学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
187 / 292
第2章

第六話 ⑤ ~教室でお出掛け計画の話をしました~

しおりを挟む
 第六話  ⑤




「それじゃあ、部活に行ってくるね!!」
「頑張ってね、朱里!!病み上がりだから、あまり無理しないように気をつけてね」
「うん。心配してくれてありがとう悠斗!!」

 学校に着いた俺たちは、自転車を置いて二手に別れる。

 朱里は体育館へ。俺は教室へ。

 そして、いつものように俺は教室へと向かう。

 ガラリ

 と、教室の扉を開けると、

「おはようございます。悠斗くん」
「おはよう、詩織さん。今日は早いね」

 中には既に詩織さんがライトノベルを片手に座っていた。

「ふふふ。今日は少しでも長く悠斗くんとお話をしたい。そう考えていたら、いつもより早く学校に来てしまいました」

 そう言うと、詩織さんはふわりと笑みを浮かべた。

 最近の彼女は本当に険がとれて非常に魅惑的に見えて仕方ない。

 ……はぁ。と心の中で俺はため息をひとつ吐く。

 二番目に好き。朱里が居なかったら付き合ってた。

 不誠実の極みにしか見えない。

 でも、そんな俺でも朱里は好きだと言ってくれた。俺に出来ることはそんな彼女を裏切らないこと。
 一番好きなのは朱里。それは絶対に変わらない。

 だけど、

「……?なんですか、悠斗くん。そんなにじっと見つめて。……ふふふ。照れてしまいます」
「い、いや、ごめん」

 はぁ……こんなに可愛い女の子に好きだとアピールをされ続けて、なんとも思わないほど枯れてはいない。
 男子高校生の性欲ってやつは、正直なところ理性より強い。

 若さ。に責任を押し付けて、俺は詩織さんの隣に座った。

「ところでさ。来週の日曜日ってさ、詩織さんは空いてるかな?」

 俺はカバンを机の横にひっかけ、隣に座る詩織さんに話しかける。

「はい。空いてます。というか、アルバイトとかをしている訳では無いので、基本的に予定はありません」

 まぁ、本を買いにどこかへ出かける。と言うのはありますが。それを『予定』とは言わないと思いますので。

 そう言う詩織さんに、俺はお出掛けの誘いをする。

「それじゃあ、その日に一緒に本を買いに行かないか?」
「行きます!!」

 即答する詩織さん。

「あはは。先日約束したからね。それに、予算会議では詩織さんにたくさんお世話になったからさ」
「その約束を、私からではなく、悠斗くんから誘っていただけたことがとても嬉しいです」

 そう言うと、詩織さんは栞をライトノベルを挟んで閉じる。
 そして、カバンからオシャレな手帳を取り出す。

 机の上に広げたその手帳の日曜日の欄に

『悠斗くんとデート』

 と記入しているのが見えた。

 そして、その予定を見て、ふわりと笑っていた。

 ……やべぇ。めちゃくちゃ可愛いな。


 俺が見ていたのに気が付いたのか、詩織さんは顔を赤くしながら手帳を閉じる。

「あ、あまり見ないでください。その……予定も何も無いまっさらな手帳なんて、女の子としては情けないです……」
「そ、そうか……」

 それに、と詩織さんは続ける。

「ゆ、悠斗くんには、その気はなくても、私は『デート』だと思ってるだなんて、浮かれてるみたいで恥ずかしいです……」

「…………」

 はぁ……

 え?いつからこんなにこの子は可愛くなったんだ……

 最初の頃は、無口で他人に対して壁のある人だと思っていた。

 その後は策略や打算で人を罠にはめたりするような人だった。

 そして、いつの間にかこんなに可愛い女の子に変わっていた。

 俺はカバンの中から一冊のライトノベルを取り出す。


 この一冊のライトノベルから始まったんだよな。

 俺はもう一度隣を見ると、詩織さんは読書に戻っていた。


『あまり無理はしないで、今を楽しみなさい』


 そんな勇さんの言葉が頭をよぎった。

 別にこれは二人の女の子と仲良くすることを許容する言葉では決してない。

 だけど、あまり無理はしすぎないで、心のままに生きて行こう。そう思った。

 朱里を一番好きなのも俺。

 彼女と身体を重ねたいと思ったのも俺。

 詩織さんを可愛いと思ってしまうのも俺。

 困ってる人に手を伸ばしてしまうのも俺。

 そんな俺を認めてあげよう。

 その上で、今を楽しもう。


 俺はそう結論付けると、手にしていたライトノベルに視線を落とした。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」 春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。 そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか) 今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。 「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」 そう言う俺に、 「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」 と笑顔で言い返して来た。 「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」 「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」 パタン 俺は玄関の扉を閉めた。 すると直ぐに バンバンバン!!!! と扉を叩く音 『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』 そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。 はぁ……勘弁してくれよ…… 近所の人に誤解されるだろ…… 俺はため息をつきながら玄関を開ける。 そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。 腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...