252 / 292
第2章
第十話 ~狂乱の体育祭~ ②
しおりを挟む
第十話 ②
詩織さんと手を繋いで誰も居ない校舎の中を進む。
目的地は職員室だ。
まだ空さんや三輪先輩が来ていないので、生徒会室は鍵が掛かっているはずだ。
俺たちは職員室で常駐している先生から鍵を借りて、生徒会室へと向かう。
『生徒会室』
鍵を解いてから扉を開く。
ひんやりとした空気を感じながら中に入ると、やはり誰も居なかった。
「俺たちが一番乗りだね、詩織さん」
「そうですね。まぁ下の人間が早く来るのは当然かと思います」
少しだけ体育会系的な思考回路に少しだけ面白さを覚えながら、俺は自分の椅子に座る。
すると、俺の隣に座った詩織さんが俺の目を見て言ってきた。
「今なら誰もいませんよ?」
「そうだね。だけど、もう五分もしないうちに先輩二人は来ると思うよ?」
俺のその言葉に、詩織さんはニヤリと嗤った。
「五分もあるじゃないですか」
「確かに」
俺はそう言うと、両手を広げる。
その中に詩織さんは飛び込んできた。
「幸せです」
「それは何より」
俺の身体をぎゅっと抱き締めながら、詩織さんは顔を胸に押し当てる。
「ドキドキしてますね」
「あはは。君に抱き締められて平常心でいられるほど、俺は枯れて無いよ」
その言葉に詩織さんは嬉しそうに笑って、
「キスしてください。先輩が来てしまうかもしれないので軽めの……んぅっ!!」
軽めのを所望していたようだけど、俺が我慢出来なかったので濃厚なのをしておいた。
早朝の生徒会室で会員二人がこんな事をしてるなんて、なんて不道徳……
そして、たっぷりと彼女を堪能した俺は唇を離す。
「ご馳走様」
「……はい。お粗末さまでした」
トロンとした目の詩織さん。そんな彼女を満足気に俺は見ていると、
コンコン
と扉がノックされた。
あはは。誰か来たみたいだ。
「はい!!空いてます!!桐崎悠斗と黒瀬詩織は既に出席しています!!」
と返事をした。
ガラリと扉が開くと、空さんと三輪先輩が一緒にやって来た。
「おはよう、黒瀬さん。『悠斗』くん」
「はい。おはようございます『空』さん」
俺と空さんは名前で呼びあって挨拶をした。
その様子を見た三輪先輩が驚いたように目を見開いた。
「え?空がハーレム王のことを名前で!?しかもお互いに!!??」
……その、三輪先輩のハーレム王呼びも何とかなりませんか……?
「あはは。昨日なんだけど、悠斗くんとラウンズで一日身体を動かしてきてね。お互いに親睦を深めてきたわけさ」
「名前呼びは空さんから言われたことですね。俺もそれに応じた形です。まぁ……怜音先輩も俺を名前で呼んでますし、ある種の親睦の証だと思っていただければと思います」
「そ、そうなんだ。わかったよ……」
三輪先輩はまだ納得はいって無いだろうけど、そう答えた。
「さて、蒼井さんに悠斗くん。時間も限られてますので仕事に入りましょう」
「うん。そうだね、ごめんね詩織さん」
俺は場の空気を元に戻してくれた詩織さんに感謝した。
「空さんの原稿ですが、拝読させてもらいました。特に問題は無いと思います。個人的にはもう少し面白味があってもいいかな?と思いましたが、空さんらしい言葉選びだと思いました」
「うん。ありがとう。本番もしっかりと噛まないように言えるようにするよ」
「ここに来るまでの間に、保管してある機材の確認もしてきたけど問題はなかったよ」
「スケジュールの時間割も余裕を持って作ってあります。こちらも特に問題なく行けるかと思います。万が一の場合は中休憩の時間で調整する予定になってます」
そんな会話をしながら、生徒会室で確認事項を一つづつ潰していく。
そして、
「うん。問題は無さそうだ。あとは怪我なく体育祭が終えられることを祈ろうか」
「そうですね。保健委員の仕事が無いのが理想ですからね」
なんて話をしていると、八時を少し回っていた。
「それでは、自分はこれから実行委員の仕事があるのでグランドに行きますね」
