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第2章
第六話 ⑦ ~休み時間の度に誰かが来る。それは予想外でした~
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第六話 ⑦
永瀬先輩との一件が終わり、少しした頃に、朝練を終えた部活組が教室へと戻ってくる。
「悠斗!!いつものくれ!!」
「あいよー」
「いーんちょーわたしもー」
「悠斗、私も欲しいかな!!」
「朱里と佐藤さんの分もあるから大丈夫だよ」
と、恒例になってきた飲み物を振舞ったりしていた。
「詩織さんも飲む?」
「はい。いただきます」
隣の詩織さんにも振舞って、残ったスポドリは俺が飲み干す。
そんないつもの光景。
「なぁ、桐崎。ちょっと良いか?」
と、石崎が俺に話しかけてくる。
「どうした?なんかあったか」
そう聞く俺に、石崎は答える。
「いや、そろそろ体育祭に向けて大縄跳びの練習をしようと思うんだけどよ。場所とか取れそうか?」
「まだ誰も練習に入ってないから場所と縄の用意はすぐ出来る。だけど縄を回す奴が居ないんだよなぁ……」
俺も健も今は少し忙しい時期だ。
少し思案した俺は、昔ちょっとだけ聞いたことがある大縄跳びの練習方法を思い出す。
「なぁ、石崎。明日で良ければ場所の確保も出来るし、縄を回さない練習方法に心当たりがあるから、大縄跳びのメンバーに放課後少し残ってくれって伝えておいてくれ」
「おっけー。縄を回さない大縄跳びの練習って面白いな!!ちょっと期待して待ってるわ」
石崎はそう言って自分の席へと戻って行った。
「うーし、お前ら席に着けー」
それと同時くらいに山野先生が教室へと入ってくる。
「よーし。今日の連絡事項の説明だ。まずは……」
と、山野先生のSHRが始まった。
最近は少し考えることが増えてきたな。と感じる。
学級委員に生徒会に体育祭の実行委員。
ちょっと仕事を抱えすぎてるかな……
夏休みのことを考えると、バイトは減らしたくない。
詩織さんとの戦いのことを考えると、勉強の時間を減らしたくない。
朱里とはキチンとデートしたい。
……じ、時間が足りないなぁ
「……い、……崎!!」
「悠斗くん。呼ばれてますよ?」
「……え?」
隣からの詩織さんの声で前を向く。
「おい、桐崎!!号令だ!!」
ボーッとしてんじゃないぞ!!
と怒られる。
やべ!!忘れてた!!
「すみません!!」
俺は山野先生にドヤされて慌てて号令をかけたのだった。
だが、俺は知らなかった。
本当に大変なのはこれからだと言う事に。
一時間目の授業が終わった休み時間。
「生徒会の副会長の桐崎くんはいらっしゃいますか?」
と文芸部の部長が教室へとやって来た。
「はい。居ますよ。なんですか、紫水(しすい)先輩」
俺は返事をしながら扉の方へと歩いて行く。
「……本当に顔と名前が一致してるんだ……」
「……え?なんですか?」
「……ううん!!何でもないですよ!!ちょっと相談があるんですけど」
と、紫水先輩は話し始める。
「私たちの小説を新聞に載せるって話じゃないですか。代表して私が載せようと思うんです」
「はい。良いと思います。紫水先輩の文章はとてもクオリティが高いですからね」
「……え?読んでくれてるんですか?」
少しだけ驚いた表情の紫水先輩に、俺は言う。
「はい。最初は新聞に載せるにあたっての義務みたいな感じで読み始めたんですが、先輩の描く女性特有の繊細な心理描写に心奪われてしまいましたね」
「…………そ、そうなんですね」
それなりの数の小説を読んできたと思うけど、先輩の書く文章は、プロにも決して見劣りしない。
「……その、相談したい内容なんですけど、どんな小説を書いたら良いかなと思いまして」
「なるほど。個人的には先輩の書く新作の恋愛小説を読みたいと思っています」
続きが気になるようなラストを意識すると、良いかも知れません。
と、補足した。
「う、うん!!それじゃあ新作の恋愛小説を書いてみますね。楽しみにしててください!!」
「はい。期待して待ってます」
「………………」
「………………」
二時間目の休み時間。
「桐崎副会長いる?」
「はい。居ますよ。なんですか、仙道(せんどう)先輩?」
二時間目の休み時間にやって来たのは手芸部の部長の仙道先輩だった。
「演劇部の永瀬から聞いたよ。衣装の依頼を手芸部にしたらどうだって言われたって」
