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第2章
第七話 ⑨ ~詩織さんとの初めてのデート~ 悠斗視点
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第七話 ⑨
「桐崎悠斗くん。黒瀬詩織はあなたをお慕いしています。私をあなたの彼女にしてくれませんか?」
俺の目を見てそう言う詩織さんは、とても綺麗だった。
この部屋に来た時点で覚悟はしていた。
彼女から、本気の告白をされるだろうと。
俺は大きく息を吐き出す。
そして、彼女に自分の気持ちを吐き出す。
「ありがとう。詩織さん。その気持ちはとても嬉しいし、君のような魅力的な女の子から慕われていることを、俺は誇りに思う」
「…………はい」
俺の言葉を、詩織さんは目を見て聞く。
そして、俺は言う。
「俺も、詩織さんが好きだよ」
と。
「………………え?」
惚けたような表情で、詩織さんが声を出した。
「俺はね、君が思う以上に詩織さんが好きなんだ」
それは、以前話した『朱里とは違うベクトルで』という意味じゃない。
「君と付き合って、手を繋いで歩いて、デートをして、抱きしめ合って、キスをして、それ以上のこともして、就職して、結婚して、仕事に行く前には行ってらっしゃいのチューとかもしたいね、子供を作って、娘だったら詩織さんに居てすごく綺麗な子になるだろうね、男だったら俺に似て背が高いといいな、そして育児方針で喧嘩なんかしたりして、でも仲直りして、家族みんなで旅行とかもしたいね、子供が大人になって、娘が夫になる人を連れてきたら相手を一発ぶん殴って、そのあと一緒に酒を飲もう、そして孫が出来て、仕事を定年までやり遂げて、老後は縁側でお茶でも飲みながらライトノベル片手に語り合いたい。だけどごめん。俺の方が先に寿命で死んでしまうだろうけど、悔いのない素晴らしい人生だった。そう言ってたくさんの子供と孫と、君に見守られて死ねる。そんな一生を君となら過ごして行ける。そう思ってる」
「…………ゆ、悠斗くん……」
「そのくらい。君が好きなんだ」
俺はそう言って彼女に微笑んだ。
そして、その後に続けた。
「でも、それ以上に好きなのが、朱里なんだ」
「…………………………」
詩織さんから、表情が消える。
「だから、ごめん。詩織さんを俺の『彼女』にすることは出来ない」
「…………そう。ですか」
詩織さんはそう言うと、俯いた。
ソファの上に、涙の雫が落ちる。
そんな彼女に、俺はこれから『最低』なことを言う。
「これから俺は、君に最低なことを言う」
「…………え?」
俺の言葉に、詩織さんが顔を上げる。
涙で濡れたその顔は、とても美しかった。
「ひっぱたいてもらっても構わない。軽蔑しても仕方ない。そんなことを君に言う。……聞いてくれるかな?」
「…………はい」
詩織さんはそう言って首を縦に振った。
「俺はね、君が俺以外の男の元に行くのは耐えられない」
「……っ!!」
驚く詩織さんに、俺は笑いかける。
「君の初めては全て俺が欲しい。デートも、キスも、処女も、全部全部全部全部俺が欲しい。初めてだけじゃ無いな。君の全てが欲しい。君の指先から髪のひと房すら誰か他の男なんかに触れさせたくない」
「ゆ、悠斗くん……」
明らかに戸惑っている彼女に俺は続ける。
「君を彼女にすることは出来ない。でも、詩織さんが望むなら、全てのことをしてあげる」
「…………っ!!」
「デートもしよう。手を繋いで歩こう。腕を組んでもいい。キスもしよう。舌を入れた濃厚なものもしよう。君が許してくれるなら身体を重ねよう。もちろん、学生のうちは避妊をしよう。でも、お互い大人になったら子供を作っても構わない。一緒に育てようか」
「…………そ、そんなことが」
「出来るよ。俺がそうしようと思えば、出来ないことなんかない」
俺はそう言って、詩織さんに笑いかける。
「でも。君を彼女には出来ないし、結婚することも出来ない」
「っ!!」
それでもいいかな?