俺はそう言うと、椅子から立ち上がる。
「頑張ってください。悠斗くん」
「うん。ありがとう詩織さん」
俺はそう言うと、生徒会室から出て行った。
「待ってたよ、悠斗」
生徒会室から出て少し歩くと、ニコリと笑みを浮かべた朱里が俺の前に現れる。
「お待たせ。確認事項が多くて少し長引いちゃ……んっ!!」
俺の身体を廊下の壁に押し付けて、朱里は強引に俺と唇を重ね合わせる。
求められるまま、俺が舌を入れると……
ガリッ
「……っぅ!!!!」
舌が噛まれる。
鋭い痛みに思わず離れようとするものの、後ろは壁。
俺は逃げられない。
一度、二度、三度。
傷口を舐めるように朱里の舌が俺の傷口を刺激する。
唇を離したときに、赤く染った唾液が糸を引く。
唇の端に流れる俺の血を舌で舐め取り、朱里は言う。
「…………言い訳するな」
「はい」
「随分と詩織ちゃんと楽しんだみたいだね?」
ニヤリと嗤う朱里。
「私にもしてよ」
「当然だよ。求められなくても俺からしてた」
俺はそう言うと朱里の身体を抱きしめる。
「ねぇ悠斗の一番は誰?」
「朱里だよ。当然だろ?」
俺はそう言うと彼女と唇を重ね、痛みの残る舌を絡める。
「あなたの心は誰のもの?」
「朱里だよ。当然だろ?」
俺がそう言うと、朱里は満足したように笑みを浮かべる。
「今日。悠斗はみんなの前で詩織ちゃんからキスをされる」
「だろうね」
俺がそう答えると、朱里は楽しそうに言った。
「ねぇ、どうするの?」
「そうなったら全部を言うよ。俺の気持ちをね」
その言葉に朱里は嗤う。
そして、俺の目を見てこう言い放った。
「あはは!!そうなったら『狂乱の体育祭』の開幕だね!!」
と。
詩織さんと手を繋いで誰も居ない校舎の中を進む。
目的地は職員室だ。
まだ空さんや三輪先輩が来ていないので、生徒会室は鍵が掛かっているはずだ。
俺たちは職員室で常駐している先生から鍵を借りて、生徒会室へと向かう。
『生徒会室』
鍵を解いてから扉を開く。
ひんやりとした空気を感じながら中に入ると、やはり誰も居なかった。
「俺たちが一番乗りだね、詩織さん」
「そうですね。まぁ下の人間が早く来るのは当然かと思います」
少しだけ体育会系的な思考回路に少しだけ面白さを覚えながら、俺は自分の椅子に座る。
すると、俺の隣に座った詩織さんが俺の目を見て言ってきた。
「今なら誰もいませんよ?」
「そうだね。だけど、もう五分もしないうちに先輩二人は来ると思うよ?」
俺のその言葉に、詩織さんはニヤリと嗤った。
「五分もあるじゃないですか」
「確かに」
俺はそう言うと、両手を広げる。
その中に詩織さんは飛び込んできた。
「幸せです」
「それは何より」
俺の身体をぎゅっと抱き締めながら、詩織さんは顔を胸に押し当てる。
「ドキドキしてますね」
「あはは。君に抱き締められて平常心でいられるほど、俺は枯れて無いよ」
その言葉に詩織さんは嬉しそうに笑って、
「キスしてください。先輩が来てしまうかもしれないので軽めの……んぅっ!!」
軽めのを所望していたようだけど、俺が我慢出来なかったので濃厚なのをしておいた。
早朝の生徒会室で会員二人がこんな事をしてるなんて、なんて不道徳……
そして、たっぷりと彼女を堪能した俺は唇を離す。
「ご馳走様」
「……はい。お粗末さまでした」
トロンとした目の詩織さん。そんな彼女を満足気に俺は見ていると、
コンコン
と扉がノックされた。
あはは。誰か来たみたいだ。
「はい!!空いてます!!桐崎悠斗と黒瀬詩織は既に出席しています!!」
と返事をした。
ガラリと扉が開くと、空さんと三輪先輩が一緒にやって来た。
「おはよう、黒瀬さん。『悠斗』くん」
「はい。おはようございます『空』さん」
俺と空さんは名前で呼びあって挨拶をした。
その様子を見た三輪先輩が驚いたように目を見開いた。
「え?空がハーレム王のことを名前で!?しかもお互いに!!??」
……その、三輪先輩のハーレム王呼びも何とかなりませんか……?
「あはは。昨日なんだけど、悠斗くんとラウンズで一日身体を動かしてきてね。お互いに親睦を深めてきたわけさ」
「名前呼びは空さんから言われたことですね。俺もそれに応じた形です。まぁ……怜音先輩も俺を名前で呼んでますし、ある種の親睦の証だと思っていただければと思います」
「そ、そうなんだ。わかったよ……」
三輪先輩はまだ納得はいって無いだろうけど、そう答えた。
「さて、蒼井さんに悠斗くん。時間も限られてますので仕事に入りましょう」
「うん。そうだね、ごめんね詩織さん」
俺は場の空気を元に戻してくれた詩織さんに感謝した。
「空さんの原稿ですが、拝読させてもらいました。特に問題は無いと思います。個人的にはもう少し面白味があってもいいかな?と思いましたが、空さんらしい言葉選びだと思いました」
「うん。ありがとう。本番もしっかりと噛まないように言えるようにするよ」
「ここに来るまでの間に、保管してある機材の確認もしてきたけど問題はなかったよ」
「スケジュールの時間割も余裕を持って作ってあります。こちらも特に問題なく行けるかと思います。万が一の場合は中休憩の時間で調整する予定になってます」
そんな会話をしながら、生徒会室で確認事項を一つづつ潰していく。
そして、
「うん。問題は無さそうだ。あとは怪我なく体育祭が終えられることを祈ろうか」
「そうですね。保健委員の仕事が無いのが理想ですからね」
なんて話をしていると、八時を少し回っていた。
「それでは、自分はこれから実行委員の仕事があるのでグランドに行きますね」
俺はそう言うと、椅子から立ち上がる。
「頑張ってください。悠斗くん」
「うん。ありがとう詩織さん」
俺はそう言うと、生徒会室から出て行った。
「待ってたよ、悠斗」
生徒会室から出て少し歩くと、ニコリと笑みを浮かべた朱里が俺の前に現れる。
「お待たせ。確認事項が多くて少し長引いちゃ……んっ!!」
俺の身体を廊下の壁に押し付けて、朱里は強引に俺と唇を重ね合わせる。
求められるまま、俺が舌を入れると……
ガリッ
「……っぅ!!!!」
舌が噛まれる。
鋭い痛みに思わず離れようとするものの、後ろは壁。
俺は逃げられない。
一度、二度、三度。
傷口を舐めるように朱里の舌が俺の傷口を刺激する。
唇を離したときに、赤く染った唾液が糸を引く。
唇の端に流れる俺の血を舌で舐め取り、朱里は言う。
「…………言い訳するな」
「はい」
「随分と詩織ちゃんと楽しんだみたいだね?」
ニヤリと嗤う朱里。
「私にもしてよ」
「当然だよ。求められなくても俺からしてた」
俺はそう言うと朱里の身体を抱きしめる。
「ねぇ悠斗の一番は誰?」
「朱里だよ。当然だろ?」
俺はそう言うと彼女と唇を重ね、痛みの残る舌を絡める。
「あなたの心は誰のもの?」
「朱里だよ。当然だろ?」
俺がそう言うと、朱里は満足したように笑みを浮かべる。
「今日。悠斗はみんなの前で詩織ちゃんからキスをされる」
「だろうね」
俺がそう答えると、朱里は楽しそうに言った。
「ねぇ、どうするの?」
「そうなったら全部を言うよ。俺の気持ちをね」
その言葉に朱里は嗤う。
そして、俺の目を見てこう言い放った。
「あはは!!そうなったら『狂乱の体育祭』の開幕だね!!」
と。
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説


十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~
味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」
春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。
そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか)
今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。
「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」
そう言う俺に、
「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」
と笑顔で言い返して来た。
「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」
「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」
パタン
俺は玄関の扉を閉めた。
すると直ぐに
バンバンバン!!!!
と扉を叩く音
『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』
そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。
はぁ……勘弁してくれよ……
近所の人に誤解されるだろ……
俺はため息をつきながら玄関を開ける。
そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。
腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる