158 / 292
第2章
第五話 ⑩ ~激戦の予算会議~ 昼 蒼井視点 前編
しおりを挟む
第五話 ⑩
蒼井視点
「皆さんこんにちは!!生徒会会長の蒼井空です」
「皆さんこんにちは!!生徒会副会長の桐崎悠斗です」
僕たちはマイクの前で自己紹介を済ませる。
会話の台本は事前に桐崎くんから貰っている。
あの程度の内容なら、ほぼ完璧に頭に入れてある。
この放送の目的は、本日行われる予算会議の案内と生徒会の実情を全生徒に知らせることにある。
「全校生徒の皆さんにはアニソンメドレーの時間を拝借して、今日行われる予算会議について説明をさせてもらいたいと思っています」
僕の言葉に続いて、桐崎くんが話を挟む。
「蒼井生徒会長。その前に少し自分について話をさせてもらってもいいですか?」
「なるほど。桐崎くんが生徒会の副会長になって日も浅い。君がその役職についたことを知らない生徒も少なくないはずだね」
僕はそう言うと、桐崎くんに自分語りの許可を出した。
「ありがとうございます。改めましてこんにちは。二年一組の桐崎悠斗と申します。まずは自己紹介をさせていただきます。
一応、個人的に胸を張れる事として、昨年一年間は、学業において学年の次席の成績を残してきました。
自分は部活動には入っていないので、自由な時間は豊富にあります。それを活かして、昨年は学級委員を務めて来ました。それは今年においても同様です。責任ある仕事に関しては、しっかりと行えるという自負があります。
また、私事ではありますが、同じクラスの藤崎朱里さんとは、真剣な交際をさせていただいています。」
あはは。ちゃっかりしてるな。
僕は心の中でクスリと笑った。
「先日の昼休み。生徒会長の蒼井先輩から、自分と昨年の学年首席の黒瀬さんを生徒会に迎え入れたい。と打診を受けました」
「話を聞くと、前生徒会員の卒業に伴い、現生徒会は深刻な人員不足にあり、このままでは運営に支障が出る。と言う話を蒼井会長自らされ、さらには年下の自分らに頭を下げるという誠意を見せてもらいました。それに感銘を受け、自分と黒瀬さんは生徒会に入会することを決めました」
「その際。蒼井生徒会長からは、自分を副会長に、黒瀬さんを会計に、それぞれ任命されました」
「歴史ある学園の生徒会副会長の名前に恥じないよう、全力を持って職務を全うします!!どうぞよろしくお願いします!!」
そう。こうして真面目な口調でしっかりと話すことで、彼にまとわりつく『女たらしのハーレム王』や『ペテン師』のイメージを少しでも軽減したい。
それが彼が最初に話したいたことだった。
この放送は『ネタ』に走らず、しっかりとした内容を全校生徒に聞かせる。それが桐崎くんが話していたことだった。
「さて、桐崎くん。こうして放送部に無理を通して昼の枠を貰ったのも君の発案だったね?」
「はい。そうです。自分含め、この学園の生徒には、今日行われる『予算会議』についての興味が薄い。そう考えました」
「今年よりこの予算会議は、リアルタイムのオンライン配信をする。これも君の発案だね」
「はい。皆さんは知っているかわかりませんが、我々全生徒は毎月500円を学園に収めています。年間6000円の計算です。かける全生徒分になりますので、約800万円です。
この金額の運用が予算会議で決まります。これは部活の予算も含まれます。簡単に言えば、帰宅部の自分が納めたお金も、各部活の予算になるわけです。このお金がきちんと運用されているのか?それは全生徒がしっかりと知るべきだと考えました」
「これまでの予算会議は、あくまで部活に入っている生徒にしか関心が無かったからね。こうして部活に入っていない生徒にも、自分が納めたお金の運用に対しての関心を高めたい。それが目的かい?」
「はい。あとは蒼井生徒会長。生徒会の実情についても、この際きちんと話すべきだと考えました」
「…………本当に話すのかい?」
「はい。これを話さないと始まりません」
「ふぅ……わかったよ」
僕はそう言うと、桐崎くんに説明を促す。
「まず最初に、自分が生徒会に入会した時に、蒼井生徒会長からされた話は『予算が足りない』と言う話でした」
僕はゴクリと唾を飲む。
一体外ではどんな反応がされているのか……
不安で仕方なかった。
でも、もう決めたことだ。彼を信じると。
僕は真剣な表情でマイクに向かう桐崎くんの横顔を、じっと見つめていた。
蒼井視点
「皆さんこんにちは!!生徒会会長の蒼井空です」
「皆さんこんにちは!!生徒会副会長の桐崎悠斗です」
僕たちはマイクの前で自己紹介を済ませる。
会話の台本は事前に桐崎くんから貰っている。
あの程度の内容なら、ほぼ完璧に頭に入れてある。
この放送の目的は、本日行われる予算会議の案内と生徒会の実情を全生徒に知らせることにある。
「全校生徒の皆さんにはアニソンメドレーの時間を拝借して、今日行われる予算会議について説明をさせてもらいたいと思っています」
僕の言葉に続いて、桐崎くんが話を挟む。
「蒼井生徒会長。その前に少し自分について話をさせてもらってもいいですか?」
「なるほど。桐崎くんが生徒会の副会長になって日も浅い。君がその役職についたことを知らない生徒も少なくないはずだね」
僕はそう言うと、桐崎くんに自分語りの許可を出した。
「ありがとうございます。改めましてこんにちは。二年一組の桐崎悠斗と申します。まずは自己紹介をさせていただきます。
一応、個人的に胸を張れる事として、昨年一年間は、学業において学年の次席の成績を残してきました。
自分は部活動には入っていないので、自由な時間は豊富にあります。それを活かして、昨年は学級委員を務めて来ました。それは今年においても同様です。責任ある仕事に関しては、しっかりと行えるという自負があります。
また、私事ではありますが、同じクラスの藤崎朱里さんとは、真剣な交際をさせていただいています。」
あはは。ちゃっかりしてるな。
僕は心の中でクスリと笑った。
「先日の昼休み。生徒会長の蒼井先輩から、自分と昨年の学年首席の黒瀬さんを生徒会に迎え入れたい。と打診を受けました」
「話を聞くと、前生徒会員の卒業に伴い、現生徒会は深刻な人員不足にあり、このままでは運営に支障が出る。と言う話を蒼井会長自らされ、さらには年下の自分らに頭を下げるという誠意を見せてもらいました。それに感銘を受け、自分と黒瀬さんは生徒会に入会することを決めました」
「その際。蒼井生徒会長からは、自分を副会長に、黒瀬さんを会計に、それぞれ任命されました」
「歴史ある学園の生徒会副会長の名前に恥じないよう、全力を持って職務を全うします!!どうぞよろしくお願いします!!」
そう。こうして真面目な口調でしっかりと話すことで、彼にまとわりつく『女たらしのハーレム王』や『ペテン師』のイメージを少しでも軽減したい。
それが彼が最初に話したいたことだった。
この放送は『ネタ』に走らず、しっかりとした内容を全校生徒に聞かせる。それが桐崎くんが話していたことだった。
「さて、桐崎くん。こうして放送部に無理を通して昼の枠を貰ったのも君の発案だったね?」
「はい。そうです。自分含め、この学園の生徒には、今日行われる『予算会議』についての興味が薄い。そう考えました」
「今年よりこの予算会議は、リアルタイムのオンライン配信をする。これも君の発案だね」
「はい。皆さんは知っているかわかりませんが、我々全生徒は毎月500円を学園に収めています。年間6000円の計算です。かける全生徒分になりますので、約800万円です。
この金額の運用が予算会議で決まります。これは部活の予算も含まれます。簡単に言えば、帰宅部の自分が納めたお金も、各部活の予算になるわけです。このお金がきちんと運用されているのか?それは全生徒がしっかりと知るべきだと考えました」
「これまでの予算会議は、あくまで部活に入っている生徒にしか関心が無かったからね。こうして部活に入っていない生徒にも、自分が納めたお金の運用に対しての関心を高めたい。それが目的かい?」
「はい。あとは蒼井生徒会長。生徒会の実情についても、この際きちんと話すべきだと考えました」
「…………本当に話すのかい?」
「はい。これを話さないと始まりません」
「ふぅ……わかったよ」
僕はそう言うと、桐崎くんに説明を促す。
「まず最初に、自分が生徒会に入会した時に、蒼井生徒会長からされた話は『予算が足りない』と言う話でした」
僕はゴクリと唾を飲む。
一体外ではどんな反応がされているのか……
不安で仕方なかった。
でも、もう決めたことだ。彼を信じると。
僕は真剣な表情でマイクに向かう桐崎くんの横顔を、じっと見つめていた。
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説


十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~
味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」
春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。
そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか)
今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。
「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」
そう言う俺に、
「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」
と笑顔で言い返して来た。
「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」
「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」
パタン
俺は玄関の扉を閉めた。
すると直ぐに
バンバンバン!!!!
と扉を叩く音
『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』
そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。
はぁ……勘弁してくれよ……
近所の人に誤解されるだろ……
俺はため息をつきながら玄関を開ける。
そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。
腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。




ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる