学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第十話 ~狂乱の体育祭~ ⑥

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 第十話  ⑥




『さぁ!!やって参りました、午前の目玉種目!!借り物競争です!!ルールは簡単。所定の位置からスタートして、お題の書かれた封筒を取ってもらいます。中に書いてあるお題に合った物、人物を手にしてゴールに向かってください。ゴールにいる審査員が、そのお題に合った物や人を連れて来ていればゴールとなります!!』

『現実的なお題もあれば、非現実的なものもあると思います。例えば……UFOとかですかね?』
『その場合はカップ麺を持って来い!!』

 グラウンドが笑いに包まれた。

『さて、準備が出来ました!!それでは借り物競争スタートです!!』


『位置について』
『よーい』
『ドン!!』

 パーン!!


 詩織さんのレースがスタートした。

 彼女はゆっくりと走りながら、最下位で封筒の場所にたどり着く。
 詩織さんは本当に運動が苦手なんだよね。

 なんて思って見ていると、ポケットからお題の封筒と同じものをひっそりと取り出してるのが見えた。

 あはは……上手いこと隠してるけど、俺にだけは見えるようにやってるな?

 俺と視線が合うと、彼女はパチンとウインクをした。

 そして、一直線にこちらに来た。

『おおっと!!黒瀬詩織さんが放送席に向かってやってきた!!お題がこちらにある。もしくは居るのかな!?』
『マイク。とかかも知れませんね?怜音先輩。貴女のマイクは没収です』
『嫌だ!!その時は悠斗くんのマイクだからね!!』

 なんてやり取りをしてると、詩織さんは俺の前に来てフワリと笑った。

「悠斗くん。私と来てください」

 そう言う彼女。グラウンドに緊張が走った。

『おおっと!!黒瀬詩織さんのお題の相手は桐崎悠斗くんだぁ!!これは生徒会員とかか!?』
『あはは。それなら空会長でも良さそうですけど。お題の中身はわかりませんが、詩織さんの頼みです。喜んで付き添いましょう』

 俺はそう言うと、放送席からグラウンドへと足を踏み入れる。

 地獄へ踏み出した。

 そんな気分だった。

「さて、悠斗くん『手を繋いでください』」
「うん。いいよ」

 俺は詩織さんと手を繋いでゴールへと向かう。

 グラウンドに激震が走っている。

 あはは……こんなものじゃ済まないぞ?

「ふふふ。悠斗くん。緊張してしまいますね?」
「そうだね。全校生徒の視線を一手に集めてるからね」

 俺と詩織さんはそんな会話をしながら歩き、
 そして、

『ゴール!!悠斗くんと黒瀬詩織さん!!今最下位でゴールへと到着しました!!』

「お題を見せてください」

 審査員の人がそう言ってきたので、詩織さんは首を横に振った。

「……え?」

 訝しげな表情の審査員の人に、詩織さんは言う。

「悠斗くんのマイクで自分で発表します」
「あはは。なるほどね」


 俺はそう言うと、ポケットに入れていたマイクを詩織さんに渡す。

『皆さん。聞こえますか?黒瀬詩織です』

 あはは……さぁ、始まるぞ……

『借り物競争のお題ですが、この場で私の口から発表をしたいと思います』

 ザワザワ……

 グラウンドがざわめきに包まれる。

『私のお題は……愛している人。です』

 グラウンドが静寂に包まれた。

 人は、驚くと言葉を失うんだな。

『私は、桐崎悠斗くんを、心の底から愛しています』

 詩織さんはそう言うと、俺の前に来る。

「悠斗くん。私に『キスをしてください』」

 …………。

「うん。いいよ」


 俺はそう言うと、彼女の身体を抱き寄せる。

「覚悟はいい?本気でするよ」
「ふふふ。私があなたを拒むことはありませんよ」

 俺の言葉に、彼女は……嗤った。

 そして、

 俺と黒瀬詩織は、

 全校生徒の前で、

 キスをした。






 グラウンドが狂乱の渦に包まれた。
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