学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第七話 ⑧ ~詩織さんとの初めてのデート~ 悠斗視点

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 第七話  ⑧



「ありがとうございましたー!!」

 俺と詩織さんの分のメガネの代金の支払いを済ませ、美里さんのお店を後にする。

 とても嬉しそうな彼女に、感謝の言葉と共に見送られた。

 SNSの効果があるといいな。

 俺はそう思っていた。

 まぁ『色々と問題』はありそうだけど、あとで朱里には話をしておこう。

 なんてこと考えてると、

「悠斗くん……今、他の女性のことを考えていましたね?」
「……え?」

 ジトーっとした目で詩織さんが俺を見上げていた。

「先程の美里さんへの言葉といい、今の態度といい、悠斗くん。少し気が緩んでいますね?」
「あ、あはは……いや、そんなことは」
「……えい」
「し、詩織さん!?」

 なんて言う俺の腕を、詩織さんが抱き込んだ。
 彼女の柔らかいアレが俺の腕にダイレクトで当たる。

「このままで歩きましょう」
「……ま、マジですか?」

 俺と詩織さんはそんなやり取りをしながら、腕を組んで歩く。
 そして、詩織さんは少しだけ頬を赤くしながら俺に言った。

「ふふふ。先程は悠斗くんに色々と恥ずかしい思いをさせれましたからね。これはお返しです」



 ドヤーとした表情の詩織さん。

 なんだろう。イートインでの一件のあとから、彼女が可愛く見えて仕方ない。
 こんなんで、彼女の家に行って大丈夫なのかな……

 俺は少しだけ自分の理性に不安を感じながら、彼女の自宅へと向かって行った。









「ここに来るのは二回目なんだけど、最初来た時も思ったけどさ、すごいマンションだよね」
「そうですね。毎月使い切れないくらいの金額が振り込まれてますが、結構な金額が家賃として引き落とされてますので、高級マンションと言っても良いと思います」

 バスと電車を使って詩織さんの家の最寄り駅まで移動し、そこからは歩いて十分程で彼女の住んでいるマンションに到着した。

 ここに来たのは二回目。一回目は、あの時だ。

 あまりいい思い出では無いけど、あの時とは全く違う状況ではある。

「ごめん。ちょっと緊張してる」
「ふふふ。私も男性を家に迎え入れるのは悠斗くんが初めてです。と言うより、誰かを迎えること自体、初めてです」

 そう言って詩織さんは笑った。

「へぇ、斉藤さんは?仲良さそうに見えるけど」
「彩さんとはいつも喫茶店でお話をしていますので。家に迎えたのは無いですね。ですが、機会があればきっと迎えると思います」

 どんな話をしてるのか?それは聞かない方が良さそうだな。

「それではご案内しますね。マンションに入るには、まず認証が必要ですので。着いてきてください」
「了解だ」

 俺はそう言って、詩織さんの後を着いて行った。

 これだけセキュリティがしっかりしてるなら、彼女のような美少女の一人暮らしでも安心だな。

 なんてことを考えていた。

 そして、エレベーターを上がった先にある彼女の自宅へと到着する。

 カチャン。

 と、詩織さんが扉の鍵を開ける。

「……どうぞ」
「……お邪魔します」

 少しだけひんやりと感じる部屋の中へと入る。

 靴を脱いで中を進む。
 3LDKと聞いていた部屋は、どう考えても一人で暮らすには広すぎると感じた。

 そして、居間へと案内される。

 彼女らしい掃除の行き届いた綺麗な部屋だ。

 ガラスのテーブルと大きめのソファが部屋の真ん中にあるのが見えた。

「今、飲み物を出しますね。麦茶で良いですか?」
「うん。ありがとう」
「ふふふ。この位は普通ですよ。ソファに座って待ってて貰えますか?」

 俺がソファに座ると、すごく座り心地が良くて、ぶっちゃけ寝れそうだった。

「寝れそう」
「ふふふ。寝てしまったらイタズラしてしまいますよ?」

 なんて言いながら、詩織さんは麦茶を出してくれる。

「いただきます」

 俺は良く冷えた麦茶を飲む。
 少しだけ緊張が解れてきた。

「今、オススメのミステリー小説を持ってきます。ゆっくりと待っててください」

 そう言って彼女は居間から去って行く。

「…………いまさらだけど、かなりすごいことしてないか……俺」

 学園の聖女様。なんて言われる美少女の家にお呼ばれして、麦茶まで出してもらってる。

 一年前では考えられないような関係性の変化だと思った。

「……色々と覚悟は決めておかないとな」

 俺は麦茶を一口飲んで呟く。

 多分。そういう事になると思ってる。

 その時なんと答えるか。それはもう決めている事だ。

 そして、三分ほどのんびりしていると、

「お待たせしました」

 詩織さんはそう言うと、三冊の小説を持ってやって来た。

「悠斗くんのお母様の小説に勝るとも劣らない。素晴らしい小説を三冊お持ちしました」
「ありがとう、詩織さん。楽しみに読ませてもらうよ」

 そういう俺の隣に、詩織さんが座った。

「……隣、失礼します」
「……うん」

 触れ合う肩と肩。今日一番の距離感だった。

「なんだか、照れてしまいますね」
「あはは。俺もドキドキしてる」

 俺のその言葉に、詩織さんが驚いた顔をしていた。

 そして、彼女は少しだけ身体を強ばらせながら話し始めた。

「…………以前は、大変申し訳ありませんでした」

 彼女が何を謝っているのかは、わかっている。

「気にしなくていい。アレがあったから、今があるって思えるからさ」
「…………そう、ですか。ありがとうございます」

 詩織さんはそう言うと、視線を下に落とした。

「もう。悠斗くんに対して、策略を巡らせたり、罠に填めたりすることはしません。正攻法で行くと決めました」
「……うん」

 そして、詩織さんは息を吸って、俺の目を見た。








「桐崎悠斗くん。黒瀬詩織はあなたをお慕いしています。私をあなたの彼女にしてくれませんか?」
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