学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第八話 ⑮ ~星くんとの真剣勝負は怜音先輩のノリノリの実況付きでした~

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 第八話  ⑮



 六時間目の授業も半ばを過ぎた頃、俺はクラスのみんなに招集を掛けていた。

 そろそろ綱引きの練習に入ろう。という話だ。

 そうしてみんなを集めて、確保しておいた綱引き用の縄の前に行くと、既に星くんのクラスの人達は集まっていた。

「ごめんね、星くん。また待たせてしまったね」
「いや、俺たちも今揃ったところだから気にしなくていいよ。それよりも、あれを見た方が良いかも……」
「え……」

 星くんの指した先を見ると

『やっほー!!マイダーリン!!頑張ってね!!チュッ!!』

 ニコニコの怜音先輩が、どっから持ってきたのかマイクを片手にとんでもないことを言っていた。

「頭いてぇ……」
「あはは……あの人にあれだけ好かれてるのは君だけだろうね」
「全然嬉しくねぇよ……」

 そんなやり取りを経て、俺たちは所定の位置について行く。

 一番力が出る人間を最後尾に設置するのがセオリー。
 なので、健を一番後ろにする。

 そして、俺は……真ん中あたりかなぁなんて思ってると、

『悠斗くんと星くんは一番前で!!じゃないと写真映えしないでしょ!!』

 と、怜音先輩から指示が飛んできた……

 名前呼びはもういいや……

 一番前に行くと、苦笑いをしている星くんが居た。

「お互い苦労するね」
「まぁ、でもこれで良いのかもしれないね」
「え?」

 首を傾げる星くんに俺は笑う。

「君が負けるところを間近で見れる」

 そういう俺に、星くんも笑う。

「言うじゃないか」

 俺たちは縄を掴むと、臨戦態勢に移る。


『さぁ!!そろそろ戦いの準備が整いました!!今から行われるのは、学園の王子様VS女たらしのハーレム王の綱引き真剣勝負!!何故このようなことが起きたか!?それはあのハーレム王が今話題の女性、深緑の令嬢こと首藤美月さんを毒牙に掛けようとしている!!その話を聞いた学園の王子様がそうはさせないとこの勝負を持ちかけた!!学園の三大美少女だけでは飽き足らず、深緑の令嬢まで手を出すとは!!流石はハーレム王!!しかしそうは問屋が下ろさないぞ!!頑張って学園の王子様!!負けるな学園の王子様!!』

「悪意しか感じねぇ!!」
「あはは……」

 そして、綱引きの準備が整ったところで、ピストルを持った蒼井さんがやってきた。

「ごめんね、桐崎くん。うちの怜音が……」
「いや、良いですよ。あれがあの人ですよ……」

 俺が諦めたように言うと、蒼井さんは苦笑いを浮かべた。

「あはは、確かに……じゃあ、そろそろ行くよ」

「「はい!!」」

 蒼井さんがピストルを構えて。

 パーーーン!!!!

 と打ち鳴らした。

『うおおおおぉ!!!!!』

『だあああありぁあああ!!!!』

 ビン!!と張る縄。

 全力と全力をぶつけ合う!!

 綱引きの極意は力を揃えること!!

 俺はでかい声で音頭を取る。

『おーえす!!おーえす!!』

 ぐい!!ぐい!!

 と縄を引く。だが、負けじと星くんのクラスも声を揃えて引いてくる。

 完全な互角!!
 赤い部分はピクリとも動かない!!

 その時だった!!

『悠斗くーん!!頑張ってー!!』

 と怜音先輩が応援してきた。

 力が!!出る!!訳が無い!!

 一気に一人分の力が抜ける。

 勝負の均衡が崩れた瞬間だった。

「あ!!やべ!!」

 俺が慌てて力を込めるも時すでに遅し……

 致命的なほどの差になったところで、蒼井さんが再びピストルを鳴らした。


 パーン!!パーン!!

「勝負あり!!勝者は二年三組!!」

 喜んでいる星くんのクラス。

 俺は肩を落としながら、クラスメイトの皆に向き合った。

「ごめん。敗因は俺だ……」

 そう言って頭を下げた。

 そんな俺を石崎が笑う。

「いや、桐崎。ありゃあ笑っちまうだろ?」

 それにこれは練習だし。本番ではアイツらは味方だろ?

 なんてことを言ってくれた。

「あはは。ありがとう、石崎」

 なんて、ちょっといい空気になっていた所だった。

 トントン

 と俺の肩が叩かれる。

「……え?何かな」

 と振り向くと、

「ねぇ、悠斗?」
「首藤さんも手を出してるとはどういう意味ですか?」

 ニコリと笑う朱里と詩織さん。

「い、いや……それは怜音先輩の……」

「おしおきだから」
「そうですね、おしおきです」





 弁解の余地は俺には……無かった……
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