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第2章
第十話 ~狂乱の体育祭~ ⑦
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第十話 ⑦
全校生徒の前。グラウンドのど真ん中で俺と詩織さんはキスをした。
詩織さんは俺の首に腕を回し、舌を入れてくる。
あはは……随分と情熱的じゃないか。
俺はそれにきちんと応えてあげた。
そして、深い深いキスに満足した詩織さんは俺と唇を離した。
「ふふふ。満足です」
「それは良かったよ」
フワリと笑う詩織さんに、俺も笑い返した。
『ゆ、悠斗くん……君は一体何をしてるんだい……』
怜音先輩がマイクを使って俺に聞いてきた。
あはは。そこまで動揺した貴女を見たのは初めてですね?
貴重な姿を見せてくれてありがとうございます。
『何?と言われましても。詩織さんとキスをしただけですが?』
俺がマイクでそう答えると、怜音先輩は驚いたように声を張り上げる。
『キ、キスをしただけ!!??だ、だって君は!!藤崎朱里と付き合ってるんだろう!?何故黒瀬詩織とキスをしてるんだい!?』
その言葉に、全校生徒が首を縦に振った。
『その質問には、私が答えさせていただきますね?』
『……え?』
俺からマイクを取った詩織さんが、怜音先輩の質問に返答する。
『先々週の日曜日。私と悠斗くんはデートをしました。ふふふ。その様子はみなさんもご存知かと思います。悠斗くんが私との写真をSNSにアップしていましたからね』
『そ、そうだね……随分と楽しそうだったじゃないか……』
『そして、その日の終わり。デートの締めくくりとして、私は悠斗くんを自宅に呼びました。それはもちろん。彼に告白をするためです』
『彼には藤崎朱里という彼女がいるのに。かい?』
その質問に、詩織さんが首を傾げる。
『お二人は結婚もしてないのに、諦める必要がありますか?』
『………………』
『ふふふ。話を続けますね。自宅に悠斗くんを呼んだ私は、彼に告白をしました』
桐崎悠斗くん。黒瀬詩織はあなたをお慕いしています。私をあなたの彼女にしてくれませんか?
『その告白に、彼はなんて……』
『ふふふ。君を俺の彼女には出来ない。そう振られてしまいましたよ?』
すごく楽しそうに、詩織さんはそう言った。
『ふ、振られたのになんで君たちはキスなんかしてるんだよ!!おかしいじゃないか!!』
口調が段々きつくなる怜音先輩。
そんな彼女に詩織さんは笑いながら答える。
『その後、悠斗くんは続けてくれました。私を彼女や妻にすることは出来ない。でも、彼女や妻にするようなことを全部君にしてあげる。と』
『…………え?』
『手を繋ぐことも、腕を組むことも、デートをすることも、皆さんの前でしたように、キスをすることも、えっちなことも、全部全部全部……悠斗くんは私にしてくれます。セックスだけは朱里さんとしてからじゃないとダメだよ?と言われてしまいましたが、朱里さんとしてくれれば解禁です』
『……あ、頭がおかしくなりそうだ。そ、それは浮気じゃないのかよ』
その質問には俺が答えないとな。
詩織さんからマイクを受け取り、怜音先輩の質問に答える。
『浮気では無いですよ?だって俺の心は朱里にあります。詩織さんとキスをしようがセックスをしようが、俺の一番は彼女です。詩織さんとそういう行為をするのは『彼女が望むから』ですね。そこに心はありません』
『そこが悔しいところですね。私はまだ悠斗くんの『身体』しか貰えてません。『心』は朱里さんにありますので』
俺と詩織さんの言葉に、怜音先輩が叫ぶ。
『藤崎朱里!!なんとか言ったらどうだよ!!お前の彼氏はどうなってるんだよ!!!!』
その言葉を待っていたのか、怜音先輩の近くに既に居た朱里はマイクを彼女から受け取る。
「マイクを貰いますね、怜音先輩?」
「ふ、藤崎さん……な、なんでそんなに落ち着いていられるんだよ……」
「え?だって慌てることなんか何も無いですよ」
なんてやり取りを、マイクを介さないで行っていた。
そして、朱里はマイクを持って話をする。
『皆さんこんにちは。悠斗の『彼女』の藤崎朱里です』
あはは。『彼女』の部分を強く言ったね。
『悠斗が言ってることは私も知ってること。詩織ちゃんとそういうことをすることに関しては、私は容認しています』
その言葉に、グラウンドがざわめきに包まれる。
『ふふふ。だって、風俗でセックスして帰ってくる旦那を、浮気だ!!なんて言わないじゃないですか。私にとって悠斗が詩織ちゃんとそういうことをするのはその程度の認識ですよ?』
『まぁ、私も詩織ちゃんが好きですので、三人で。と言うのを楽しんでる時もありますけど』
グラウンドが一気に静寂に包まれる。
『悠斗が言うように、彼の一番は私。彼の『心』は私のもの。そこさえ揺らがないなら、何をしても私は許せる。でもね、私は彼に言ってあります。そこが揺らいだら、私は悠斗を』
……………………から。
『ふふふ。ですので、私は彼を信じてます』
『もちろんだよ、朱里。俺の一番は未来永劫。死ぬまで……いや、死んでも朱里だし、俺の心は君のものだ』
俺がそう言うと、朱里は嗤う。
『ねぇ、悠斗。キスしてよ』
『あはは。喜んで』
俺と朱里はそう言い合うと、お互いに近寄る。
そして、マイクを投げ捨てて抱きしめ合う。
「愛してるよ、悠斗」
「俺もだよ、朱里」
そして、
俺と朱里は、
全校生徒の前で、
キスをした。
グラウンドは静寂に包まれた。
全校生徒の前。グラウンドのど真ん中で俺と詩織さんはキスをした。
詩織さんは俺の首に腕を回し、舌を入れてくる。
あはは……随分と情熱的じゃないか。
俺はそれにきちんと応えてあげた。
そして、深い深いキスに満足した詩織さんは俺と唇を離した。
「ふふふ。満足です」
「それは良かったよ」
フワリと笑う詩織さんに、俺も笑い返した。
『ゆ、悠斗くん……君は一体何をしてるんだい……』
怜音先輩がマイクを使って俺に聞いてきた。
あはは。そこまで動揺した貴女を見たのは初めてですね?
