学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第五話 ㉔ ~激戦の予算会議~ 放課後 悠斗視点 その②

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 第五話  ㉔





「生徒会副会長の桐崎悠斗です。ここから先は、蒼井空生徒会長に代わり、自分が質疑応答を担当します」


 俺は蒼井さんから受け取ったマイクで名乗りを上げた。

 ここまでは、『想定内』の状況。そう言ってもいいだろう

 怜音先輩の書いた新聞の影響。俺に対しての『ペテン師』のイメージ。

 それを考えれば、この事態は十分想定内。
 いや俺がマイクを握るために必要だった展開とも言える。

 しかし、俺の相手は、野球部の須藤さんではなく、サッカー部の館山(たてやま)さんか、バスケ部の堀内(ほりうち)さん辺りを想定していた。

 須藤さんはおそらく沈黙を貫くと思っていた。
 いや、俺としては沈黙を貫くと願っていた。

 理性的で頭がキレる。そして、どんな挑発にも冷静さを失わない。

 それは、先程のやり取りでもわかった事だった。

 野球部の馬鹿。もとい、エースの武藤健の相方にして、チームの扇の要。キャッチャーと部長を兼務する須藤さん。

 彼を相手にするのは骨が折れる事だった。

 しかし、逃げる訳には行かない。どの道彼を含めた全員の部長から了承を得ないといけないんだ。

 やることは変わらない!!


 俺は心の中で気合いを入れて、話し始める。

「まずは、蒼井生徒会長の話していた、出来高制と部活動支援金についてですが、これは自分の案で間違いありません。そして、この案の理解については、蒼井生徒会長より自分の方が深いと判断し、この場に立つことを決めました」



「そして、まずは、皆さまに話しておくことがございます」



 俺はそう言うと、各部の部長を見渡す。

 皆の視線が自分に集まったことを確認し、言い放つ。

「自分が提案した部活動支援金以外の方法で集金を行う。これは、自分が生徒会に入会した時に、蒼井生徒会長から話しをされました」

 その言葉に各部の部長がざわついた。

 あの須藤さんですら、目を細める。

「前年の繰越金が無く、百万円程の金額が足りない。その話の後に、蒼井生徒会長は自分に向かってこう言いました」


 このままだと、足りないお金は、僕が夜の街で稼ぐことになるだろうね。と。

 俺のその言葉に、辺りが騒然とする。

 動画のコメント欄荒れている。

 蒼井生徒会長も『なんでそれを言うんだい!?』とでも言いたげな驚愕の表情を浮かべている。

 その表情が、俺の言葉が嘘でないことの証明にもなっていた。


「皆さんお静かにお願いします。驚きたい気持ちは良く分かります。自分もその言葉を聞いた時に、驚きました。まさか、蒼井生徒会長はそこまで思い詰めていたのかと」

 俺は目を伏せながらそう言う。

 そして、皆に問うように話を進める。

「蒼井生徒会長は真面目で優しい人柄です。人員不足とは言え、年下の自分に躊躇いもなく頭を下げる心の広さ。そして、予算会議の案内も、紙の張り出しが慣例でしたが、皆さまに直接頭を下げて連絡をしています。これは会長の意思で行っていることです」

 そして、俺は会議資料を手に取る。

「この会議資料もそうです。会長と三輪先輩の二人で仕上げたものです。そして、この資料においても、皆さまに手渡しをしています。会長の気配り、心配りには頭が下がります」

 俺は各部の部長を見渡す。

「見目麗しい我らの会長です。夜の街にひとたび出れば、『ヨルノソラ』として金銭を稼ぐのは容易いことかもしれません。……しかし、そんな心優しい蒼井生徒会長を、欲望にまみれた夜の街に送り出す訳には行きません」

 俺は真剣な表情で続ける。

「自分には、蒼井生徒会長の言葉が、その場限りの冗談には聞こえませんでした。なので、考えました。どうしたらこの心優しい会長を守れるのかを!!」

 俺はそこまで言うと、会議資料の部活動支援金のページを開く。

「それがこの部活動支援金の制度です」

 更に俺は続ける。

「理想の生徒会長には、二種類の人物像があると思います。ひとつは、『圧倒的なカリスマで皆を引っ張る人柄』そして、もうひとつは『優しい心を持ちみんなに支えられる人柄』だと思います。そして、蒼井生徒会長は後者の人柄だと思います」

 そこまで話した俺は、怜音先輩が回すカメラに身体を向ける。

「どうか皆さん、お願いします!!学園の生徒の為に、身体を捧げる覚悟すら決めている。そんな、心優しい蒼井生徒会長を、皆さんの手で!!支えてくれませんか!!よろしくお願いします!!」


 俺はそう言うと、カメラの前で深く頭を下げた。



 そう。ここが勝負の分かれ目だった。



 頼む!!俺の言葉が響いてくれ!!


 俺は頭を下げながら、祈った。

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