150 / 292
第2章
第五話 ② ~激戦の予算会議~ 深夜 蒼井視点
しおりを挟む
第五話 ②
蒼井視点
『月曜日の朝。七時半に生徒会室に集合をよろしくお願いします。予算会議に向けた最終ミーティングをしたいと思っています。その時に、自分が追加で考えたプランの説明もしたいと思っています。朝早い時間ですが、よろしくお願いします。』
日曜日の夜。桐崎くんからのメッセージで、僕は枕から顔を上げた。
生徒会のグループに投じられたメッセージを見て、僕はすぐに了承のメッセージを送った。
きっと、彼は怜音が発行した新聞の影響力を考えて、追加のプランを考えていたのだろう。
正直な話。あんなキスをしたあとに、こんなことを考えられるなんて、彼は一体どんな思考回路をしているのだろうか。と、疑問にすら思った。
時刻は二十三時半。
目を閉じれば二人のキスシーンがまぶたの裏に映し出される。
どれだけ早い時間を指定されていたとしても、遅刻することは無いだろうな。
今日は寝れる気がしなかった。
僕はもう既に寝ている両親を起こさないようにしながら、脱衣場へと向かう。
服を脱ぎ捨て、裸になった僕は、熱めのシャワーを頭から浴びる。
そして、頭と身体をしっかりと洗い、身を清める。
今日一日分の汗と汚れを落とし、少しぬるくなった浴槽へと身を沈める。
シャワーで温かくなった身体から、少しずつ熱が逃げていく。
顔にパシャリとお湯を掛け、考え事をする。
「彼の言う、プランとは一体なんなんだろうな……」
正直な話。僕にはどうしたらいいかさっぱりわからない。
勉強も出来る。要領も良い方だ。見た目だって悪くない。
凡そ人としての能力は高い水準にあると自負している。
だけど、どうしても無力感を感じてしまう。
この予算会議の件に関して、自分がなにかの役にたっているような気持ちがまるでない。
結局のところ。僕がしたのは、各部の部長に頭を下げてきただけだ。
それだって、桐崎くんに言われたからやっただけの事。
黒瀬さんは、たったひと晩で予算の枠組みを作ってきた。
琴音は予算会議のレジュメを作ってきてくれた。
「僕も……何かをしたい……」
桐崎くんにこんなことを言えば、『蒼井さんだってすごく役に立ってますよ』とか言ってくれると思う。
でも違うんだ。そうじゃない。
僕は。僕自身が。何かを為したと胸を張って言える事をしたいんだ。
そうしないと、彼の横に立てない気がするから……
「そうか……僕は、桐崎くんに認めてもらいたいんだ」
その言葉が、ストン……と胸の内に落ちてきた。
年下なのに頼りがいのある彼。
いつだって冷静で、ユーモアのある彼。
他人のために全力で頑張れる彼。
そんな彼に、『蒼井空』の存在を認めさせたい。
今の彼の中の僕は、きっと『いっこ年上のちょっと美人な女生徒会長』としか思ってないはずだ。
悔しい。悔しい。悔しい。
僕は彼に対してかなり大きな感情を持っているのに、彼は僕に対してはそこまで大きな感情を抱いていない。
このままでは、僕だけが彼に片思いをしてるだけじゃないか!!
「惚れさせてやる……」
そうだ。決めた。
僕は湯船から立ち上がり、決意する。
黒瀬さんは一番大好き人の隣に『行く』ことを決意した。
僕は違う。
桐崎くんがこっちに『来る』んだ。
全てを捨ててでも、僕の隣に来たいと、思わせてやる!!
『そうですね。当日は蒼井生徒会長の真骨頂を期待してます!!』
そんなこと。微塵も思っていないような軽いセリフだと感じていた。当たり前だ。彼は私を軽く見てるんだから。
しっかり僕を見てろよ、桐崎悠斗!!
当日は蒼井空の本気を……真骨頂を!!見せてやるんだ!!