貴重な姿を見せてくれてありがとうございます。
『何?と言われましても。詩織さんとキスをしただけですが?』
俺がマイクでそう答えると、怜音先輩は驚いたように声を張り上げる。
『キ、キスをしただけ!!??だ、だって君は!!藤崎朱里と付き合ってるんだろう!?何故黒瀬詩織とキスをしてるんだい!?』
その言葉に、全校生徒が首を縦に振った。
『その質問には、私が答えさせていただきますね?』
『……え?』
俺からマイクを取った詩織さんが、怜音先輩の質問に返答する。
『先々週の日曜日。私と悠斗くんはデートをしました。ふふふ。その様子はみなさんもご存知かと思います。悠斗くんが私との写真をSNSにアップしていましたからね』
『そ、そうだね……随分と楽しそうだったじゃないか……』
『そして、その日の終わり。デートの締めくくりとして、私は悠斗くんを自宅に呼びました。それはもちろん。彼に告白をするためです』
『彼には藤崎朱里という彼女がいるのに。かい?』
その質問に、詩織さんが首を傾げる。
『お二人は結婚もしてないのに、諦める必要がありますか?』
『………………』
『ふふふ。話を続けますね。自宅に悠斗くんを呼んだ私は、彼に告白をしました』
桐崎悠斗くん。黒瀬詩織はあなたをお慕いしています。私をあなたの彼女にしてくれませんか?
『その告白に、彼はなんて……』
『ふふふ。君を俺の彼女には出来ない。そう振られてしまいましたよ?』
すごく楽しそうに、詩織さんはそう言った。
『ふ、振られたのになんで君たちはキスなんかしてるんだよ!!おかしいじゃないか!!』
口調が段々きつくなる怜音先輩。
そんな彼女に詩織さんは笑いながら答える。
『その後、悠斗くんは続けてくれました。私を彼女や妻にすることは出来ない。でも、彼女や妻にするようなことを全部君にしてあげる。と』
『…………え?』
『手を繋ぐことも、腕を組むことも、デートをすることも、皆さんの前でしたように、キスをすることも、えっちなことも、全部全部全部……悠斗くんは私にしてくれます。セックスだけは朱里さんとしてからじゃないとダメだよ?と言われてしまいましたが、朱里さんとしてくれれば解禁です』
『……あ、頭がおかしくなりそうだ。そ、それは浮気じゃないのかよ』
その質問には俺が答えないとな。
詩織さんからマイクを受け取り、怜音先輩の質問に答える。
『浮気では無いですよ?だって俺の心は朱里にあります。詩織さんとキスをしようがセックスをしようが、俺の一番は彼女です。詩織さんとそういう行為をするのは『彼女が望むから』ですね。そこに心はありません』
『そこが悔しいところですね。私はまだ悠斗くんの『身体』しか貰えてません。『心』は朱里さんにありますので』
俺と詩織さんの言葉に、怜音先輩が叫ぶ。
『藤崎朱里!!なんとか言ったらどうだよ!!お前の彼氏はどうなってるんだよ!!!!』
その言葉を待っていたのか、怜音先輩の近くに既に居た朱里はマイクを彼女から受け取る。
「マイクを貰いますね、怜音先輩?」
「ふ、藤崎さん……な、なんでそんなに落ち着いていられるんだよ……」
「え?だって慌てることなんか何も無いですよ」
なんてやり取りを、マイクを介さないで行っていた。
そして、朱里はマイクを持って話をする。
『皆さんこんにちは。悠斗の『彼女』の藤崎朱里です』
あはは。『彼女』の部分を強く言ったね。
『悠斗が言ってることは私も知ってること。詩織ちゃんとそういうことをすることに関しては、私は容認しています』
その言葉に、グラウンドがざわめきに包まれる。
『ふふふ。だって、風俗でセックスして帰ってくる旦那を、浮気だ!!なんて言わないじゃないですか。私にとって悠斗が詩織ちゃんとそういうことをするのはその程度の認識ですよ?』
『まぁ、私も詩織ちゃんが好きですので、三人で。と言うのを楽しんでる時もありますけど』
グラウンドが一気に静寂に包まれる。
『悠斗が言うように、彼の一番は私。彼の『心』は私のもの。そこさえ揺らがないなら、何をしても私は許せる。でもね、私は彼に言ってあります。そこが揺らいだら、私は悠斗を』
……………………から。
『ふふふ。ですので、私は彼を信じてます』
『もちろんだよ、朱里。俺の一番は未来永劫。死ぬまで……いや、死んでも朱里だし、俺の心は君のものだ』
俺がそう言うと、朱里は嗤う。
『ねぇ、悠斗。キスしてよ』
『あはは。喜んで』
俺と朱里はそう言い合うと、お互いに近寄る。
そして、マイクを投げ捨てて抱きしめ合う。
「愛してるよ、悠斗」
「俺もだよ、朱里」
そして、
俺と朱里は、
全校生徒の前で、
キスをした。
グラウンドは静寂に包まれた。
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