学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
235 / 292
第2章

第八話 ⑬ ~俺が持ってるコネ。と言ったらこの人しか居ないよな~

しおりを挟む
 第八話  ⑬




 五時間目の授業を終え、俺はあらかじめ昼休みの内にメッセージを送っていた『あの人』へ会いに行った。

『三年三組』

 俺は目的の場所へと辿り着くと中の先輩たちに声を掛ける。

「皆さんすみません!!二年一組、生徒会の副会長の桐崎悠斗です。三輪怜音先輩はいらっしゃいますか?」

 俺のその声に、中の先輩たちが一斉にこっちを見る。

 うわ、こえー

 その光景に心臓が縮みそうになるが我慢する。

「やぁ、悠斗くん。どうしたんだよ、私の教室に来て」

 ニマニマと笑いながら、怜音先輩が俺の元へと歩いてくる。

「怜音先輩。俺の名前呼びを許したつもりはありませんが?」

 半眼で睨む俺に、怜音先輩は笑う。

「王子様くんの一件が解決したら名前で呼んでいいって言ったじゃないか?」
「いや、まだ解決してませんよね?」

 あの記事一枚で解決した。なんて言ったらちょっと強引すぎるだろ……

「ちぇーマイダーリンはケチだねぇ……」

 なんて言う怜音先輩。いや、ダーリンでも無いんですが……

「はぁ……話が進まないんで、もう良いです。あのですね、ここに来たのには理由があるんですよ」
「綱引きの綱と大縄跳びの縄。今日の六時間目のLHRで三年が確保しそうな部分を君に融通して欲しい。その事だろ?」

 怜音先輩はそう言うとニヤリと笑う。

「はぁ、最初からわかってるなら俺で遊ばないでください」
「良いじゃないか。君と私のコミュニケーションだよ」

 バンバンと肩を叩く怜音先輩。

 そんな先輩が続ける。

「で、君に縄を融通する手筈を整えてあげてる。既に私が君のために『力を貸している』状態だ。この状況下で、君は私に何を提示してくれるのかな?」

 怜音先輩にはあらかじめこうメッセージを送ってある。

『六時間目のLHRで大縄跳びと綱引き用の縄をうちのクラスに融通してください。怜音先輩が喜ぶ手土産を持っていくことを約束します』と。

 こちらの力が弱い状況での交渉になる。

 だが、こちらが持っているカードが強いと踏んでいるので、賭けの要素は低いと判断した。
 それよりも、確実に縄の確保に動いた方が良いと思ったからだ。

「今日のLHRでの体育祭の練習で、俺のクラスと星くんのクラスは『合同練習』をする手筈になってます」
「……へぇ、それで?」

 ニヤリと笑う怜音先輩。よし、興味を引き出せた。

「本来なら俺のクラスと星くんのクラスは味方同士です。ですが、俺は彼に提案しました。『綱引きの練習として、君のクラスと戦おう』と」
「なるほどね。つまり、君は私に新聞記事のネタを提供する。と言いたいんだね?」
「はい。『女たらしのハーレム王』VS『学園の王子様』綱引きで雌雄を決する!! なかなか面白そうな見出しだと思いませんか?」

 そう、これが怜音先輩に俺が提示するカード。
 きっと食いついてくれるはずだと思っている。

「ふむ。なかなか面白いカードだね。これなら君に『縄を融通する』と言う行為に対しての対価としては申し分無い」
「ありがとうございます」

 そして、怜音先輩は俺に聞いてきた。

「だが、これなら君は『メッセージで済ませるだけ』でも良かったはずだ。わざわざこのに来たのには『理由』があるんじゃないか?」

 ははは。やはりこの人は頭がキレる。

『縄を貸出す対価』として、俺の出したカードが、怜音先輩の『お気に召さなかった』場合の手立てを持ってきていた。

「怜音先輩と俺のクラスは体育祭では味方ですよね?」
「そうだね。同じ奇数のクラスだ」

 その言葉に俺はニヤリと笑う。

「俺たちと合同練習をしませんか?」
「……くく……ははははは!!!!」

 怜音先輩は俺の提案に笑った。

「なるほどね、それが君の『本命』なんじゃないか!!」

 そう、三年生は格上の相手だ。その相手と戦えるのなら、練習としては申し分ない。

「それに、これなら生徒会長VS副会長というカードも作れますよ?」

 俺はそう言うと、教室の中からこちらを伺っている蒼井さんに視線を飛ばす。

 少しだけ驚いた彼女に、俺は頭を下げる。

「はぁ、全く。やってくれたよね桐崎副会長」

 怜音先輩はそう言うと、軽くため息を吐いた。

「これじゃあこっち側のカードの方が弱い。君には『ひとつ貸し』にしてあげるよ」
「良いんですか?」

 俺がそう言うと、怜音先輩は笑う。

「君に融通するはずの縄を、こちらも使えることになるんだ。実質的には私は何もしていないのと一緒だ」

 君と私はあくまでも対等の関係だ。そうだろ、桐崎悠斗生徒会副会長?

 怜音先輩はそう言うと、俺に背中を向ける。

「私のクラスには合同練習の話は通しておく。なに、空を使えば楽勝だ」
「ありがとうございます」

 俺はそう言って頭を下げる。

 そんな俺に怜音先輩言った。

「本当に、君と言う男と居ると楽しいね。だが、男女の中になるよりは、こうした関係の方が、やはり良いのかもしれないね」

 そんな捨て台詞を残して、怜音先輩は蒼井さんの元へと向かった。




 とりあえず、俺の目的は達成出来た。

 はぁ……本当に、あの人と話すと疲れるんだ……

 次の時間の練習の前から、俺はヘトヘトになってしまったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」 春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。 そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか) 今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。 「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」 そう言う俺に、 「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」 と笑顔で言い返して来た。 「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」 「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」 パタン 俺は玄関の扉を閉めた。 すると直ぐに バンバンバン!!!! と扉を叩く音 『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』 そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。 はぁ……勘弁してくれよ…… 近所の人に誤解されるだろ…… 俺はため息をつきながら玄関を開ける。 そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。 腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...