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第2章
第十話 ~狂乱の体育祭~ ⑧
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第十話 ⑧
昼休み。借り物競争での一幕。グラウンドを狂乱と静寂の渦に包んだ俺と詩織さん。そして、朱里のキス事件を経て、俺は教室でお弁当を食べていた。
「今日の悠斗のお弁当はおにぎりと唐揚げなんだね。雫ちゃんの作る料理はシンプルなものでもすごく美味しそうに見えるから凄いよね!!」
「あはは。おにぎりって以外と握り加減とかあるらしいからね」
「ふふふ。そう言えば朱里さん。少しは料理の腕は上がりましたか?サンドイッチ以外のレパートリーが無いと聞いてますが」
「し、詩織ちゃん!!それは言わない約束だよ!!今は練習中だよ!!」
「私は手料理にも自信がありますからね。うかうかしてると、悠斗くんの胃袋は私のものです」
「へぇ。詩織さんの手料理は食べたことが無かったな。ちょっと興味があるね」
「ふふふ。でしたら、来週のデートの時に自宅に来てください。私の自慢の手料理を悠斗くんにご馳走いたします」
「来週は私が部活だからねぇ。仕方ない。その日の悠斗は詩織ちゃんに貸してあげるよ」
「ありがとうございます。たっぷりと楽しませてもらいます。あ、そう言えば朱里さん。私に抜け駆けして、悠斗くんと楽しんでましたね?」
……体育館の裏でのことかな。
「詩織ちゃんこそ、私が居ない三十分を楽しんだんだから、おあいこでしょ?」
「そう言われては仕方ありませんね。今度は混ぜてくださいね?」
「詩織ちゃんも好きなんじゃーん」
「ふふふ。嫌いではありませんからね、三人で。というのも」
「ちょっと待てよ!!桐崎!!」
「「「……え?」」」
教室の片隅で、俺と朱里と詩織さんが談笑をしながら昼ご飯を食べていると、その様子に石崎が声を上げる。
「な、なんであんなことがあった後に、三人で笑いながら飯なんか食えるんだよ!!」
石崎のその声に、クラスメイト全員が首を縦に振った。
ちなみに、健と佐藤さんは
『わりぃな悠斗。俺は佐藤さんと屋上で飯食ってくるわ』
『ごめんね、朱里!!そういう訳だからさ!!』
なんて言っていたので教室には居ない。
「何でって?俺たちが一緒に食事をするのはいつもの事だろ?健は佐藤さんと屋上でイチャイチャしてると思うぜ」
「い、いや……そういう意味じゃなくて」
「ふふふ。悠斗くん。あまりいじわるをすると、可哀想ですよ?」
詩織さんが俺と石崎の会話を聞いて、フワリと笑う。
まぁ、わかっててからかってた部分はあるよな。
「あはは、ごめんな。石崎。詩織さんとキスして、朱里ともキスして、教室は修羅場の渦に包まれる。みたいに思ってたんじゃないかな?」
「ま、まぁ……近いことは……」
「まぁ、十人いたら十人が異常だと言うことだと思うよ。だけど、グラウンドで話したことは本当だ」
俺はそう言うと、石崎にもう一度話をした。
「俺には最愛の『彼女』藤崎朱里がいる。彼女とは結婚して、家族になって、子供を作って、爺さん婆さんになるまで一緒にいて、死ぬまで、いや死んでも一緒にいたい。そう思ってる」
「えへへ。嬉しいなぁ」
俺の言葉に朱里が照れくさそうに笑ってくれる。
「だ、だったら……なんで黒瀬さんともキスなんかしてるんだよ。てか、あの話ぶりだと……そ、それ以上の事も」
石崎のその言葉に、俺の目が少し変わる。
「そうだな。確かに石崎の言うように、最愛の彼女が居るのに、詩織さんともそんなことをするのはおかしい。そう思うのは当然だ。だけどな、俺は……俺のことを好きだと言ってくれた黒瀬詩織を、俺以外の男に触れさせたくない。そう思えるくらいには、彼女に対して特別な感情を持っている」
「ふふふ。ありがとうございます、悠斗くん」
俺の言葉に、詩織さんがフワリと笑う。
「黒瀬詩織は誰にも渡さない。彼女の全ては俺のものだ。彼女の初めて、デートもキスも処女も、当然だな。髪のひと房から爪の一欠片まで他の男には触れさせない」
「…………」
「だけど、俺には藤崎朱里がいる。俺の心も全て彼女のものだ。だから、詩織さんには言ったんだ」
