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第2章
第五話 ㉖ ~激戦の予算会議~ 放課後 悠斗視点 その③
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第五話 ㉖
「どうか皆さん、お願いします!!学園の生徒の為に、身体を捧げる覚悟すら決めている。そんな、心優しい蒼井生徒会長を、皆さんの手で!!支えてくれませんか!!よろしくお願いします!!」
俺の懇願の言葉。少ししてから、頭を上げ、動画のコメント欄を見る。
そこには、
『俺、生徒会に募金するよ』『私もするよ!!』『みんなでお金集めようぜ!!』『蒼井生徒会長を助けようぜ!!』『そこまで悲壮な覚悟してたなんて知らなかった……』『俺たちで蒼井生徒会長を支えるんだ!!』
そんなコメントで溢れていた。
良かった……これで戦える。
勝ったわけではない。ようやく戦える環境になったんだ。
俺はこのコメントを背に、須藤さんと向き合う。
「須藤部長。このコメントを見て、まだ『くだらない妄想』と言えますか?」
「……なるほどな。確かに動画のコメントを見ると、貴様たち生徒会を支えようと考える生徒が多くいることがわかるな」
「いえ、須藤部長。そのお言葉は少しだけ違います」
「……なに?」
俺の言葉に須藤さんは目を細める。
「みんなが支えたいと思ったのは生徒会と言う組織では無く、蒼井生徒会長です。全ては彼女の献身の姿勢のおかげです。俺はその姿をみんなに教えただけです」
そして、この教える。という行為が大切なんです。
と、俺は続ける。
「蒼井生徒会長の見目の麗しさは皆の知るところでした。しかし、その内面。人間性の素晴らしさを生徒の皆様は知りませんでした。しかし、こうして動画を配信することで、教えることが出来、その姿に感銘を受ける生徒が多数いた。そしてこれは皆様にも言えることでは無いのでしょうか?」
「広報を通じて皆様の目に見える活躍だけでなく、その内面。部活動の素晴らしさを伝えることが出来れば、お金以上のものが手に入るかも知れません」
俺のその言葉に、須藤さんは疑問を投げかける。
「お金以上のもの。ペテン師が良く言う、好きそうなセリフだな。一体それはなんだと言うんだ?」
俺はその言葉に、ニヤリと笑って答える。
「たくさんの部員を抱える、野球部の須藤さんには分からないかも知れません。そしてそれは会話には参加してませんが、サッカー部の館山さん、バスケ部の堀内さんにも言えるかもしれません」
俺のその言葉に、運動部のトップ3が目を細めた。
そして、俺は言う。
「部員が増える。その可能性が大きくなります」
俺のその言葉に、中小の部活の部長が反応する。
「新聞の一角を彩る小説を読んで、文芸部に入るかもしれません。広報の魅力を通じて新聞部や放送部に入るかもしれません。山登りの達成感や美しさを知り山岳部に入るかもしれません。演劇の素晴らしさを見て演劇部に入るかも知れません。これはほんの一例ですが、部員の数は中小の部活動にとっては死活問題です」
中小の部活の部長たちは首を縦に振った。
「そして、部員の増加は皆様に副次的な効果ももたらします」
「副次的な効果?」
「はい。来年以降の話になりますが、部員が増えれば基本となる予算が増えます。基本の予算は部員数に比例しますからね。そして部員が増えれば出来高の達成も容易になります」
「……なるほど」
「そして、広報は学園内で留めるつもりはありません」
俺は新聞部の怜音先輩を見る。
「新聞部の三輪部長とも話をしてあります。これまでは学内だけだった公報を、学外にも広げます。新聞部の皆様には仕事が増えてしまいますが、了承を得ています。そうすることによって得られることもあります」
「……持って回した言い方を好む奴だな。早く結論を言え」
少しだけ感情的になる須藤さんに、俺は笑みを浮かべる。
よし。こっちのペースになってきたぞ!!
