193 / 292
第2章
第七話 ① ~詩織さんとの初めてのデート~ 悠斗視点
しおりを挟む
第七話 ①
日曜日の朝。俺は洗面台の前で身だしなみを整えていた。
今日の朱里はバスケ部の試合がある日だった。
怪我が無ければレギュラーの彼女はスタメンで活躍していたが、まだ無理は出来ないので、ベンチで待機だ。
『試合に出ないのに応援はいいよ』
と、言われていたので今日の俺に予定は無かった。
そういうこともあり、詩織さんを買い物に誘った訳だ。
一応。朱里には今日詩織さんと買い物に出掛けることは言ってある。
『別にいいよ。予算会議を見たらわかるよ。詩織ちゃんが居なかったら無理だったと思うし』
『それに、昔よりは私。詩織ちゃんのこと嫌いじゃないんだ』
さらに昔は敬愛していたくらいだけど。
と、笑っていたが。
『今では良いライバルだと思ってるくらいだしね』
そう言って、俺を送り出してくれた。
そんな彼女を裏切る訳には行かない。
とは言っても、全く楽しみじゃない。という訳でも無い。
趣味の合う友達と買い物に出かける。普通に楽しみなイベントだ。まぁ……その相手がとんでもない美少女で、尚且つ俺に恋愛的な好意を持ってるってのがアレなんだが……
「おはようおにぃ。……あれ、どうしたの?、今日は朱里ちゃんは試合だし、予定無かったよね?」
と、起きていた雫から後ろから声を掛けてくる。
「あぁ、そう言えば話してなかったね。今日は詩織さんと買い物に出掛けるんだ」
朱里も了承してる。
俺がそう言うと、雫は少しだけ目を細める。
「ふーん。で、それがその格好と」
「うん」
俺は鏡の前に映った自分の姿を見る。
オシャレを意識した服装。自分をカッコよく見せられるデート用の髪型。そこに『眼鏡』を着けている。
学園の聖女様。なんて言われているくらいのとんでもない美少女の隣を歩くんだ。それなりの格好をしないと恥ずかしい。
ただ、朱里とのデートとは違うんだ。
なので、今日はコンタクトレンズでは無く、眼鏡にしてある。
「はぁ……朱里ちゃんが良いって言ってるなら別にいいよ。側室にも時間を作ってあげる余裕が本妻には必要だからね」
「あはは……」
ため息混じりにそんなことを言う雫に、俺は苦笑いを浮かべる。
そして、俺はいつものデートで用意している物が入ったカバンを手にする。
お金は買い物をする予定なので、いつもより多めに入れてある。
最近はソシャゲを引退(無課金ログイン勢になった)したので、それなりに余裕がある。ただ、夏休みのことも考えると、あまり無駄遣いはしたくない。
まぁ、今日は初めて二人で出掛けるんだ。せっかくの機会だ。お金のこととか気にしないで楽しもう。
時計を見ると、八時半を指していた。
集合は十時に駅前。
今から出れば九時半には着ける予想だ。
彼女を待たせると、悪い虫が寄ってくるのが容易に想像出来る。
朝から不愉快な気分なんかさせたくないからな。早めに行こう。
俺が待つ分にはなんの問題も無いわけだし。
俺はそう結論付けると、玄関へと向かう。
その後ろを雫が着いてきてくれる。
見送ってくれるんだな。
俺は少しだけ嬉しくなった。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「うん。『節度を持って』楽しんで来てね」
「それはわかってる。朱里を裏切ることはしない。約束するよ」
真剣な表情で俺は言葉を返した。
「はぁ……行ってらっしゃい、おにぃ」
「うん。行ってきます」
俺はそう言うと、玄関の扉を開ける。
外は快晴。雨が降らなくて良かった。
俺はそう思いながら、愛車のポチに跨り、駅へと向かった。
日曜日の朝。俺は洗面台の前で身だしなみを整えていた。
今日の朱里はバスケ部の試合がある日だった。
怪我が無ければレギュラーの彼女はスタメンで活躍していたが、まだ無理は出来ないので、ベンチで待機だ。
『試合に出ないのに応援はいいよ』
と、言われていたので今日の俺に予定は無かった。
そういうこともあり、詩織さんを買い物に誘った訳だ。
一応。朱里には今日詩織さんと買い物に出掛けることは言ってある。
『別にいいよ。予算会議を見たらわかるよ。詩織ちゃんが居なかったら無理だったと思うし』
『それに、昔よりは私。詩織ちゃんのこと嫌いじゃないんだ』
さらに昔は敬愛していたくらいだけど。
と、笑っていたが。
『今では良いライバルだと思ってるくらいだしね』
そう言って、俺を送り出してくれた。
そんな彼女を裏切る訳には行かない。
とは言っても、全く楽しみじゃない。という訳でも無い。
趣味の合う友達と買い物に出かける。普通に楽しみなイベントだ。まぁ……その相手がとんでもない美少女で、尚且つ俺に恋愛的な好意を持ってるってのがアレなんだが……
