学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

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第2章

蒼井side ② 生徒会長の一日 その① ~休日に出会った彼を見て~

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 蒼井side  ②



 怜音と琴音と共にショッピングモールで買い物を済ませ、一波乱あった喫茶店で昼食を取り、本屋さんで琴音に付き合い、その後、学園の近くに住む二人の家でゲームをして遊んだ帰り道だった。

 多少遅くなってしまったが、門限には厳しくない両親に育てられているため、朝帰りでなければなんの問題なかった。

 二十時過ぎの時間。普通に帰れば二十二時前には帰宅出来る。

 明日は予算会議がある。今日のうちには寝たいところだな。

 なんて思いながら自転車をこいでいた。

 夜の公園。

 普段なら特に気にもしない帰り道にある公園のベンチに、二人の人影が見える。


「……桐崎くんと藤崎さん」


 見覚えのある人物に驚く。が、二人の関係性を考えればあながち不思議でもないだろう。

 そして、二人は何かを話して、笑い合う。

 その様子を見て、僕は、ズキン……と胸が痛くなる。

 少しだけ覗いていたことを、僕は後悔した……



 二人はキスをした。




 僕はなぜこんな場面を見てしまっているのだろうか……




 何故今日は、ここまで『桐崎くんの関係者』と縁のある一日だったのだろうか。




 今日の朝。目を覚ました僕は春の陽気を感じ、少しだけ涼し気な格好で出掛けることにした。

 普段は一人称が『僕』な時点でボーイッシュな印象を持たれてると感じている。
 だけどそういう印象とは裏腹に、服装はヒラヒラした可愛いものが好きだ。


 今日は友人の双子と安くなっている春物の服を見に行く約束をしていた。

 怜音と琴音とは去年からの付き合いで、新聞部に入った怜音と、僕と一緒に生徒会に来てくれた琴音とは、ずっと仲良くしていた。

 将来的に人手不足になる予感を感じていた生徒会だったが、入会希望の男子生徒の情報を怜音から聞いたりして、納得のいかない人間性の生徒は入会を断ったりもしていた。

 そんな中で真面目な二人の後輩を迎え入れることが出来たのは僥倖だったと言える。

 まぁ……琴音は桐崎くんに対しては、かなり警戒心を強く持ってるけどね。

 そんな二人と休日を過ごせるとあって、僕は朝から気分が良かった。

 朝。電車に乗って、学校の最寄り駅まで向かっていると、何やら周りが少し騒がしかった。

 普段から見た目に関して、異性からそれなりに注目を集めることの多い僕だが、今日はどうやら自分では無いようだ。

 声の先を見てみると、確かにとてもカッコ良い男性が居た。

 背も高く、男性らしい筋肉のついた身体付き、服装もオシャレで、髪型も今どきだ。

 ん……どこかで見たことがあるような。


「……桐崎くんじゃないか」


 普段はメガネをしているから気が付かなかった。今の彼はコンタクトレンズを使っているのだろう。

 デートかなにかなのだろうか?

 少しだけ興味の出た僕は話しかけることにした。


「おや……もしかして桐崎くんかい?」

 まるで今気が付いたかのように僕は彼に話しかける。

「蒼井さんですか?」

 少しだけ意外そうな表情で、桐崎くんは僕に返答する。
 確かに。こんな場所で会うだなんて思いもよらなかっただろう。

「そうだよ。こうして休日に会うのは初めてだね?」

 桐崎くんの言葉を肯定する僕。すると彼は僕の服装に軽く視線を向けると、にこやかに言う。

「そうですね。蒼井さんの格好、とても良くお似合いです」

 その言葉に僕は少しだけ照れくささを覚える。
 こんなに人の服装を自然に褒められるのかい、君は。

 年下にいいようにやられるのは癪なので、僕もやり返すことにする。

「あはは……桐崎くんもかなりオシャレでかっこいいね。あれかな、これからデートと言うやつかい?」

 と、からかい混じりに言う僕に、さして照れる様子もなく桐崎くんは自然に答えてくる。

「はい。そうです。これから一時間ほど電車に揺られてケーキバイキングに行く予定です」

 なんだか少しだけ悔しい気分だがしかたない。
 僕も本日の予定を話すことにした。

「そうなのか。僕は学校の最寄り駅に行って、バスに乗った先にあるショッピングモールで少し買い物をしようかと思ってるんだ」

 ここで会ったのも何かの縁だ。もし良ければ三十分程話をしないかい?

 僕はこの間に何としてでも、この冷静な後輩に一泡吹かせてやるんだ。と意気込んでいたが、

「はい。蒼井さんほど綺麗な女性の誘いを断るようなことは男として出来ませんよ」

 き、綺麗!!??

 そういう言葉を何度も言われることはあったが、彼から言われると、何故だか心が乱される。

「き、君は誰に対してもそんなことを言うのかい……っ!?」

 僕のその言葉に、彼はなんでもないかのように首を傾げる。

「……?いえ、そんなことは無いですよ」

 思ったことしか言ってないので、誰にでも。という訳では無いです。

 その言葉に、僕は怜音の言っていた言葉を思い出した。

「……これが女たらしのハーレム王たる所以か……」
「……え?何か言いました?」

 ぼそりと呟いた僕に、彼は問いかけてきたが、首を振って否定する。

「いや、何でもないよ」
「……そうですか」

 少しだけ納得の言ってないような表情の桐崎くん。

 まぁ、聞こえてない方が君のためかもしれないからね。


 そして、僕たちは電車に揺られながら、三十分ほど会話を楽しんだ。

 そうこうしてると、僕が降りる駅がアナウンスされる。

「おや、もう着いてしまったね」
「はい。名残惜しいですが、ここまでですね」

 そう言うと、桐崎くんは僕に頭を下げてくる。

「楽しい時間をありがとうございます。明日の予算会議でも、蒼井さんのお役に立てるように頑張ります」

 僕との会話を楽しいと思ってくれたんだね。それは良かったよ。それに予算会議のことをしっかり考えてくれてたんだね。
 そんな彼に好印象を抱く。

「あはは。そんなかしこまらなくてもいいよ。ただ、君には期待してるよ」

 少しだけ発破をかける僕に、彼はしっかりと頷いた。

「僕も楽しかったよ、桐崎くん。じゃあまた学校で」
「はい。では、失礼します」

 僕は手を振って電車を降りた、





 彼を乗せた電車がホームから去ったのを確認してから、僕は胸に手を当てて大きく深呼吸をした。

「……まったく。年下の男の子にいいようにやられるとは、情けないな」

 少しだけ乱れた心を落ち着け、僕は双子の待つ駅のターミナルへと向かった。
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