておく。君と藤崎さんは着替えて来なよ。流石にその格好で救急車に乗るのは問題だ』
『はい』
『蒼井さん。ありがとうございます』

 黒瀬さんと藤崎さんはそう言って、僕に頭を下げた。

 その後、やって来た救急車に制服に着替えた二人と悠斗くんが病院へと運ばれて行った。


 そして、僕はその後、混乱する全校生徒を落ち着かせて、競技を再開させた。

 その後の得点発表。赤組の勝利と学年優勝の表彰も行った。

 体育祭が終わったあとは、怜音に頭を下げて事後処理の手伝いをしてもらい、何とかそれが終わって、今に至る。




「それにしても、波乱万丈の体育祭だったよね」
「そうだね。でも今日の中心にいたのは間違いなくハーレム王だったね」

 確かに。藤崎朱里と黒瀬詩織という、学園の二大美少女とグラウンドのど真ん中でキスをして、堂々と二股宣言。

 男女混合リレーではアンカーとして活躍。
 陸上部を抜き去って一位に輝く。

 最終種目では全校生徒の前で倒れて救急車で運ばれる。

「怜音としては新聞のネタに困らない一日だったんじゃないかな?」

 なんて僕が笑いながら言うと、

「確かにね。ただ、あまりに書くことが多すぎて困るくらいだよ」

 怜音は笑いながらそう答えた。

 ふぅ……さて。後は彼女に聞かないといけないことがあるんだよな。

「なぁ、怜音」
「……ん?どうしたんだよ、空。そんな怖い顔してさ」

「君は『悠斗くんのことをどう思っている?』それを聞きたいと思ってね」

 僕がそう言うと、怜音の目が三日月の形にニヤリと歪む。

「それは、『そう言う意味で聞いてる』ってことで良いのかな?」
「そうだね。君が僕のライバルになるのかどうか。そういう話だね」

「……え?もしかして、怜音もハーレム王のことを」

 僕と琴音の視線を受けて、怜音はやれやれと手を広げる。

 そのリアクション。悠斗くんとそっくりだよね。

「彼に対して『恋愛感情』は微塵も無いよ。空のように、彼と付き合いたいとか結婚したいとか家族になりたいとか彼の子供が欲しいとかそういう気持ちは無いよ」
「まぁ、そういう答えが来ると思ったよ。でも『それだけ』じゃないんだろ?」

 僕がそう問掛けると、怜音は笑いながら言う。

「そうだね。私は彼と『交渉』をするのが好きなんだ。彼と話をすると性的興奮を覚える。彼との交渉のカードとしてなら『ある程度の行為』ならばしても構わないと思ってる」

 そして、それは彼も同様のことを思ってるはずだよ?

「ある程度の行為ってのは?」
「それこそ、セックスまでだね。安全だと確信が持てるなら、避妊具すら必要ないと思ってるさ」

「本当なら体育祭が終わったあと、彼と新聞部の部室で『交渉』をする予定だったんだよ。まぁあんな事があったからおじゃんになってしまったけどね」
「綱引きの時のアナウンスは嘘では無かったという訳だね」

「そうだよ。まぁ、あぁしておけば『私の冗談』と生徒は思ってくれると思ったからね」

 なんて話をしていると、

「さ、怜音はハーレム王とどうなりたいの?」

 琴音が怜音に尋ねていた。

「彼とは一生付き合っていきたいね。交渉相手として」

「恋人や妻。家族というポジションに興味は無い。私が彼に求めるのは、私を楽しませてくれる彼との会話だよ」

「さて、空。こんな回答で満足してくれたかな?」

 怜音はそう言うと僕の方へ振り向いて笑った。

「そうだね。ある意味では最強の味方であり、ある意味では最悪の敵にもなると思うよ」
「私が空に仇なすことは無いよ。それは信じてもらって構わない」

 そうか。それなら安心だな。

「じゃあ、早速だけど彼との交渉の打ち合わせに入ろうか」

『体育祭の事後処理を私と琴音と怜音でやっておいたよ』

 このカードを使って……ね。
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