「生徒数が増える可能性があります」
ざわり……
空気が少し乱れる。だが、俺は続ける。
「皆様の活躍や部活の素晴らしさを知り、この学園の魅力を学外にも伝えることが出来れば、志望校に悩む中学生、そしてその親御さんにも響く可能性もあります。そうすれば、来年以降の新規入学生徒が増えます。生徒数が増えれば、会費も増えますので、予算の底上げにも繋がります」
「……なるほどな」
そして、俺は少しだけ頬を緩ませる。
「そして、自分にはふたつ下の可愛い妹が居ます」
「……それがどうした?」
「その妹は来年。うちの学園に入るそうです。手前味噌ですが、とてもとてもとても可愛い妹です。あ、手を出したらいくらみなさんでも許しませんよ?まぁその頃にはみなさんは卒業してるでしょうけど」
俺がそう言うとみんなが笑った。
動画のコメントには
『桐崎くん、妹居たんだねー』
『桐崎くんってシスコンだったんだ!!』
『桐崎に似てるなら可愛いかもな』
『ちょっと写真とかないの!?』
など、興味を持ったコメントが多い。
「その妹がこの学園に入学した時に、今でも良い学園ですが、さらに良い学園にしたいと思っています。俺の言う良い学園と言うのは、『各部活動が活発に活動している』という事です」
「自分は生徒会に入会する時に、蒼井生徒会長に言いました。『広報の活性化は学園全体の活性化に繋がる』と。ですので、今後も生徒会は新聞部と連携をしながら、色々なことをしていこうと考えています」
俺はそう言うと、怜音先輩を見る。
そして、やれやれと首を横に振る。
「まぁ、流石に『ペテン師』という記事は今後は勘弁していただきたいところですがね」
その言葉に、みんなが笑った。
よし。良い空気だ。
「さて、以上がこの予算会議における自分の案に対しての補足事項になります。ご理解いだけたでしょうか?」
俺がそう言うと、皆は渋々と言った感じだが、首を縦に振った。
……だよな。その反応はわかってる。
だが、『今は』それでいい。
「それでは、今年の予算会議はこれにて終幕とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました!!」
俺はそう言って『表向きの』予算会議を終幕させる音頭を取った。
「どうか皆さん、お願いします!!学園の生徒の為に、身体を捧げる覚悟すら決めている。そんな、心優しい蒼井生徒会長を、皆さんの手で!!支えてくれませんか!!よろしくお願いします!!」
俺の懇願の言葉。少ししてから、頭を上げ、動画のコメント欄を見る。
そこには、
『俺、生徒会に募金するよ』『私もするよ!!』『みんなでお金集めようぜ!!』『蒼井生徒会長を助けようぜ!!』『そこまで悲壮な覚悟してたなんて知らなかった……』『俺たちで蒼井生徒会長を支えるんだ!!』
そんなコメントで溢れていた。
良かった……これで戦える。
勝ったわけではない。ようやく戦える環境になったんだ。
俺はこのコメントを背に、須藤さんと向き合う。
「須藤部長。このコメントを見て、まだ『くだらない妄想』と言えますか?」
「……なるほどな。確かに動画のコメントを見ると、貴様たち生徒会を支えようと考える生徒が多くいることがわかるな」
「いえ、須藤部長。そのお言葉は少しだけ違います」
「……なに?」
俺の言葉に須藤さんは目を細める。
「みんなが支えたいと思ったのは生徒会と言う組織では無く、蒼井生徒会長です。全ては彼女の献身の姿勢のおかげです。俺はその姿をみんなに教えただけです」
そして、この教える。という行為が大切なんです。
と、俺は続ける。
「蒼井生徒会長の見目の麗しさは皆の知るところでした。しかし、その内面。人間性の素晴らしさを生徒の皆様は知りませんでした。しかし、こうして動画を配信することで、教えることが出来、その姿に感銘を受ける生徒が多数いた。そしてこれは皆様にも言えることでは無いのでしょうか?」
「広報を通じて皆様の目に見える活躍だけでなく、その内面。部活動の素晴らしさを伝えることが出来れば、お金以上のものが手に入るかも知れません」
俺のその言葉に、須藤さんは疑問を投げかける。
