学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第七話 ⑧ ~悠斗くんとの初めてのデート~ 聖女様視点

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 第七話  ⑧



「ありがとうございましたー!!」

 とても嬉しそうな美里さんの感謝の言葉が私の耳に入りました。

 初めてのお客様。一週間近く売り上げがないなかでの私たちです。喜びもひとしおだったとおもいます。

 私は悠斗くんを見上げると、何やら考え事をしているように見えました。

 ……あの女のことですね。

「悠斗くん……今、他の女性のことを考えていましたね?」
「……え?」

 確定です。私は半眼で彼を見つめました。

「先程の美里さんへの言葉といい、今の態度といい、悠斗くん。少し気が緩んでいますね?」
「あ、あはは……いや、そんなことは」
「……えい」
「し、詩織さん!?」

 私は彼の腕を素早く抱え込みました。
 あの女より大きい私のを、わざと押し当てるようにしました。

 ふふふ。さっきはしてやられましたからね。
 今度はこちらから仕掛けてあげます!!

「このままで歩きましょう」
「……ま、マジですか?」

 ふふふ。私も少し恥ずかしいですが、悠斗くんも同じのはずです!!

「ふふふ。先程は悠斗くんに色々と恥ずかしい思いをさせれましたからね。これはお返しです」

 私はニンマリと笑いながら彼にそう言いました。

 そんな私を見て、悠斗くんは少しだけ頬を赤くしていました。

 先程のイートインでの一件の後から、少しずつ悠斗くんが私に対して、感情を見せてくれるようになりました。

 この後は私の家に行く予定です。



 大切なお話をする心の準備をしながら、私は悠斗くんと一緒に歩きました。







「ここに来るのは二回目なんだけど、最初来た時も思ったけどさ、すごいマンションだよね」

 私のマンションを見上げながら、悠斗くんがそう言いました。

「そうですね。毎月使い切れないくらいの金額が振り込まれてますが、結構な金額が家賃として引き落とされてますので、高級マンションと言っても良いと思います」

 バスと電車を使って私の家の最寄り駅まで移動し、そこからは十分程で到着しました。

 一回目の時とは違う、彼との関係性。私は少しだけ緊張しています。


「ごめん。ちょっと緊張してる」
「ふふふ。私も男性を家に迎え入れるのは悠斗くんが初めてです。と言うより、誰かを迎えること自体、初めてです」

 悠斗くんも緊張していたのですね。
 それは良かったです。

 そんな私に、悠斗くんが聞いてきました。

「へぇ、斉藤さんは?仲良さそうに見えるけど」
「彩さんとはいつも喫茶店でお話をしていますので。家に迎えたのは無いですね。ですが、機会があればきっと迎えると思います」

 彩さんでしたら喜んでお家に入れようと思いますね。

 いつまでもここで話しているのは変ですので、私は悠斗くんを自宅へと案内します。

「それではご案内しますね。マンションに入るには、まず認証が必要ですので。着いてきてください」
「了解だ」

 悠斗くんはそう言うと、私の後を着いてきます。

 まずはマンションに入るためのセキュリティがありますからね。不審者は敷地内に入ることすら出来ません。

 そして、エレベーターを上がり、その先にある私の自宅へと到着しました。

 カチャン。

 カード式の電子ロックを解除して、私は自宅へと悠斗くんを招き入れます。

「……どうぞ」
「……お邪魔します」

 一人で住むには広すぎる3LDKの部屋。
 掃除をするのも一苦労です。

 そして、私は悠斗くんを居間へと案内しました。

 先日。掃除をしたばかりなので部屋は綺麗です。
 まぁ、もともとものもそんなにものを置かないタイプなので、そこまで汚れる訳では無いですが。

 部屋の真ん中にはガラスのテーブルと大きめのソファがあります。
 ここに引っ越してきた時に買ったものです。
 そこそこ良いお値段がしたのを覚えています。

「今、飲み物を出しますね。麦茶で良いですか?」
「うん。ありがとう」
「ふふふ。この位は普通ですよ。ソファに座って待ってて貰えますか?」

 私はそう言うと、食器棚からグラスを取りだし、冷凍庫から氷を取り出してグラスに入れます。
 そして、その中に冷蔵庫の中に入れてあった2リットルの麦茶のペットボトルの中身を注ぎ入れます。

 居間の真ん中に行くと、悠斗くんがソファに座りながら、

「寝れそう」

 なんて言ってました。
 たしかに、ふかふかで気持ち良いですよね。

「ふふふ。寝てしまったらイタズラしてしまいますよ?」

 私は軽く冗談を言って、麦茶をガラスのテーブルに起きます。

「いただきます」

 悠斗くんが美味しそうに麦茶を飲むのを見てから、私は書斎へと向かいます。

「今、オススメのミステリー小説を持ってきます。ゆっくりと待っててください」

 私はそう言うと、悠斗くんに背中を向けました。

 そして、書斎へと移動した私は、目的の本を手にします。

 三冊の本を手に取った私はひとつ息を吐きだしました。

 今から、私は彼に告白をする。

 軽い気持ちではありません。本気の告白です。

 勝算は低いでしょう。ほぼ確実に振られることがわかっています。ですが、これを言わなければ始まりません。

 打算や策略。罠にはめる。そんなことをせず、正攻法で行くと決めました。

 なので、私は正面から彼に告白します。

 そして、「今は振られても、私はあなたを一生、死ぬまで……いや、死んでも諦めません」と言うところまでが今日の私の計画です。

 私は心を鎮めて、書斎を後にしました。


 そして、居間に待つ、悠斗くんに声をかけました。


「お待たせしました」

 私はそう言うと、悠斗くんに三冊の小説を見せました。

「悠斗くんのお母様の小説に勝るとも劣らない。素晴らしい小説を三冊お持ちしました」
「ありがとう、詩織さん。楽しみに読ませてもらうよ」

 私は、悠斗くんの座るソファの隣に座りました。

「……隣、失礼します」
「……うん」

 悠斗くんと触れ合う肩と肩。今日一番の距離の近さです。先ほどのツーショットよりも近いです。

「なんだか、照れてしまいますね」
「あはは。俺もドキドキしてる」

 え?悠斗くんもドキドキしてくれてるのですか……

 ……そして、私は告白の前段階として、以前のことを謝罪しました。

「…………以前は、大変申し訳ありませんでした」

 悠斗くんは私の謝罪を笑って許してくれました。

「気にしなくていい。アレがあったから、今があるって思えるからさ」
「…………そう、ですか。ありがとうございます」

 私は彼の優しさが身に染みました。

「もう。悠斗くんに対して、策略を巡らせたり、罠に填めたりすることはしません。正攻法で行くと決めました」
「……うん」

 そして、私は息を吸って、悠斗くんの目を見ます。

 さぁ、言いましょう。私の本気の言葉を。
 たとえ振られることになったとしても、私と言う存在を彼の中に刻み込むんです!!










「桐崎悠斗くん。黒瀬詩織はあなたをお慕いしています。私をあなたの彼女にしてくれませんか?」
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