『君を彼女にすることは出来ない。でも、詩織さんが望むなら、全てのことをしてあげる』
『デートもしよう。手を繋いで歩こう。腕を組んでもいい。キスもしよう。舌を入れた濃厚なものもしよう。君が許してくれるなら身体を重ねよう。もちろん、学生のうちは避妊をしよう。でも、お互い大人になったら子供を作っても構わない。一緒に育てよう』
『でも。君を彼女には出来ないし、結婚することも出来ない』
『それでもいいかな?』
「ふふふ。私はそれを受け入れました。だって、悠斗くんの『心』以外の全てを貰えるんですから」
「そうしたことを俺は朱里に全て話してある」
「ふ、藤崎さんは……それでいいのかよ……」
石崎のその質問に、朱里はやれやれと手を振った。
「良いか悪いか?と言うよりは、私にとってのメリットがあるから了承した。って所かな?」
「め、メリット?何があるんだよ……」
石崎の言葉に朱里は笑う。
「だって、悠斗は女たらしなんだもん。ほっといたらどんどん女の子が惚れて彼に群がってくる」
「あはは……そんなつもりは無いんだけどね……」
「悠斗くんは反省した方が良いと思います」
「うんうん。詩織ちゃんの言う通り!!だからね、そんなたくさんの女の子を相手にするのは大変なのよ」
「た、大変……」
「でもさ、悠斗が私が目の届かないところにいる時は、詩織ちゃんとよろしくやっててくれるなら、そう言った女の子は寄り付かない」
「あはは……」
「そうすれば、私は詩織ちゃんだけと戦えばいい。敵の数が一人だけになる。まぁ……私たちの間に割り込んでくるような『覚悟』がある人だけになる」
「ふふふ。私は負けるつもりはありませんがね」
「だから、私にもメリットがある。ってことで容認してるんだよね」
朱里がそう言うと、クラスはシーンと静まり返った。
そして、石崎が口を開いた。
「きょ、共感は出来ないけど、理解はしたよ」
「あはは。ありがとう、石崎」
俺がそう言って笑うと、石崎は捨て台詞のようにこう言った。
「こんな可愛い女の子二人とよろしくやってる桐崎は地獄に堕ちろ!!!!!」
その言葉に、クラスの男全員が同意を示した。
あはは……俺が死んだら地獄行きは当然だと思うよ。
俺はその様子を見ながら、そう思っていた。
昼休み。借り物競争での一幕。グラウンドを狂乱と静寂の渦に包んだ俺と詩織さん。そして、朱里のキス事件を経て、俺は教室でお弁当を食べていた。
「今日の悠斗のお弁当はおにぎりと唐揚げなんだね。雫ちゃんの作る料理はシンプルなものでもすごく美味しそうに見えるから凄いよね!!」
「あはは。おにぎりって以外と握り加減とかあるらしいからね」
「ふふふ。そう言えば朱里さん。少しは料理の腕は上がりましたか?サンドイッチ以外のレパートリーが無いと聞いてますが」
「し、詩織ちゃん!!それは言わない約束だよ!!今は練習中だよ!!」
「私は手料理にも自信がありますからね。うかうかしてると、悠斗くんの胃袋は私のものです」
「へぇ。詩織さんの手料理は食べたことが無かったな。ちょっと興味があるね」
「ふふふ。でしたら、来週のデートの時に自宅に来てください。私の自慢の手料理を悠斗くんにご馳走いたします」
「来週は私が部活だからねぇ。仕方ない。その日の悠斗は詩織ちゃんに貸してあげるよ」
「ありがとうございます。たっぷりと楽しませてもらいます。あ、そう言えば朱里さん。私に抜け駆けして、悠斗くんと楽しんでましたね?」
……体育館の裏でのことかな。
「詩織ちゃんこそ、私が居ない三十分を楽しんだんだから、おあいこでしょ?」
「そう言われては仕方ありませんね。今度は混ぜてくださいね?」
「詩織ちゃんも好きなんじゃーん」
「ふふふ。嫌いではありませんからね、三人で。というのも」
「ちょっと待てよ!!桐崎!!」
「「「……え?」」」
教室の片隅で、俺と朱里と詩織さんが談笑をしながら昼ご飯を食べていると、その様子に石崎が声を上げる。
「な、なんであんなことがあった後に、三人で笑いながら飯なんか食えるんだよ!!」
石崎のその声に、クラスメイト全員が首を縦に振った。
ちなみに、健と佐藤さんは
『わりぃな悠斗。俺は佐藤さんと屋上で飯食ってくるわ』
『ごめんね、朱里!!そういう訳だからさ!!』
なんて言っていたので教室には居ない。
