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第2章
第五話 ④ ~激戦の予算会議~ 早朝 朱里視点
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第五話 ④
朱里視点
月曜日の早朝。私は制服に身を包み鏡の前に立つ。
捻挫した足はだいぶ良くなったので、もう松葉杖の世話にはならないで良さそうだ。
今日から自転車通学も再開して、悠斗と一緒に登校できる。
部活もきっつい体幹トレーニングや筋トレ中心のメニューから、軽いランニングやシュート練習にシフトしていく予定だ。
そして、今日は『予算会議』がある。
悠斗からそれなりに話は聞いているけど、結構厳しい見立てだと思ってる。
それに、新聞部が発行した新聞の影響力を考えたら、今のままだと……
なんてことを考えていると、
ピンポーン
と家のチャイムが鳴る。
「悠斗だ」
私はカバンを持ち、玄関へと向かう。
インターホンの画面に映った人物は、やっぱり悠斗だった。
……え?その髪型、デートの時の。
「……おはよう、悠斗。今行くね」
『おはよう、朱里。焦らなくていいからね』
私の足を気遣ってくれての発言だと思う。
こういうところが悠斗の優しいところだといつも思ってる。
ただ、やはり私の心には疑問が残った。
私は玄関へと向かい、革靴を履いて扉を開ける。
そこには、最愛の彼氏が最高にかっこいい姿で立っていた。
「……ねぇ、悠斗。その格好」
「今日はオンラインで配信されるからね。あの三人の隣に立つにはこの位はしないと。それに、藤崎朱里の彼氏として、かっこ悪い姿は見せたくない」
確かに悠斗の言い分はわかった。
でも……
「悠斗があまりカッコよすぎて、これ以上モテたら嫌だなぁ……って」
そう言う私を、悠斗はギュッと抱きしめる。
「大丈夫。どれだけモテたとしても、俺が一番大好きなのは朱里だから」
「うん……わかった」
私は悠斗をギュッと抱き返し、彼の唇にキスをする。
「悠斗がいっぱいモテたとしても、私がいっぱい魅力的になればいいって話だしね」
私はそう言うと、悠斗に笑いかける。
「そろそろ行こうか」
「そうだね。あと少し話もあるし」
「話?」
私が首を傾げると、悠斗は少しだけ気まずそうに言う。
「予算会議のことと、詩織さんのこと」
「……へぇ。じゃあ先に聞いておこうかな」
私がどっちを聞きたいかなんて、わかってるよね?
と笑顔で悠斗に聞く。
「……予算会議の事とか、詩織さんには結構な頻度でお願いをしててね。その見返りとして、『友達として出かけることを許して欲しい』って言われた。具体的には本屋さんに行ってライトノベルを買って、喫茶店でご飯を食べながらライトノベルの話をする。そういう一日。手を繋いだり、キスしたり、そういうのは当然無し」
……なるほどね。詩織ちゃんも考えたね。
『大切な友人』って枠の中でなら、許されるギリギリのラインだと思う。
「それで、悠斗は了承したの?」
「朱里が了承することを前提に了承した。朱里がダメって言ったら断る。そう伝えてる」
「……へぇ」
私は思案する。そして、少しだけ意地悪な質問を悠斗にする。
「もし私が、バスケ部の男子と同じことをしたいけどって悠斗に了承を求めたら、悠斗は了承する?」
「しない」
即答した。
「だったら、私がなんて言うかなんて、わかるよね?」
「そうだね」
悠斗は頷くと、私に言う。
「詩織さんには断りを……」
「出かけてもいいよ?」
「……え?」
キョトンとした表情を浮かべる悠斗。
あはは。そうだよね。
「私はね、悠斗が思ってる以上に、悠斗のことが好きなんだ」
「……うん」
私は悠斗の唇に、人差し指を当てる。
「そして、とても嫉妬深いって思ってる」
「……だったら」
そう、だったら詩織ちゃんと出かけるなんて許さないよね?
だけど、違うんだよね。
「私は、悠斗に選ばれたい」
「……え」
私は続ける。
「悠斗はカッコイイ。悠斗は優しい。悠斗は頭もいい。悠斗は女の子からいっぱいモテる。そういう男の子」
「………そんな事ない。って言葉は聞いて貰えないね」
「うん。だからね、詩織ちゃんみたいに悠斗にアプローチをかけてくる女の子はこれからも、たくさん出てくると思う」
でも、最後はきちんと私のところに戻ってくるって信じてるから。
「……朱里」
「詩織ちゃんと出掛けてもいいよ?だって悠斗は絶対に私のところに帰ってくるから。そして詩織ちゃんは思い知るんだよ」
何をしても私には勝てなかった。って
「…………」
「どんな可愛い女の子が悠斗にアプローチをかけてきても、最後はみんな私に負けるんだ。きちんと土俵に上がって、相手を負けさせる。そういう戦いを私はこれからしていくよ」
私はそう言うと、悠斗に笑いかける。
「だから、悠斗は詩織ちゃんと出掛けてきてね。詩織ちゃんに敗北を教えるためにね」
「……わかった」
悠斗は何かを決意したかのように首を縦に振った。
これから先。色んな女の子が彼を好きになると思う。
上等だ。
私は誰にも負けない!!
