学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
219 / 292
第2章

番外編 ⑦ ~星くんの恋愛相談~

しおりを挟む
 番外編  ⑦





 朱里視点



 放課後。私とゆーこちゃんは隣のクラスの美月ちゃんの所へと向かっていた。

 久しぶりに話しに行く元クラスメイトで友達の女の子。

 特に用事が無ければ話しに行くなんて出来ないなぁ……

 なんて思ってたけど、こうした理由があるなら会いに行ける。

 それに、今日は部活が休みの日。

 バスケとサッカーと野球が休みだったはず。

 サッカー部のマネージャーをしてる美月ちゃんも、放課後は空いてると思うんだ。

「こんにちわー!!美月ちゃん居る!?」

 私は教室の扉を開けると、中を見渡す。

 突然の私の登場に、中の生徒達は驚いたように声を上げてた。

 あはは……ちょっとテンション高かったかな……

「朱里ちゃん。私なら居るよー」

 教室の真ん中から、温厚な声が聞こえてきた。

 セミロングの髪型に、私と同じくらいの背丈。

 体型は私の大切なお仲間で、性格は気配りが出来る優しい人。

 彼女は去年、美化委員をしてた。教室の花瓶の水換えを学級委員だった私が忘れちゃった時に、代わりにやってくれてたりした。

 あはは。懐かしいな。

「朱里ちゃんがこっちに来るなんて珍しいね?」
「朱里だけじゃないよ、美月。私も居るよ」

 と後ろからゆーこちゃんも姿を見せた。

「わぁ、優子ちゃん。久しぶり!!」

 美月ちゃんは笑顔でゆーこちゃんを迎え入れる。

「今日は部活休みでしょ?良かったら久しぶりに三人でお茶しない?」

 恋バナしよーよ!!

 と私が美月ちゃんを誘うと、

「うん。いーよ。ちょうど今日の放課後は空いてるし。朱里ちゃんの惚気話に付き合ってあげるよ?」

 と美月ちゃんはイタズラぽく笑った。

「あはは。悠斗の話もそうだけど、私は美月ちゃんの話も聞きたいな?」

 私がそう言うと、美月ちゃんは顔を赤くした。

「わ、私!?……私なんて聞いても面白くないよー」
「お!?その反応。もしやお相手がー」
「朱里。こんな所で話してると邪魔だから、場所変えるよ?」

 と、ゆーこちゃんに言われて私は気が付いた。

 あはは……ここは教室の扉の前だ。

「ごめんね、ゆーこちゃんに美月ちゃん。さっそくだけどスタバに行こうか!!」
「う、うん!!久しぶりに三人で話せるのは私も楽しみだよー」


 私たち三人はそうして、近くの喫茶店へと場所を移動したんだ。



 スタバへと到着した私たち三人は、各々で好きな飲み物を頼んで席に座った。

 周りには私たちと同じように、部活が休みだった女の子達が、友達グループを作って話をしているのが見えた。

「結構人居るねー」
「私たちみたいに部活が休みだった女の子が多く居るね」
「考えることはみんな一緒。って事だね」

 私は頼んだ甘さたっぷりのバニラフラペチーノを、チョコレートでカスタムした通称『ゴディバ』って呼ばれてる奴をひと口飲んだ。
 うーん!!美味しい!!

「朱里ちゃんは本当に甘いの好きだねー。それで太らないのはやっぱり運動してるからかな?」

 そう言う美月ちゃんは白桃フラペチーノを飲んでる。
 果物のフレーバーが好きだったよね、美月ちゃん。

「あはは。太らないのは良いけど、もう少し……欲しかったなぁって……」

 と、私は自分の胸を見た。

「仲間だよー。私ももう少し欲しかったなーって。その点優子ちゃんはそこそこあるよね?」
「……まぁ、そこそこはね。でも私と朱里の近くにはとんでもないのが居るけどね?」

 と、ゆーこちゃんは笑いながら少しビターに仕上げたカフェモカをひと口飲んだ。

「あはは……詩織ちゃんは確かにすごいよね……」

 私がそう言うと、美月ちゃんは少し意外そうな顔をした。

「わー。名前で呼んでるなんて、黒瀬さんと随分と仲良くなってるんだね。たまにここで彩ちゃんと話してるのを見掛けてたけど、あの人も去年とすごい変わったよねー」

 へぇ。ここを使うんだ詩織ちゃん。

「すごく自然に笑うようになったと思うよね。なんか可愛くなった?元々すごい可愛かったけど」

 恋は人を変える。って奴かな……

 やはり敵は強い!!宣戦布告はしてるんだし、私も負けないように頑張らないと!!