「はい。仙道先輩は高校生デザインコンテストで準グランプリに輝くほどの実力者です。能力的な問題は無い。と判断しました」
「……へぇ、そんなことまで知ってるんだ?」
「先輩は自分の知名度を知らないようですね?」
「あはは!!お前に言われたくないな!!」
と、笑う仙道先輩。
「演劇部の衣装作りは手芸部が責任を持ってやる。ただ、『有名な』私の時間を使うんだ。出来高は弾んでくれるんだろ?」
「そうですね。前向きに検討します」
「よっしゃ!!じゃあな!!桐崎副会長!!」
そう言って仙道先輩は俺の肩をバンバン叩いて去って行った。
「…………」
「…………」
三時間の休み時間。
「き、桐崎副会長は居ますか……?」
「はい。何でしょうか伊澄(いすみ)先輩」
やって来たのは料理研究会の会長の伊澄先輩だった。
何故料理部では無く、研究会なのかは分からない。
「あの……出来高の件ですけど……」
「はい。伺います」
小柄な伊澄先輩は、なんだか三輪先輩を思い起こさせる。
て、丁寧に対応しよう……
「……そ、その……他の部活への貢献と言うのは、生徒会に料理の差し入れをするのは含まれますか?」
ふむ……なるほど。それは考えてなかったな。
お菓子代も馬鹿にならないしな。
「確かに、良いアイデアだと思います。生徒会のお菓子代も馬鹿にならないですからね。すぐに返事は出来ませんが、前向きに検討させてください」
「は、はい!!……あ、あと」
き、桐崎副会長はどんなお菓子が好きですか?
と、俯きながら聞く伊澄先輩。
なるほど。好みに応えてくれるのか。それはありがたいな。
「そうですね。甘すぎないクッキーとかが好きですね」
と、俺が好みを教えると、伊澄先輩は
ぱあああああ
と笑顔になる。そして、
「はい!!では甘すぎないクッキーを作っていきますね!!」
そう言って教室を出て行った。
「…………」
「…………」
四時間目の休み時間。
「悠斗!!」
「悠斗くん!!」
「は、はい!!」
両サイドの美少女二人から名前を呼ばれる。
「あれは何!?」
「流石にあれは無いと思います!!」
「お、俺は相談に答えて…………」
「「言い訳しない!!」」
「…………はい。申し訳ありませんでした」
激怒する二人の前に、人権なんてものは無かった……
「いーんちょーが女たらしのハーレム王だと言われる理由がわかったよね」
「流石にあれは擁護できねぇわ悠斗」
はい。猛省致します……
永瀬先輩との一件が終わり、少しした頃に、朝練を終えた部活組が教室へと戻ってくる。
「悠斗!!いつものくれ!!」
「あいよー」
「いーんちょーわたしもー」
「悠斗、私も欲しいかな!!」
「朱里と佐藤さんの分もあるから大丈夫だよ」
と、恒例になってきた飲み物を振舞ったりしていた。
「詩織さんも飲む?」
「はい。いただきます」
隣の詩織さんにも振舞って、残ったスポドリは俺が飲み干す。
そんないつもの光景。
「なぁ、桐崎。ちょっと良いか?」
と、石崎が俺に話しかけてくる。
「どうした?なんかあったか」
そう聞く俺に、石崎は答える。
「いや、そろそろ体育祭に向けて大縄跳びの練習をしようと思うんだけどよ。場所とか取れそうか?」
「まだ誰も練習に入ってないから場所と縄の用意はすぐ出来る。だけど縄を回す奴が居ないんだよなぁ……」
俺も健も今は少し忙しい時期だ。
少し思案した俺は、昔ちょっとだけ聞いたことがある大縄跳びの練習方法を思い出す。
「なぁ、石崎。明日で良ければ場所の確保も出来るし、縄を回さない練習方法に心当たりがあるから、大縄跳びのメンバーに放課後少し残ってくれって伝えておいてくれ」
「おっけー。縄を回さない大縄跳びの練習って面白いな!!ちょっと期待して待ってるわ」
石崎はそう言って自分の席へと戻って行った。
「うーし、お前ら席に着けー」
それと同時くらいに山野先生が教室へと入ってくる。
「よーし。今日の連絡事項の説明だ。まずは……」
と、山野先生のSHRが始まった。
最近は少し考えることが増えてきたな。と感じる。
学級委員に生徒会に体育祭の実行委員。
ちょっと仕事を抱えすぎてるかな……
夏休みのことを考えると、バイトは減らしたくない。
詩織さんとの戦いのことを考えると、勉強の時間を減らしたくない。
朱里とはキチンとデートしたい。
……じ、時間が足りないなぁ
「……い、……崎!!」
「悠斗くん。呼ばれてますよ?」
「……え?」
隣からの詩織さんの声で前を向く。
「おい、桐崎!!号令だ!!」
ボーッとしてんじゃないぞ!!