「おはようおにぃ。……あれ、どうしたの?、今日は朱里ちゃんは試合だし、予定無かったよね?」
と、起きていた雫から後ろから声を掛けてくる。
「あぁ、そう言えば話してなかったね。今日は詩織さんと買い物に出掛けるんだ」
朱里も了承してる。
俺がそう言うと、雫は少しだけ目を細める。
「ふーん。で、それがその格好と」
「うん」
俺は鏡の前に映った自分の姿を見る。
オシャレを意識した服装。自分をカッコよく見せられるデート用の髪型。そこに『眼鏡』を着けている。
学園の聖女様。なんて言われているくらいのとんでもない美少女の隣を歩くんだ。それなりの格好をしないと恥ずかしい。
ただ、朱里とのデートとは違うんだ。
なので、今日はコンタクトレンズでは無く、眼鏡にしてある。
「はぁ……朱里ちゃんが良いって言ってるなら別にいいよ。側室にも時間を作ってあげる余裕が本妻には必要だからね」
「あはは……」
ため息混じりにそんなことを言う雫に、俺は苦笑いを浮かべる。
そして、俺はいつものデートで用意している物が入ったカバンを手にする。
お金は買い物をする予定なので、いつもより多めに入れてある。
最近はソシャゲを引退(無課金ログイン勢になった)したので、それなりに余裕がある。ただ、夏休みのことも考えると、あまり無駄遣いはしたくない。
まぁ、今日は初めて二人で出掛けるんだ。せっかくの機会だ。お金のこととか気にしないで楽しもう。
時計を見ると、八時半を指していた。
集合は十時に駅前。
今から出れば九時半には着ける予想だ。
彼女を待たせると、悪い虫が寄ってくるのが容易に想像出来る。
朝から不愉快な気分なんかさせたくないからな。早めに行こう。
俺が待つ分にはなんの問題も無いわけだし。
俺はそう結論付けると、玄関へと向かう。
その後ろを雫が着いてきてくれる。
見送ってくれるんだな。
俺は少しだけ嬉しくなった。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「うん。『節度を持って』楽しんで来てね」
「それはわかってる。朱里を裏切ることはしない。約束するよ」
真剣な表情で俺は言葉を返した。
「はぁ……行ってらっしゃい、おにぃ」
「うん。行ってきます」
俺はそう言うと、玄関の扉を開ける。
外は快晴。雨が降らなくて良かった。
俺はそう思いながら、愛車のポチに跨り、駅へと向かった。
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説


腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~
味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」
春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。
そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか)
今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。
「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」
そう言う俺に、
「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」
と笑顔で言い返して来た。
「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」
「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」
パタン
俺は玄関の扉を閉めた。
すると直ぐに
バンバンバン!!!!
と扉を叩く音
『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』
そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。
はぁ……勘弁してくれよ……
近所の人に誤解されるだろ……
俺はため息をつきながら玄関を開ける。
そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。
腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。




ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる