学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第九話 ~蒼井さんとの初めてのお出掛け~ ②

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 第九話  ②



 時刻は九時半。集合は駅前に十時の予定になっていた。

 駅前の無料の駐輪場に愛車を停め、防犯対策をしっかりとした上で離れる。

 目的地まではここから歩いて五分程度。
 こちらが待つ分には特に何も感じないので、だいたいこの位の時間には行こうと思っていた。

 そうして歩いていると、蒼井さんの姿はまだ見えなかった。

 良かった。彼女よりは早く来れたんだな。

 そんなことを思っていると、

「やぁ、桐崎くん。また会ったね」
「佐々木さん。おはようございます」

 紳士的なスーツの男性。佐々木さんが俺の目の前に現れる。

「この間は妹の店に行ってくれたみたいだね。ありがとう。それに、君と友達の広告写真も非常に効果的だったみたいでね。あの後はかなり繁盛してるようだ。美里もお礼を言ってくれって言ってたよ」

「あはは。それは良かったです。こちらとしても、妹さんにはかなりサービスをしてもらいました。今日は少し体を動かす予定なのでコンタクトレンズですが、普段使い用のメガネも、オシャレを意識したものも、大切に使わせてもらってます」

 俺はそう言うと、佐々木さんに頭を下げる。

「身体を動かす。と言うと、そこのラウンズかい?」

 佐々木さんはそう言うと、行く予定になっているアミューズメント施設を指さす。

「はい。そうです。フリータイムで一日過ごす予定です」

 俺がそう言うと、佐々木さんはカバンを空けて中を少しだけ探していた。

 もしかして、何かあるのかな?

「うちの雑誌に広告を載せる関係でね、あそこの割引券を何枚か貰って居るんだ。君にはお世話になってるし、もし良ければ使ってくれないか?使用期限も問題ないしね」

 佐々木さんはそう言うと、二枚の割引券を取り出した。

「その様子だとデートだろ?浮いたお金はなにかに使ってくれ」
「あはは。デート、という訳ではありませんが、女性と二人で遊ぶ予定です」

 俺が苦笑いでそんなことを言うと、

「おや?桐崎くん。僕は君と『デート』のつもりだったんだけどね。寂しいことを言うじゃないか」
「あ、蒼井さん……」

 後ろから明るい色の帽子を被り、オシャレなTシャツにハーフパンツ。足元はスニーカーと言う、動きやすい格好をした蒼井さんが話しかけて来た。
 肩には少しだけ大きなスポーツバックを下げている。

「あはは。君の交友関係にはあまり口を出さないでおこうかな?」
「す、すみません……」

 佐々木さんに気を使って貰った形になるので、俺は少しだけ肩をすぼめる。

「それじゃあ桐崎くん。またね。僕は仕事に戻ることにするよ」
「あ、はい。佐々木さん、割引券はありがたく使わせてもらいます」

 去っていく佐々木さんに頭を下げた俺は、

『これだけしてもらったんだから、少しくらいなら彼のお仕事に手を貸しても良いかも知れないなぁ』

 なんてことを思っていた。

「さて、桐崎くん。今の男性は?」
「あ、はい。佐々木さんと言って少しお世話になったことのある方です。駅前で結構会うことが多い人ですね」

 俺はそう話したあと、佐々木さんから貰った割引券を見せる。

「以前。佐々木さんの妹さんが経営するメガネ屋さんで買い物をしたんです。その時にアップした写真のお陰で繁盛するようになった。と感謝されまして。これはそのお礼としてもらいました」
「おや、これは割引券じゃないか。しかも半額とは」

 これなら二人で三千円くらいの割引になる。
 高校生には大きな金額だ。

「ファッション雑誌の編集者をしている方で、以前モデルをやらないか?と言われたんですよ。まぁ、お断りしてしまったんですが、結構親切にして頂いてるので、時間がある時にでもお仕事の手伝いをしようかと思ってます」

「なるほどね。君は背も高いし顔を整ってる。モデルに誘われるのもわかるよ。さすがは桐崎くんだね」

 うんうんと頷く蒼井さん。
 あなただって何度もそんな経験あるでしょ……


「さて、こんなところで立ち話もあれだ。少し早いけど向かうことにしようか」
「はい。そうですね」

 蒼井さんの提案に俺は首を縦に振った。

「よし、では行こうか『悠斗くん』」
「え?」

 突然の名前呼び。
 な、何があった!?

 驚く俺に、蒼井さんが言う。

「おいおい悠斗くん。今日、僕たちが一日を過ごす理由を忘れたのかい?」

 親睦を深めるため。だよ?

「さぁ、お互いに名前呼びと行こうじゃないか!!」
「あはは……わかりましたよ『空』さん」


 うん。すんなり呼べて良かった。

 俺はそんなことを思いながら、空さんと一緒にアミューズメント施設へと足を運んだ。
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