と怒られる。
やべ!!忘れてた!!
「すみません!!」
俺は山野先生にドヤされて慌てて号令をかけたのだった。
だが、俺は知らなかった。
本当に大変なのはこれからだと言う事に。
一時間目の授業が終わった休み時間。
「生徒会の副会長の桐崎くんはいらっしゃいますか?」
と文芸部の部長が教室へとやって来た。
「はい。居ますよ。なんですか、紫水(しすい)先輩」
俺は返事をしながら扉の方へと歩いて行く。
「……本当に顔と名前が一致してるんだ……」
「……え?なんですか?」
「……ううん!!何でもないですよ!!ちょっと相談があるんですけど」
と、紫水先輩は話し始める。
「私たちの小説を新聞に載せるって話じゃないですか。代表して私が載せようと思うんです」
「はい。良いと思います。紫水先輩の文章はとてもクオリティが高いですからね」
「……え?読んでくれてるんですか?」
少しだけ驚いた表情の紫水先輩に、俺は言う。
「はい。最初は新聞に載せるにあたっての義務みたいな感じで読み始めたんですが、先輩の描く女性特有の繊細な心理描写に心奪われてしまいましたね」
「…………そ、そうなんですね」
それなりの数の小説を読んできたと思うけど、先輩の書く文章は、プロにも決して見劣りしない。
「……その、相談したい内容なんですけど、どんな小説を書いたら良いかなと思いまして」
「なるほど。個人的には先輩の書く新作の恋愛小説を読みたいと思っています」
続きが気になるようなラストを意識すると、良いかも知れません。
と、補足した。
「う、うん!!それじゃあ新作の恋愛小説を書いてみますね。楽しみにしててください!!」
「はい。期待して待ってます」
「………………」
「………………」
二時間目の休み時間。
「桐崎副会長いる?」
「はい。居ますよ。なんですか、仙道(せんどう)先輩?」
二時間目の休み時間にやって来たのは手芸部の部長の仙道先輩だった。
「演劇部の永瀬から聞いたよ。衣装の依頼を手芸部にしたらどうだって言われたって」
「はい。仙道先輩は高校生デザインコンテストで準グランプリに輝くほどの実力者です。能力的な問題は無い。と判断しました」
「……へぇ、そんなことまで知ってるんだ?」
「先輩は自分の知名度を知らないようですね?」
「あはは!!お前に言われたくないな!!」
と、笑う仙道先輩。
「演劇部の衣装作りは手芸部が責任を持ってやる。ただ、『有名な』私の時間を使うんだ。出来高は弾んでくれるんだろ?」
「そうですね。前向きに検討します」
「よっしゃ!!じゃあな!!桐崎副会長!!」
そう言って仙道先輩は俺の肩をバンバン叩いて去って行った。
「…………」
「…………」
三時間の休み時間。
「き、桐崎副会長は居ますか……?」
「はい。何でしょうか伊澄(いすみ)先輩」
やって来たのは料理研究会の会長の伊澄先輩だった。
何故料理部では無く、研究会なのかは分からない。
「あの……出来高の件ですけど……」
「はい。伺います」
小柄な伊澄先輩は、なんだか三輪先輩を思い起こさせる。
て、丁寧に対応しよう……
「……そ、その……他の部活への貢献と言うのは、生徒会に料理の差し入れをするのは含まれますか?」
ふむ……なるほど。それは考えてなかったな。
お菓子代も馬鹿にならないしな。
「確かに、良いアイデアだと思います。生徒会のお菓子代も馬鹿にならないですからね。すぐに返事は出来ませんが、前向きに検討させてください」
「は、はい!!……あ、あと」
き、桐崎副会長はどんなお菓子が好きですか?
と、俯きながら聞く伊澄先輩。
なるほど。好みに応えてくれるのか。それはありがたいな。
「そうですね。甘すぎないクッキーとかが好きですね」
と、俺が好みを教えると、伊澄先輩は
ぱあああああ
と笑顔になる。そして、
「はい!!では甘すぎないクッキーを作っていきますね!!」
そう言って教室を出て行った。
「…………」
「…………」
四時間目の休み時間。
「悠斗!!」
「悠斗くん!!」
「は、はい!!」
両サイドの美少女二人から名前を呼ばれる。
「あれは何!?」
「流石にあれは無いと思います!!」
「お、俺は相談に答えて…………」
「「言い訳しない!!」」
「…………はい。申し訳ありませんでした」
激怒する二人の前に、人権なんてものは無かった……
「いーんちょーが女たらしのハーレム王だと言われる理由がわかったよね」
「流石にあれは擁護できねぇわ悠斗」
はい。猛省致します……
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