俺の問いかけに、詩織さんは俯く。
涙は、流れてはいなかった。
嫌われただろうな。軽蔑されただろう。
ひっぱたかれて、部屋から出ていけと言われるだろう。
そして、詩織さんは俺に言った。
「私は以前。蒼井さんに言った言葉があります」
「何かな?」
「どうでもいい男の一番になるより、一番好きな人の二番目の方が幸せでは無いですか?と」
「…………そうか」
そう言うと、詩織さんふわりと笑った。
「どの道。あなたにどれだけこっぴどく振られようとも、私は死ぬまで……いえ、死んでもあなたを諦めるつもりはありません」
「……うん」
「私があなた以外の男の元に行く?有り得ません。この身体をあなた以外の男に指先ひとつだって触らせたくありません。電車だって気をつけているんですよ?」
「そうなんだね」
そして、少しだけ思案したあと詩織さんは言った。
「あなたの『心』以外の全てを私にくれる。そういう意味ですね?」
「……そういう事だね」
俺はその言葉に首を縦に振った。
俺のその態度に、詩織さんはあの時のような『妖艶な笑み』を浮かべた。
「悠斗くんの心以外の全て。私にください」
「うん。いいよ」
詩織さんは俺の返事と共に俺の身体を抱きしめた。
俺も彼女の身体を抱きしめる。
とても女性的で柔らかい身体。理性が解けていくのを感じる。
「キスしてください」
「うん。いいよ」
唇と唇を重ね合う。
俺と詩織さんの最初のキス。それでも、彼女は俺に舌を入れてきた。
俺もそれを迎え入れる。唾液と唾液が絡み合う。
そして、どちらともなく唇を離すと、それは糸を引いて、落ちた。
「……えっちは求めないでおきます」
「うん。それは最初は朱里と決めてるからね」
パーン!!
詩織さんの手のひらが俺の頬を叩いた。
「…………私の前でほかの女の名前を出さないでください」
「うん。ごめんね」
俺が謝ると、詩織さんは俺をもう一度抱きしめる。
「中間テスト。私が勝った時の欲しいものを変えてもいいですか?」
「……うん。いいよ」
俺は少し思案したあと、了承を先に出す。
「私が勝ったら、その日一日は、あなたの『心』を私にください」
「うん。いいよ」
俺が勝つから問題ない。
「悠斗くん、大好きです」
「俺も詩織さんが好きだよ」
.......朱里の次に
唇を重ね合い、舌を絡め合う。
そうしたキスをしながら、俺はそんな最低なことを考えていた。
「桐崎悠斗くん。黒瀬詩織はあなたをお慕いしています。私をあなたの彼女にしてくれませんか?」
俺の目を見てそう言う詩織さんは、とても綺麗だった。
この部屋に来た時点で覚悟はしていた。
彼女から、本気の告白をされるだろうと。
俺は大きく息を吐き出す。
そして、彼女に自分の気持ちを吐き出す。
「ありがとう。詩織さん。その気持ちはとても嬉しいし、君のような魅力的な女の子から慕われていることを、俺は誇りに思う」
「…………はい」
俺の言葉を、詩織さんは目を見て聞く。
そして、俺は言う。
「俺も、詩織さんが好きだよ」
と。
「………………え?」
惚けたような表情で、詩織さんが声を出した。
「俺はね、君が思う以上に詩織さんが好きなんだ」
それは、以前話した『朱里とは違うベクトルで』という意味じゃない。
「君と付き合って、手を繋いで歩いて、デートをして、抱きしめ合って、キスをして、それ以上のこともして、就職して、結婚して、仕事に行く前には行ってらっしゃいのチューとかもしたいね、子供を作って、娘だったら詩織さんに居てすごく綺麗な子になるだろうね、男だったら俺に似て背が高いといいな、そして育児方針で喧嘩なんかしたりして、でも仲直りして、家族みんなで旅行とかもしたいね、子供が大人になって、娘が夫になる人を連れてきたら相手を一発ぶん殴って、そのあと一緒に酒を飲もう、そして孫が出来て、仕事を定年までやり遂げて、老後は縁側でお茶でも飲みながらライトノベル片手に語り合いたい。だけどごめん。俺の方が先に寿命で死んでしまうだろうけど、悔いのない素晴らしい人生だった。そう言ってたくさんの子供と孫と、君に見守られて死ねる。そんな一生を君となら過ごして行ける。そう思ってる」
「…………ゆ、悠斗くん……」
「そのくらい。君が好きなんだ」
俺はそう言って彼女に微笑んだ。
そして、その後に続けた。