「何でって?俺たちが一緒に食事をするのはいつもの事だろ?健は佐藤さんと屋上でイチャイチャしてると思うぜ」
「い、いや……そういう意味じゃなくて」
「ふふふ。悠斗くん。あまりいじわるをすると、可哀想ですよ?」
詩織さんが俺と石崎の会話を聞いて、フワリと笑う。
まぁ、わかっててからかってた部分はあるよな。
「あはは、ごめんな。石崎。詩織さんとキスして、朱里ともキスして、教室は修羅場の渦に包まれる。みたいに思ってたんじゃないかな?」
「ま、まぁ……近いことは……」
「まぁ、十人いたら十人が異常だと言うことだと思うよ。だけど、グラウンドで話したことは本当だ」
俺はそう言うと、石崎にもう一度話をした。
「俺には最愛の『彼女』藤崎朱里がいる。彼女とは結婚して、家族になって、子供を作って、爺さん婆さんになるまで一緒にいて、死ぬまで、いや死んでも一緒にいたい。そう思ってる」
「えへへ。嬉しいなぁ」
俺の言葉に朱里が照れくさそうに笑ってくれる。
「だ、だったら……なんで黒瀬さんともキスなんかしてるんだよ。てか、あの話ぶりだと……そ、それ以上の事も」
石崎のその言葉に、俺の目が少し変わる。
「そうだな。確かに石崎の言うように、最愛の彼女が居るのに、詩織さんともそんなことをするのはおかしい。そう思うのは当然だ。だけどな、俺は……俺のことを好きだと言ってくれた黒瀬詩織を、俺以外の男に触れさせたくない。そう思えるくらいには、彼女に対して特別な感情を持っている」
「ふふふ。ありがとうございます、悠斗くん」
俺の言葉に、詩織さんがフワリと笑う。
「黒瀬詩織は誰にも渡さない。彼女の全ては俺のものだ。彼女の初めて、デートもキスも処女も、当然だな。髪のひと房から爪の一欠片まで他の男には触れさせない」
「…………」
「だけど、俺には藤崎朱里がいる。俺の心も全て彼女のものだ。だから、詩織さんには言ったんだ」
『君を彼女にすることは出来ない。でも、詩織さんが望むなら、全てのことをしてあげる』
『デートもしよう。手を繋いで歩こう。腕を組んでもいい。キスもしよう。舌を入れた濃厚なものもしよう。君が許してくれるなら身体を重ねよう。もちろん、学生のうちは避妊をしよう。でも、お互い大人になったら子供を作っても構わない。一緒に育てよう』
『でも。君を彼女には出来ないし、結婚することも出来ない』
『それでもいいかな?』
「ふふふ。私はそれを受け入れました。だって、悠斗くんの『心』以外の全てを貰えるんですから」
「そうしたことを俺は朱里に全て話してある」
「ふ、藤崎さんは……それでいいのかよ……」
石崎のその質問に、朱里はやれやれと手を振った。
「良いか悪いか?と言うよりは、私にとってのメリットがあるから了承した。って所かな?」
「め、メリット?何があるんだよ……」
石崎の言葉に朱里は笑う。
「だって、悠斗は女たらしなんだもん。ほっといたらどんどん女の子が惚れて彼に群がってくる」
「あはは……そんなつもりは無いんだけどね……」
「悠斗くんは反省した方が良いと思います」
「うんうん。詩織ちゃんの言う通り!!だからね、そんなたくさんの女の子を相手にするのは大変なのよ」
「た、大変……」
「でもさ、悠斗が私が目の届かないところにいる時は、詩織ちゃんとよろしくやっててくれるなら、そう言った女の子は寄り付かない」
「あはは……」
「そうすれば、私は詩織ちゃんだけと戦えばいい。敵の数が一人だけになる。まぁ……私たちの間に割り込んでくるような『覚悟』がある人だけになる」
「ふふふ。私は負けるつもりはありませんがね」
「だから、私にもメリットがある。ってことで容認してるんだよね」
朱里がそう言うと、クラスはシーンと静まり返った。
そして、石崎が口を開いた。
「きょ、共感は出来ないけど、理解はしたよ」
「あはは。ありがとう、石崎」
俺がそう言って笑うと、石崎は捨て台詞のようにこう言った。
「こんな可愛い女の子二人とよろしくやってる桐崎は地獄に堕ちろ!!!!!」
その言葉に、クラスの男全員が同意を示した。
あはは……俺が死んだら地獄行きは当然だと思うよ。
俺はその様子を見ながら、そう思っていた。
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