学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第七話 ⑥ ~悠斗くんとの初めてのデート~ 聖女様視点

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 第七話  ⑥




 食事を終えた私たちは佐々木さんの妹さんのお店へと足を運びました。

 二階の一角にあると言われたメガネ屋さんは、新装開店をしたばかりなのでしょう。すごく綺麗でした。

 ですが、やはり経営と言うのは難しいのですね。お客さんは入っていないようでした。

 店の中を軽く見てみると、カウンターには女性が一人座って居ました。

 なるほど、彼女が佐々木さんの妹さんですね。

 言われてみれば、先程の男性の面影があるように見えました。

 そして、私たちがお店に入ると、その女性が立ち上がり、出迎えてくれました。

「いらっしゃいませー」

 愛想の良い笑顔と元気な挨拶。とても魅力的な女性でした。この人目当てで来店するような男性もいそうな感じがしますね。

「佐々木哲人さんの紹介で来ました。新装開店おめでとうございます」

 悠斗くんはそう言うと、彼女に頭を下げました。私もそれに倣って頭を下げます。

 店長さんはそれに少し驚いたあと、

「兄から話は聞いてますよ。ものすごいイケメンと美少女のカップルが来るからね。と」

 笑いながらそう言いました。

 ふふふ。カップルに見えたのは嬉しいです。

 ですが、悠斗くんのことです。
 きっとすぐに訂正するでしょうね。

「あはは。カップルじゃないんですよ」

 やはり、悠斗くんは笑いながら訂正しました。
 残念ですが仕方ありません。

「そうなんですか。それは失礼しました。そう言えば兄からは『友人関係』と言われていましたね」

 そう。私は彼にとって『大切な友達』です。
 まぁ、『今は』ですが。

「いや、『友人』でもないんです」
「…………え?」
「ゆ、悠斗くん…………?」

『友人』という言葉すら否定した悠斗くんに、私は驚きました。
 ……え、わ、私は友達ですらないんですか!!??

 ですが、この後に言った悠斗くんの言葉は、私の予想を遥かに超えるひと言でした。

「詩織さんは、俺にとって『とても大切な女性』です」
「……ゆ、悠斗……くん」

『とても大切な女性』

 私は、悠斗くんから『女性』として見てもらえてるのですね。
 それも、とても大切な。
 私は嬉しくて涙が出そうになりました。

「あはは……君たちの関係性にはあまり口を出さない方が良さそうだ」

 店長さんは何かを察したように、言葉を濁しました。
 確かにそうですね。私たちの関係は、普通の人には理解出来ないものかもしれませんから。

 そして、悠斗くんは本題に入りました。

「哲人さんから伺っているかも知れませんが、オシャレを意識したメガネをひとつ欲しいと思ってまして。見繕って貰いたいと思ってます。それと、詩織さんにもひとつプレゼントをしようと思っています。彼女は視力が悪い訳では無いので、伊達眼鏡になるかと思います」

 悠斗くんの言葉に、店長さんは嬉しそうに笑いました。
 笑顔が素敵な女性ですね。

「実は今週の月曜日にオープンしたんですが、お客さんが全然来なくて、変なおじさんとか、冷やかしとかばかりで、……君たちが初めての購入希望のお客様なんです!!」

 いっぱいサービスしちゃうからね!!

 やはり、経営とは大変なんですね。
 それに、冷やかしや変なおじさんと聞いて、私も少しだけ同情してしまいました。
 少しでも、繁盛して欲しい。そう思いました。

「ありがとうございます。あとで買った眼鏡を着けた自撮り写真を店名を載せてSNSにアップしますよ。少しばかりでも広告効果になればと思います」

 流石は悠斗くん。彼女の経営の助けになるようなことを、スっと思いついて実行出来る。
 本当に彼のそういう所はすごいと思います。

 そして、悠斗くんは視力検査を始めました。

 なんか変なメガネを着けて、機械の中を覗き込んでるようです。

 ふふふ。なかなか面白いです。

 その様子を見てても良かったのですが、私は彼から離れてメガネのフレームを見て回ります。

 視力が良い私には無縁のものですが、こうして見ると色々な種類があって面白いですね。

 黒だけかと思ってましたが、色だけでもかなりの数がありますし、フレームの形も千差万別です。なんだか見てるだけでも楽しくなってきました。

 ちょっと着けてみましょうか?

 私はピンク色のメガネを着けてみました。

 度が入ってない伊達メガネです。近くにある小さな鏡で見てみると、いつもと違う自分が居ました。

 ふふふ。あとで悠斗くんにもこの姿を見せても良いかも知れません。
 普段とは違う私の姿に、驚いてくれるかも知れません。

 なんてことを考えていたら、悠斗くんと店長さんは会話が弾んでいるようでした。

 私はそっと歩み寄って、聞き耳を立ててみました。

「美里さん。こんなことを言うのはアレですけど、敬語よりそっちの方が話しやすくて良いです」

 美里さんの魅力が出てて良いと思います。

 ま、またこの人は!!

「じゃあこれからもこういう接客にしようかな!!」

 悠斗くんの言葉を聞いた店長さんは嬉しそうに笑っていました。

 はぁ……

 私は悠斗くんの袖を引っ張りました。



 くいくい……


 悠斗くんが訝しげな表情で振り返りました。

 全く。さっきは私のことを『とても大切な女性』と言ってくれたのに。舌の根も乾かぬうちにそんなことをしてるなんて!!

 私は半眼で彼を睨みながら言います。

「…………また、堕とそうとしてますね?」
「え!?」

 全く気が付いていないようですね……

 私は大きなため息を吐いて言いました。

「…………はぁ。悠斗くんのソレはもう病気みたいなものだと思うようにします」



 私のその言葉に、悠斗くんは気まずそうな顔をしてました。

 ……反省してください……!!
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