学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第四話 ⑪ ~差し入れのケーキを渡したら、司さんはとても喜んでくれました~

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 第四話  ⑪



 猫カフェを楽しんだ俺たちは、料金を支払い店を後にした。そんなに高いものでは無いんだな。

 時刻は十七時。

 今から向かえばライブ前に司さんに差し入れを渡すことが出来そうだ。

 俺たちは手を繋ぎながら歩いてライブ会場へと向かう。

 その時に、俺は司さんへ、

『そろそろそっちに行きます。どこで待ち合わせますか?』

 とメッセージを送っている。

 程なくして司さんから返信があり、

『入口で少年を待ってるから、彼女と一緒に来たまえ』

 と言われる。

 そして、ライブ会場の入口へと到着すると、漆黒の衣装に身を包んだ司さんが立っている。

「やぁ、少年。待っていたよ」
「こんにちは、司さん。それがライブ衣装ですか、カッコイイですね」
「ありがとう、少年。これにはこだわりがあってね。……おっと、これ以上はライブを見てもらっての方が良いな」

 そして、司さんは俺の隣に居る朱里へと視線を向ける。

「やぁ私は北原司と言う。少年のバイトの先輩だね。藤崎朱里さん。君が少年の彼女だね?君のことは彼から良く聞いているよ」

 と、にこやかに自己紹介をする。

「はじめまして、北原さん。あなたのことも悠斗から聞いています。とても頼りになる先輩だと」
「へぇ、少年が君に話す私の姿には興味があるな。あと藤崎さん。私のことは名前で呼んで構わないよ?」
「はい。わかりました、司さん。それと私のことも名前でいいですよ?」
「そうかい?じゃあ朱里くんと呼ばせてもらおうかな」




 そんなやり取りをしながら、俺たちは司さんから楽屋へと案内してもらう。

「ここが私たちの楽屋だ。関係者以外立ち入り禁止だから、少年はここまでだ。ケーキだけ置いていってもらおうか?」
「ちょっとそれ酷くないですか!?」
「あはは!!冗談だよ。少しばかり散らかっているが気にしないでくれ」

 司さんはそう言うと楽屋の扉を開けて、俺たちを迎え入れる。

 そこには、三人の女性がライブ前の緊張感を持って……

「わぁ!!君がつかっちゃんが言ってたバイトの後輩くんだね!!」
「やだー可愛いー!!見て見て!!彼女連れてる!!」
「天然の高校生……私達も少し前はこうだったのに……遠い昔のようだよ……」

 いなかった。

 なんだか、すごい自然体な気がした。

 ライブ前ってもっと……

「ははは。少年よ。もう少しピリピリしてると思ったかい?」
「えぇ、はい」

 司さんの言葉に首を縦に振る。

「緊張しないものなんですか?」

 と、朱里も気になったようなので聞いていた。

「最初の頃は緊張したね。ただ、もうこの程度のライブ会場で緊張はしないよ」

 私たちはもっと上を目指してるからね。

 と、司さんは力強く言い切る。

「来年には大学を卒業して、それを機にメジャーデビューしないか?というオファーも貰っている。だからもうここも卒業だなと思っているんだ」
「そうなんですか、すごいですね」

 俺はそんな司さんが眩しく見えた。

「あ、すみません。司さん。不躾なお願いをしてもいいですか?」

 俺は雫から頼まれていたCDケースをカバンから取り出す。

「妹の雫が、コンパスのファンなんです。受験勉強も司さんたちの曲を聴きながらしてるそうです。もし良かったら……」
「サインなら喜んでするさ」
「……え?」

 食い気味に司さんはそう言うと、俺の手からCDケースを取る。

「JCが私たちの曲を聴いて勉強してるなんて嬉しいじゃないか!!なぁ、みんな、サインを描いてあげようじゃないか!!」

「おっけー!!」
「いーよいーよー!!」
「可愛い妹ちゃんのために一肌脱ぐよ!」

 その言葉に、他のメンバーたちもサインを描いてくれた。

 そして出来上がったのは、きっとそのうちもの凄い価値が出るであろうコンパスの全メンバーの直筆サイン入のCDケースだった。

「あ、ありがとうございます!!妹も絶対に喜びます!!」

 俺は頭を下げると、持ってきたケーキを差し出す。

「あの、もし良ければこれを皆さんで召し上がって貰えますか?」
「お!?気になっていたが少年よ。これはあの店のケーキではないか?」

 既に保冷容器に書かれた店名を読んでいた司さんが、興味を示していた。

「はい。そうですよ。ここに来る前に彼女とデートでケーキバイキングを楽しんで来ました。その時に美味しかったのをいくつか見繕って差し入れにしました」

 保冷容器に入れてあるので、まだ冷たいままですよ。

 そう言って俺は司さんに容器を手渡す。

「ふふふ。この店のケーキを食べるのを楽しみにしててね。少年よ。なかなか良い差し入れじゃないか」
「あはは。喜んでもらえて嬉しいです」

 とりあえず約束は果たせたと思い、俺は安堵の息を吐いた。
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