学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第七話 ③ ~悠斗くんとの初めてのデート~ 聖女様視点

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 第七話  ③




「一応。今日の予定を話しておこうかと思うんだ」

 待ち合わせ場所で少しだけ時間を過ごしていると、バスがやって来ました。
 そのバスの中で、悠斗くんが私にそう言いました。

「はい。私は悠斗くんと一緒に居るだけで楽しめると思いますので、どういうプランでも平気ですよ」

 私は正直な気持ちを悠斗くんに言います。

 もうこのバスに乗ってるだけの時間ですら、私にとっては幸せなのですから。

「.....あはは。そう言って貰えると嬉しいよ」

 悠斗くんは少しだけ照れくさそうにそう言いました。
 ふふふ。可愛いです。

「まずは詩織さんがオススメしていた本屋さんに行こうと思う。そこで話をしながら本を見て回ろうか」
「はい。賛成です」

「そしたら多分いい時間だと思うから、イートインでご飯を食べようか。そこのお金は俺が出すよ」

 確かにデートでは食事代は男性が出す。と聞いたことがあります。ですが、私が食べたいお昼ご飯は少しだけ『良い値段』がしてしまうのですが……

「……良いのですか?」

 私は少しだけ申し訳なく思いながら尋ねました。

「詩織さんには色々とお世話になってるからね。そのくらいの男気は見せさせて欲しいな」

 そ、そこまで言われては断れません。
 私は悠斗くんのお言葉に甘えることにしました。

「はい。ではご馳走になります」
「ありがとう。それで、ご飯が終わったらなんだけど、俺の用事に付き合って貰ってもいいかな?」

 用事、ですか。そう言えば先程スーツ姿の男性と話していましたね。
 もしかしたらそれが関係しているかも知れません。
 そう考えていると、悠斗くんは私にパンフレットを見せてくれました。

『ファッションを意識した眼鏡をご希望のお客様へ。アイレンズ・ミサト』

 パンフレットにはそう書いてありました。

「さっき話していた人。佐々木さんって人なんだけど、以前『モデルをやらないか?』という話をしてきた人でね」

 なるほど。確かに悠斗くんは背も高いですし、とてもかっこいいです。
 誘われるのも納得です。

「そうだったのですか」

「まぁ、断ったんだけどさ。ちょうど今さ、オシャレな眼鏡を一つくらい欲しいなって思ってたんだ」

「そのお店が、佐々木さんの妹さんのお店なんですね?」

 私の問いに、悠斗くんは首を縦に振りました。

「そうなんだよね。少し興味があるから行ってみたいなと思ってね。それにさ、もし良かったら」

 今日の記念に、詩織さんにひとつ。プレゼントさせて貰えるかな?

 ぷ、プレゼントですか!!??
 ゆ、悠斗くんが私に、今日の記念にくれると言うのですか!!??

「……ありがとうございます。とても、嬉しいです」

 私は感極まってしまい、声が震えてしまいました。

「あはは。詩織さんは目が良いから、伊達眼鏡になるとは思うけどね。俺は買うとなると視力検査とかそう言うので少し時間がかかるだろうし、そのお詫びみたいなものだと思ってよ」

 少しだけ申し訳なさそうに言う悠斗くんですが、その程度の待ち時間なんて気にもなりません。

「いえ、悠斗くんからプレゼントして頂けるのでしたら、その程度の待ち時間など些事です」

 私は悠斗くんにそう伝えました。

 そんな会話をしていると、目的地のショッピングモールが近づいて来ました。

 すると、誰かが停車ボタンを押していたのでしょうか。バスが減速を始めましたので、そのまま出入口の方へと移動しました。

「少し揺れるから気をつけてね」
「はい。ありがとうございます」

 オシャレを意識したので、少しだけ歩きづらいミュールを履いてきてしまいました。
 私は転ばないように気を付けます。

 そして、目的地で停車したバスからお金を払って降りようとします。

 すると、先に降りていた悠斗くんが私に手を差し出してくれています。

「……そこまでして頂けるのですか?」

 彼女でもない私に、そこまで気を使って貰えるんですか……

「あはは。素敵なミュールを履いてるけど、少しだけ歩きづらそうに見えたからね。転ぶといけないから、この位はさせてよ」

 ほ、本当にこの人は……っ!!

「では、お言葉に甘えます。ありがとうございます。悠斗くん」

 私は悠斗くんの手を取って、バスから降りました。
 そして、私は思いました。
 このまま手を離すのは……もったいないな

「その.....このまま、手を繋いだままショッピングモールを回ることは可能ですか?」

 私は悠斗くんに『おねだり』をしました。

「うーん.....まぁ、いいよ。誰も居ないと思うからね」

 少しだけ思案した悠斗くんは了承してくれました!!やりました!!

「あ、ありがとうございます!!」

 私は悠斗くんの手をしっかりと握りしめました。
 少しだけ骨ばった男の子の手。
 心が踊りました。

「あはは。結構広いショッピングモールだからね、迷子にならないようにしよう」
「……そこまで子供じゃありませんよ」

 からかうような悠斗くんの言葉に、私は頬をふくらませました。


 最近の悠斗くんはこうして私に対して『イタズラ』をしてくることが増えてきました。

 気を許してくれてる。ということなのだと思います。

 私と悠斗くんは確実に仲良くなって来てる。

私は少しだけ嬉しさを感じながら、彼と手を繋いでショッピングモールへと歩いて行きました。
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