「やっぱり恋は人を変える。って奴だよね。そう言えばさ、美月。風の噂で聞いたんだけどさ、あんた今困ってるんじゃない?」

 と、ゆーこちゃんが本題を話し始めた。

「な、なんか気になる言葉が聞こえたけど……そうだね。ちょっと今、困っててね……」

 美月ちゃんはそう言うと、飲み物をひと口飲んで話をする。

「その……他校のサッカー部の男子から変に絡まれててね……」
「……うん」

 私が相槌を打つと、美月ちゃんは下を向いて言葉を続ける。

「私、こんな性格だから、なかなか強く嫌だっていえなくて。本当は嫌なんだけど、ずっと付きまとわれてるんだ……」
「なるほどね。聞いてた通りだね」

 ゆーこちゃんはそう言うと、美月ちゃんに続けた。

「そんなあんたを助けるために私たちが力を貸すよ。って言ったら、手を取ってくれる?」

 ニコッと笑ってそう言うとゆーこちゃん。

「……え?」

 ゆーこちゃん……かっこいい!!

 私は隣の親友に尊敬の眼差しを送る。
 美月ちゃんもゆーこちゃんの言葉に驚いてた。

「た、助けてくれるの?」
「そのためにこうして話をしに来たんだよ。本当はね」

 ゆーこちゃんのその言葉に、美月ちゃんは泣いてしまった。

「う、嬉しい……本当に最近辛くて、でも……誰にも言えなくて……星くんに、言おうかなって思ったけど……あんまり迷惑にもなりたくなくて……」
「ちなみに、あんたを助けたいって言ってきたのは、星だよ」
「……え?」

 私はハンカチを美月ちゃんに渡した。

「使って、美月ちゃん」
「あ、ありがとー」

 私のハンカチで涙を拭いた美月ちゃん。

「今日の昼にね、星くんから話を聞いたよ。もともとは悠斗に相談してたみたいだけど」
「そ、そうなんだ……星くん、気がついてくれてたんだ……」

 顔を赤くしながら、そう呟く美月ちゃん。
 すごく可愛い……

「でも、大丈夫なのかな。星くんに、すごくいっぱい支援金?が来てるの……私を助けたりなんかしたら、変な噂とか立って、支援金が減っちゃうかも……」

 そしたら部員のみんなに迷惑が……

「そこは私の彼氏が何とかしてくれる案を出してくれたよ!!」
「……え、桐崎くんが?」
「まぁ、支援金なんて制度を作ったからね。責任を感じてたみたいだよ、いーんちょー的に」

「ど、どんな案なのかな?」

 そう言う美月ちゃんに、私は悠斗の案を話した。

「学園の王子様が深緑の令嬢を悪漢から救い出す。そう言うストーリーを作ろう。だってさ」
「え、ええええええええええええ!!!???」


 あはは……そりゃ驚くよね……

「まぁ簡単に言えば、星があんたを助けるのをドラマや映画のワンシーンに見立てることで、周りの非難を反らして行こう。そういう案だよ」
「そ、そんなことが出来るの?」

 首を傾げる美月ちゃんに私は言う。

「うん。悠斗が新聞部に話をしに行ってるし、詩織ちゃんが今脚本を書いてる。星くんもこの話に乗り気だから、あとは美月ちゃんがそれに賛同してくれたら、話が前に進むよ!!」

 私がそう言うと、美月ちゃんは少しだけ思案したあと、私の目を見て言った。

「う、うん!!私、やるよ!!」
「そうこなくちゃ!!」

 美月ちゃんの手を握りながら、私は笑った。

 そして、一番大切なことを聞いてみた。

「ねぇ、美月ちゃん?」
「え、なに……朱里ちゃん……」

 私はニコーっと笑顔を向けながら彼女に聞く。

「美月ちゃんはさ、星くんのこと……好き?」
「……え?」

 私のその質問に、美月ちゃんは顔を真っ赤にしていた。

 あはは……答えみたいなもんだけど……

 そして、少しした後、美月ちゃんは言う。

「うん……好き。あの人のそばに居たいから、マネージャーになったから……」
「そうか!!じゃあ尚更頑張らないとね!!」

 私はそう言うと、美月ちゃんの手をギュッと握った。



 とりあえず、悠斗に言われてたことは全部やり遂げたよ!!

 私は彼の信頼に応えることが出来て本当に良かった。と心からそう思った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」 春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。 そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか) 今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。 「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」 そう言う俺に、 「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」 と笑顔で言い返して来た。 「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」 「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」 パタン 俺は玄関の扉を閉めた。 すると直ぐに バンバンバン!!!! と扉を叩く音 『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』 そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。 はぁ……勘弁してくれよ…… 近所の人に誤解されるだろ…… 俺はため息をつきながら玄関を開ける。 そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。 腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

偶然PTAのママと

Rollman
恋愛
偶然PTAのママ友を見てしまった。

処理中です...