「でも、それ以上に好きなのが、朱里なんだ」
「…………………………」
詩織さんから、表情が消える。
「だから、ごめん。詩織さんを俺の『彼女』にすることは出来ない」
「…………そう。ですか」
詩織さんはそう言うと、俯いた。
ソファの上に、涙の雫が落ちる。
そんな彼女に、俺はこれから『最低』なことを言う。
「これから俺は、君に最低なことを言う」
「…………え?」
俺の言葉に、詩織さんが顔を上げる。
涙で濡れたその顔は、とても美しかった。
「ひっぱたいてもらっても構わない。軽蔑しても仕方ない。そんなことを君に言う。……聞いてくれるかな?」
「…………はい」
詩織さんはそう言って首を縦に振った。
「俺はね、君が俺以外の男の元に行くのは耐えられない」
「……っ!!」
驚く詩織さんに、俺は笑いかける。
「君の初めては全て俺が欲しい。デートも、キスも、処女も、全部全部全部全部俺が欲しい。初めてだけじゃ無いな。君の全てが欲しい。君の指先から髪のひと房すら誰か他の男なんかに触れさせたくない」
「ゆ、悠斗くん……」
明らかに戸惑っている彼女に俺は続ける。
「君を彼女にすることは出来ない。でも、詩織さんが望むなら、全てのことをしてあげる」
「…………っ!!」
「デートもしよう。手を繋いで歩こう。腕を組んでもいい。キスもしよう。舌を入れた濃厚なものもしよう。君が許してくれるなら身体を重ねよう。もちろん、学生のうちは避妊をしよう。でも、お互い大人になったら子供を作っても構わない。一緒に育てようか」
「…………そ、そんなことが」
「出来るよ。俺がそうしようと思えば、出来ないことなんかない」
俺はそう言って、詩織さんに笑いかける。
「でも。君を彼女には出来ないし、結婚することも出来ない」
「っ!!」
それでもいいかな?
俺の問いかけに、詩織さんは俯く。
涙は、流れてはいなかった。
嫌われただろうな。軽蔑されただろう。
ひっぱたかれて、部屋から出ていけと言われるだろう。
そして、詩織さんは俺に言った。
「私は以前。蒼井さんに言った言葉があります」
「何かな?」
「どうでもいい男の一番になるより、一番好きな人の二番目の方が幸せでは無いですか?と」
「…………そうか」
そう言うと、詩織さんふわりと笑った。
「どの道。あなたにどれだけこっぴどく振られようとも、私は死ぬまで……いえ、死んでもあなたを諦めるつもりはありません」
「……うん」
「私があなた以外の男の元に行く?有り得ません。この身体をあなた以外の男に指先ひとつだって触らせたくありません。電車だって気をつけているんですよ?」
「そうなんだね」
そして、少しだけ思案したあと詩織さんは言った。
「あなたの『心』以外の全てを私にくれる。そういう意味ですね?」
「……そういう事だね」
俺はその言葉に首を縦に振った。
俺のその態度に、詩織さんはあの時のような『妖艶な笑み』を浮かべた。
「悠斗くんの心以外の全て。私にください」
「うん。いいよ」
詩織さんは俺の返事と共に俺の身体を抱きしめた。
俺も彼女の身体を抱きしめる。
とても女性的で柔らかい身体。理性が解けていくのを感じる。
「キスしてください」
「うん。いいよ」
唇と唇を重ね合う。
俺と詩織さんの最初のキス。それでも、彼女は俺に舌を入れてきた。
俺もそれを迎え入れる。唾液と唾液が絡み合う。
そして、どちらともなく唇を離すと、それは糸を引いて、落ちた。
「……えっちは求めないでおきます」
「うん。それは最初は朱里と決めてるからね」
パーン!!
詩織さんの手のひらが俺の頬を叩いた。
「…………私の前でほかの女の名前を出さないでください」
「うん。ごめんね」
俺が謝ると、詩織さんは俺をもう一度抱きしめる。
「中間テスト。私が勝った時の欲しいものを変えてもいいですか?」
「……うん。いいよ」
俺は少し思案したあと、了承を先に出す。
「私が勝ったら、その日一日は、あなたの『心』を私にください」
「うん。いいよ」
俺が勝つから問題ない。
「悠斗くん、大好きです」
「俺も詩織さんが好きだよ」
.......朱里の次に
唇を重ね合い、舌を絡め合う。
そうしたキスをしながら、俺はそんな最低なことを考えていた。
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