「お金以上のもの。ペテン師が良く言う、好きそうなセリフだな。一体それはなんだと言うんだ?」
俺はその言葉に、ニヤリと笑って答える。
「たくさんの部員を抱える、野球部の須藤さんには分からないかも知れません。そしてそれは会話には参加してませんが、サッカー部の館山さん、バスケ部の堀内さんにも言えるかもしれません」
俺のその言葉に、運動部のトップ3が目を細めた。
そして、俺は言う。
「部員が増える。その可能性が大きくなります」
俺のその言葉に、中小の部活の部長が反応する。
「新聞の一角を彩る小説を読んで、文芸部に入るかもしれません。広報の魅力を通じて新聞部や放送部に入るかもしれません。山登りの達成感や美しさを知り山岳部に入るかもしれません。演劇の素晴らしさを見て演劇部に入るかも知れません。これはほんの一例ですが、部員の数は中小の部活動にとっては死活問題です」
中小の部活の部長たちは首を縦に振った。
「そして、部員の増加は皆様に副次的な効果ももたらします」
「副次的な効果?」
「はい。来年以降の話になりますが、部員が増えれば基本となる予算が増えます。基本の予算は部員数に比例しますからね。そして部員が増えれば出来高の達成も容易になります」
「……なるほど」
「そして、広報は学園内で留めるつもりはありません」
俺は新聞部の怜音先輩を見る。
「新聞部の三輪部長とも話をしてあります。これまでは学内だけだった公報を、学外にも広げます。新聞部の皆様には仕事が増えてしまいますが、了承を得ています。そうすることによって得られることもあります」
「……持って回した言い方を好む奴だな。早く結論を言え」
少しだけ感情的になる須藤さんに、俺は笑みを浮かべる。
よし。こっちのペースになってきたぞ!!
「生徒数が増える可能性があります」
ざわり……
空気が少し乱れる。だが、俺は続ける。
「皆様の活躍や部活の素晴らしさを知り、この学園の魅力を学外にも伝えることが出来れば、志望校に悩む中学生、そしてその親御さんにも響く可能性もあります。そうすれば、来年以降の新規入学生徒が増えます。生徒数が増えれば、会費も増えますので、予算の底上げにも繋がります」
「……なるほどな」
そして、俺は少しだけ頬を緩ませる。
「そして、自分にはふたつ下の可愛い妹が居ます」
「……それがどうした?」
「その妹は来年。うちの学園に入るそうです。手前味噌ですが、とてもとてもとても可愛い妹です。あ、手を出したらいくらみなさんでも許しませんよ?まぁその頃にはみなさんは卒業してるでしょうけど」
俺がそう言うとみんなが笑った。
動画のコメントには
『桐崎くん、妹居たんだねー』
『桐崎くんってシスコンだったんだ!!』
『桐崎に似てるなら可愛いかもな』
『ちょっと写真とかないの!?』
など、興味を持ったコメントが多い。
「その妹がこの学園に入学した時に、今でも良い学園ですが、さらに良い学園にしたいと思っています。俺の言う良い学園と言うのは、『各部活動が活発に活動している』という事です」
「自分は生徒会に入会する時に、蒼井生徒会長に言いました。『広報の活性化は学園全体の活性化に繋がる』と。ですので、今後も生徒会は新聞部と連携をしながら、色々なことをしていこうと考えています」
俺はそう言うと、怜音先輩を見る。
そして、やれやれと首を横に振る。
「まぁ、流石に『ペテン師』という記事は今後は勘弁していただきたいところですがね」
その言葉に、みんなが笑った。
よし。良い空気だ。
「さて、以上がこの予算会議における自分の案に対しての補足事項になります。ご理解いだけたでしょうか?」
俺がそう言うと、皆は渋々と言った感じだが、首を縦に振った。
……だよな。その反応はわかってる。
だが、『今は』それでいい。
「それでは、今年の予算会議はこれにて終幕とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました!!」
俺はそう言って『表向きの』予算会議を終幕させる音頭を取った。
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