学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第五話 ⑳ ~激戦の予算会議~ 放課後 蒼井視点 その②

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 第五話  ⑳




 蒼井視点



「それでは、皆さんお手元の資料の最初のページをご確認ください」

 僕のその声に、全員がページをめくる。

「まず最初に予算総額を確認ください。今年の収入の部分になります。生徒会費の他に、文化祭収益、卒業生支援金予定額などを足した金額が約八百万円です。前年度までは繰越金が百万円程ありましたが、今年はゼロです」

 僕のその言葉に、各部の部長は苦い顔をする。

 予算の減額を予想しているのだろう。

「先程の校内放送でも話したように、我々生徒会にはこの百万円分の予算が足りていません。その事を念頭に、話をしたいと思います」

 僕のその言葉に、ちらほらと声が上がる。

 予算は減るのか!!
 そんなことされたら活動出来ないぞ!!
 何とかするんじゃなかったのか!?

 僕がその声に眉をしかめると、

 パン!!!!

 と手を叩く音がする。

 音の先を見ると、

「皆さんお静かに。蒼井生徒会長がまだ話している途中です」

 桐崎くんが立ち上がり、良く通る声でそう言う。

「質問などは会長の話が終わってから。そして、発言者は挙手をしてからにしてください。資料の最初に書いてあります」

 年下の男の子に一括され、少し気まずいのか、騒いでいた部長たちは静かになった。

「ご協力ありがとうございます。それでは蒼井生徒会長、続きをお願いします」

 桐崎くんはそう言うと、席に座る。

 画面には、

『桐崎くんカッコイイ』
『先輩にも物怖じしないのは凄いな』
『てか、金が無いってのに駄々こねる部長たちって……』

 なんてコメントが流れている。

 そうか、これが桐崎くんが言っていた、僕らの後ろにいる生徒に向けてって意味なんだ。

「それでは、続けます。確かに前年より予算総額は百万円ほど少なくなっています。ですが、それをそのまま皆さんの予算に反映させて減額する。という訳ではございません。それが次のページです」

 部長たちが紙をめくる。

 その内容を見た皆は息を飲んだ。

 そこには、『出来高制』と『部活動支援金』の内容が書かれている。

「では、今年より導入する『出来高制』と『部活動支援金』この二つの説明に入ります。ちなみに、この二つの案が、昼の放送で桐崎生徒会副会長の話していた『腹案』になります」

 動画のコメントには、

『桐崎案キター』
『出来高制ってプロ野球とかで良く聞くアレ?』
『部活動支援金ってなに?』

 など、興味を引いている内容が流れてる。

「まずは、出来高制の説明になります。これはコメントでも流れてますが、プロ野球選手などに良く使われている給与方式を、予算に応用した形になります」

「各部の基本予算として、部員一名につき一万円の予算になります。野球部なら部員が三十人居るので三十万円が基本予算になります」

 この時点で、昨年より二十万円少ない予算の提示に、野球部の部長の須藤(すどう)くんは何も言わない。

 僕はその静けさに、異様さを感じた。

 しかし、止まる訳には行かないので言葉を続ける。

「このままでは、ただ予算を減額しただけになります。しかし、ここからが出来高制の話になります。一例ではありますが、野球部の場合。試合を行う事に千円を支給します。そして、勝つことで五千円の追加支給に変わります」

 その言葉に、各部の部長がザワつく。

「つまり、出来高制とは『部活動の成績に応じた予算の追加を行う制度』になります」

 動画のコメントには

『出来高制は理解した』
『面白い制度だねー』
『部活動支援金はなんだ?』

「それでは、次に『部活動支援金』について説明します。これは文字の通り皆さんを支援するお金を生徒の皆さんに募金してもらう制度です」

 ざわり……


 空気がざわつく。

 僕はそれを無視して続ける。

「出来高制を達成するために皆さんは部活動を頑張ると思います。そして、その様子は新聞部によって学園にどんどん波及してもらう予定です。そうした皆さんの活躍を支えたいと思う生徒は少なくないと思います」

「そうした生徒たちの『善意の募金』を生徒会室の前に設置した募金箱で集めます。その際に、部活動名と募金者名、金額を記入すれば横領の防止にもなります。そうして集めたお金を皆さんの部費にプラスして行く制度になります」

「そして、募金の先にはそれは僕ら生徒会も含まれます。新聞部には、毎日生徒会がどう活動してるかを、コラムにしてもらう予定です。また文芸部なども、新聞の一部に小説などを書いても良いと思います」

 動画のコメントには

『募金かー』
『面白い制度だねー』
『野球部に募金しよーかな』

 なんてコメントが出てた。

「出来高制で部活動のモチベーションを高め、新聞部の広報で学園全体にその活動を周知させ、それを募金という形で支援する。このサイクルを回すことで予算を運用したいと考えています」

 僕はここまで話すと、周りの部長を見渡す。

「ご理解いただけたでしょうか」

 少しの沈黙。そして、一人の部長が挙手をした。

 その部長は……

「……野球部の須藤部長。何かありますか?」

 沈黙を貫いていた強面の部長は、僕を睨みつけ、言った。





「くだらない妄想話はそのくらいでいいか?」
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