蒼井視点
『月曜日の朝。七時半に生徒会室に集合をよろしくお願いします。予算会議に向けた最終ミーティングをしたいと思っています。その時に、自分が追加で考えたプランの説明もしたいと思っています。朝早い時間ですが、よろしくお願いします。』
日曜日の夜。桐崎くんからのメッセージで、僕は枕から顔を上げた。
生徒会のグループに投じられたメッセージを見て、僕はすぐに了承のメッセージを送った。
きっと、彼は怜音が発行した新聞の影響力を考えて、追加のプランを考えていたのだろう。
正直な話。あんなキスをしたあとに、こんなことを考えられるなんて、彼は一体どんな思考回路をしているのだろうか。と、疑問にすら思った。
時刻は二十三時半。
目を閉じれば二人のキスシーンがまぶたの裏に映し出される。
どれだけ早い時間を指定されていたとしても、遅刻することは無いだろうな。
今日は寝れる気がしなかった。
僕はもう既に寝ている両親を起こさないようにしながら、脱衣場へと向かう。
服を脱ぎ捨て、裸になった僕は、熱めのシャワーを頭から浴びる。
そして、頭と身体をしっかりと洗い、身を清める。
今日一日分の汗と汚れを落とし、少しぬるくなった浴槽へと身を沈める。
シャワーで温かくなった身体から、少しずつ熱が逃げていく。
顔にパシャリとお湯を掛け、考え事をする。
「彼の言う、プランとは一体なんなんだろうな……」
正直な話。僕にはどうしたらいいかさっぱりわからない。
勉強も出来る。要領も良い方だ。見た目だって悪くない。
凡そ人としての能力は高い水準にあると自負している。
だけど、どうしても無力感を感じてしまう。
この予算会議の件に関して、自分がなにかの役にたっているような気持ちがまるでない。
結局のところ。僕がしたのは、各部の部長に頭を下げてきただけだ。
それだって、桐崎くんに言われたからやっただけの事。
黒瀬さんは、たったひと晩で予算の枠組みを作ってきた。
琴音は予算会議のレジュメを作ってきてくれた。
「僕も……何かをしたい……」
桐崎くんにこんなことを言えば、『蒼井さんだってすごく役に立ってますよ』とか言ってくれると思う。
でも違うんだ。そうじゃない。
僕は。僕自身が。何かを為したと胸を張って言える事をしたいんだ。
そうしないと、彼の横に立てない気がするから……
「そうか……僕は、桐崎くんに認めてもらいたいんだ」
その言葉が、ストン……と胸の内に落ちてきた。
年下なのに頼りがいのある彼。
いつだって冷静で、ユーモアのある彼。
他人のために全力で頑張れる彼。
そんな彼に、『蒼井空』の存在を認めさせたい。
今の彼の中の僕は、きっと『いっこ年上のちょっと美人な女生徒会長』としか思ってないはずだ。
悔しい。悔しい。悔しい。
僕は彼に対してかなり大きな感情を持っているのに、彼は僕に対してはそこまで大きな感情を抱いていない。
このままでは、僕だけが彼に片思いをしてるだけじゃないか!!
「惚れさせてやる……」
そうだ。決めた。
僕は湯船から立ち上がり、決意する。
黒瀬さんは一番大好き人の隣に『行く』ことを決意した。
僕は違う。
桐崎くんがこっちに『来る』んだ。
全てを捨ててでも、僕の隣に来たいと、思わせてやる!!
『そうですね。当日は蒼井生徒会長の真骨頂を期待してます!!』
そんなこと。微塵も思っていないような軽いセリフだと感じていた。当たり前だ。彼は私を軽く見てるんだから。
しっかり僕を見てろよ、桐崎悠斗!!
当日は蒼井空の本気を……真骨頂を!!見せてやるんだ!!
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説


十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~
味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」
春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。
そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか)
今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。
「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」
そう言う俺に、
「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」
と笑顔で言い返して来た。
「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」
「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」
パタン
俺は玄関の扉を閉めた。
すると直ぐに
バンバンバン!!!!
と扉を叩く音
『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』
そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。
はぁ……勘弁してくれよ……
近所の人に誤解されるだろ……
俺はため息をつきながら玄関を開ける。
そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。
腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる