学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
147 / 292
第2章

蒼井side ② 生徒会長の一日 その⑤ ~親友の双子の家でする恋愛話~

しおりを挟む
 蒼井side  ②



「まだ時間的に余裕があるから私たちの家でゲームでもしようよ!!」

 買い物を終えた僕たち三人。
 まだ時間は十五時だ。サヨナラするには早すぎる時間だと思った。

「大乱闘なアレかな?」
「そうそう!!」
「くくく。私のプリンが火を噴くよ!!」
「あはは。琴音のプリンは強いよね」

 私たち三人は今後の予定を決めると、ショッピングモールを後にした。

 なんだか今日は桐崎くん関係の知り合いにたくさん会う日だな。
 まぁでも黒瀬さんに会った。これで最後だろう。

 なんてことを考えていたんだけど、最後の桐崎くん関係者があとひとり残っていて、まさか夜にあんな場面に遭遇するだなんて、その時は思いもしていなかったんだ。







 ショッピングモールを出て、バスに乗って駅へと戻る。
 僕は通学に使っている自転車を取りに行く。怜音と琴音は無料の駐輪場に停めていた自転車を取りに行った。


「去年は結構二人の家でゲームして遊んだよね」


 僕は自転車を漕ぎながら、そう切り出した。

「そうだねー。女三人で熱い戦いを繰り広げてたよね」
「でも、今年からは受験もあるし。ゲームする時間は減るかもしれないよね」

 琴音の言葉に、僕と怜音が反応する。

「受験かー。空は何か考えてる?」
「三人で同じ大学に行きたいな」
「……学力は空が頭一つ抜けてるから、私たちに合わせるのは忍びない」
「あはは。でもね、琴音、僕は思うんだよね」

 勉強ってのはどこで学ぶか。では無くて、誰と学ぶか。だってさ。

「はい。空の名言入りました!!」

 僕の言葉に怜音が反応する。

「あはは。でも、いずれは就職とかで離れてしまうけど、僕はもう少しこの三人で居たい」
「空……」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん!!」




 なんて会話をしながら、僕たちは二人の家に到着した。




「あー!!空が笑顔ではめ技してくる!!」
「あはは!!コンボははめ技とは違うぞ!!」
「やっぱり三人で遊ぶのは楽しいね!!」

 二人の部屋でゲームをしながら、僕たちはワイワイと騒いでいた。

 時刻は十八時。

 共働きの二人の両親。母親がもうそろそろ帰ってくる時間だった。

「あまり騒ぎ過ぎるとお母さんに怒られるからこのくらいにしておこうか」
「そうだねー。この間も怒られたし」
「あはは。じゃあ少し話しでもしようか」

 僕はそう言うと、コップに注がれ、少しだけ炭酸の抜けたコーラをひと口飲む。

「何の話する?恋バナ?」

 いきなり突っ込んでくる怜音に、私は吹き出しそうになる。

「怜音は好きな人とか居るのか?」
「んー。今は居ないかなぁ……琴音は?」
「私は恋多き女の子。いつだって彼氏は次元の向こう側。空は?」
「……僕も居ないかな」

 ふと。桐崎くんの顔が思い浮かぶが、頭を振ってそれを消す。

「……ふーん」

 僕のその様子に、怜音が疑わしそうな目を向ける。

「彼がフリーだったら良かったのにね?」
「誰も桐崎くんとは言ってないだろ!!??」
「……空。怜音は『彼』としか言ってない」
「……あ」

 軽く目眩がする僕。

「えぇ……こんなわかりやすい引っ掛けに引っ掛かる?」

 困惑する怜音。

「いや、別に僕は……桐崎くんが好きとかそう言うのは無いから……」
「ふーん。まぁでも、彼がフリーだったら結構いい男だよね」
「……ハーレム王が怜音まで篭絡してる……っ!!」
「二人で話す機会があったから彼のひととなりは少しはわかったけど、なかなか面白い男だと思ったよ」

 と、怜音はニヤリと笑う。

「そう言えば新聞部の記事ではなかなか面白いことを書いていたな」

『ペテン師』だったな。

「くくく。そうだよね。桐崎くんは本当に面白い男だと思ったよ。だからこそ、あぁ書くことで彼がどう言う対応をするか見たいと思ったんだよね」
「怜音が意地悪をする男。結構お気に入りの証……」
「はぁ……明日の予算会議は一筋縄では行かないな」

 僕がそう呟くと、怜音が笑う。

「まぁでも、新聞部は生徒会のバックには付くよ。ただ、バックに付くだけだ。表には出ない」
「うん。わかってる」
「あとはそれをどう空や桐崎くんが利用するか。だよ」

 そう言って怜音がコーラ飲む。

「ねぇ、怜音。やっぱり予算会議は荒れるかな?」

 僕のその言葉に、怜音が笑う。

「荒れないはずが無い。まぁでも空は安心していいよ」
「……え?」

 キョトンとする僕に、怜音が言う。

「困った時には、きっと桐崎くんが何とかしてくれる」
「……随分と買っているんだな」
「そうだね。『予算会議』に関して言えば何の心配もしていないよ」
「……どういう意味だい?」

 僕の問いかけに、怜音は少しだけ言いにくそうにしながらも、話を続ける。



「……私たちの親友が、無謀な恋愛に身を投じないかどうか。それだけが心配だよ」


 と。

「それは、僕が桐崎くんに惚れないかどうか。って事かな?」
「……端的に言えばそうだよ」

 怜音の言葉を僕は一笑する。

「彼はいい男だと思ってる。でも僕は彼女が居る男に惚れるようなことは無いよ」

 と言う。




 ……空が『いい男』なんて評価をすること自体が緊急事態だってことに、気がついてないんだろうな。

 怜音が何かを呟いた気がしたが、僕には聞き取れなかった。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」 春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。 そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか) 今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。 「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」 そう言う俺に、 「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」 と笑顔で言い返して来た。 「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」 「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」 パタン 俺は玄関の扉を閉めた。 すると直ぐに バンバンバン!!!! と扉を叩く音 『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』 そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。 はぁ……勘弁してくれよ…… 近所の人に誤解されるだろ…… 俺はため息をつきながら玄関を開ける。 そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。 腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...