これから先、真っ向勝負で全員負けさせてやるんだから!!
朱里視点
月曜日の早朝。私は制服に身を包み鏡の前に立つ。
捻挫した足はだいぶ良くなったので、もう松葉杖の世話にはならないで良さそうだ。
今日から自転車通学も再開して、悠斗と一緒に登校できる。
部活もきっつい体幹トレーニングや筋トレ中心のメニューから、軽いランニングやシュート練習にシフトしていく予定だ。
そして、今日は『予算会議』がある。
悠斗からそれなりに話は聞いているけど、結構厳しい見立てだと思ってる。
それに、新聞部が発行した新聞の影響力を考えたら、今のままだと……
なんてことを考えていると、
ピンポーン
と家のチャイムが鳴る。
「悠斗だ」
私はカバンを持ち、玄関へと向かう。
インターホンの画面に映った人物は、やっぱり悠斗だった。
……え?その髪型、デートの時の。
「……おはよう、悠斗。今行くね」
『おはよう、朱里。焦らなくていいからね』
私の足を気遣ってくれての発言だと思う。
こういうところが悠斗の優しいところだといつも思ってる。
ただ、やはり私の心には疑問が残った。
私は玄関へと向かい、革靴を履いて扉を開ける。
そこには、最愛の彼氏が最高にかっこいい姿で立っていた。
「……ねぇ、悠斗。その格好」
「今日はオンラインで配信されるからね。あの三人の隣に立つにはこの位はしないと。それに、藤崎朱里の彼氏として、かっこ悪い姿は見せたくない」
確かに悠斗の言い分はわかった。
でも……
「悠斗があまりカッコよすぎて、これ以上モテたら嫌だなぁ……って」
そう言う私を、悠斗はギュッと抱きしめる。
「大丈夫。どれだけモテたとしても、俺が一番大好きなのは朱里だから」
「うん……わかった」
私は悠斗をギュッと抱き返し、彼の唇にキスをする。
「悠斗がいっぱいモテたとしても、私がいっぱい魅力的になればいいって話だしね」
私はそう言うと、悠斗に笑いかける。
「そろそろ行こうか」
「そうだね。あと少し話もあるし」
「話?」
私が首を傾げると、悠斗は少しだけ気まずそうに言う。
「予算会議のことと、詩織さんのこと」
「……へぇ。じゃあ先に聞いておこうかな」
私がどっちを聞きたいかなんて、わかってるよね?
と笑顔で悠斗に聞く。
「……予算会議の事とか、詩織さんには結構な頻度でお願いをしててね。その見返りとして、『友達として出かけることを許して欲しい』って言われた。具体的には本屋さんに行ってライトノベルを買って、喫茶店でご飯を食べながらライトノベルの話をする。そういう一日。手を繋いだり、キスしたり、そういうのは当然無し」
……なるほどね。詩織ちゃんも考えたね。
『大切な友人』って枠の中でなら、許されるギリギリのラインだと思う。
「それで、悠斗は了承したの?」
「朱里が了承することを前提に了承した。朱里がダメって言ったら断る。そう伝えてる」
「……へぇ」
私は思案する。そして、少しだけ意地悪な質問を悠斗にする。
「もし私が、バスケ部の男子と同じことをしたいけどって悠斗に了承を求めたら、悠斗は了承する?」
「しない」
即答した。
「だったら、私がなんて言うかなんて、わかるよね?」
「そうだね」
悠斗は頷くと、私に言う。
「詩織さんには断りを……」
「出かけてもいいよ?」
「……え?」
キョトンとした表情を浮かべる悠斗。
あはは。そうだよね。
「私はね、悠斗が思ってる以上に、悠斗のことが好きなんだ」
「……うん」
私は悠斗の唇に、人差し指を当てる。
「そして、とても嫉妬深いって思ってる」
「……だったら」
そう、だったら詩織ちゃんと出かけるなんて許さないよね?
だけど、違うんだよね。
「私は、悠斗に選ばれたい」
「……え」
私は続ける。
「悠斗はカッコイイ。悠斗は優しい。悠斗は頭もいい。悠斗は女の子からいっぱいモテる。そういう男の子」
「………そんな事ない。って言葉は聞いて貰えないね」
「うん。だからね、詩織ちゃんみたいに悠斗にアプローチをかけてくる女の子はこれからも、たくさん出てくると思う」
でも、最後はきちんと私のところに戻ってくるって信じてるから。
「……朱里」
「詩織ちゃんと出掛けてもいいよ?だって悠斗は絶対に私のところに帰ってくるから。そして詩織ちゃんは思い知るんだよ」
何をしても私には勝てなかった。って
「…………」
「どんな可愛い女の子が悠斗にアプローチをかけてきても、最後はみんな私に負けるんだ。きちんと土俵に上がって、相手を負けさせる。そういう戦いを私はこれからしていくよ」
私はそう言うと、悠斗に笑いかける。
「だから、悠斗は詩織ちゃんと出掛けてきてね。詩織ちゃんに敗北を教えるためにね」
「……わかった」
悠斗は何かを決意したかのように首を縦に振った。
これから先。色んな女の子が彼を好きになると思う。
上等だ。
私は誰にも負けない!!
これから先、真っ向勝負で全員負けさせてやるんだから!!
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