学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第三話 ③ ~教室で予算の確認をしましたが、完璧過ぎてなんの問題も無かった~

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 第三話  ③




「その勝負。私が勝ったら、一日だけでいいです。悠斗くんと二人きりで恋人同士のようなデートをしてください」


 早朝の駐輪場。
 周りには誰も居ない。
 彼女が俺に向けた正攻法の宣戦布告を聞いている人間は俺しか居ない。

「……そうか」
「はい。ちなみに、悠斗くんが勝った場合には、私はなんでも言うことを聞きます」

 もう俺につきまとうな。そう言うならそうしましょう。

「……そこまで言うつもりは……」
「いえ、私はそのくらいの覚悟で挑んでいます」

 真剣な表情の彼女に、俺は美しさを見た。

 ふぅ。打算や策略や罠にはめるようなやり方ではなく、こうして真正面からぶつかってくる。
 俺はこういうことから、逃げられない。

 嫌いではないからだ。

「わかった」

 俺は首を縦に振った。

「詩織さんが勝ったら、一日だけ。恋人同士のようなデートをしよう」

 でも、俺が勝っても特に何も言わない。

「何故ですか?」
「君に勝つ。それが俺にとって、何よりも重要な事だからだよ」

 学年次席では無く、首席になる。

 俺の自尊心の為だ。

「ふふふ。そうですか……」

 と、詩織さんは笑う。

「ちなみに、私が勝った時にするデートでは『朱里さんにしたことがある行為』までは許してくださいね?」
「……わかった」

 これ以上。性欲に流される訳には行かなくなったな……

「では、これ以上の立ち話もあれですし。教室へと向かいましょう」
「そうだね」

 俺たちは頷き合うと、教室へと歩いて行った。






「うん。完璧じゃないかな?」

 俺は詩織さんが持って来たノートパソコンに映された予算を見ながらそう呟く。

 ほぼ固定の予算は前年を踏襲し、変動の部活動予算は部員数に応じた金額に設定した計算式を組まれていた。

 オートSUMで出された予算の合計は約700万円。

 出来高で支払える余裕はこの時点で約100万円程ある。

 あとは、うちの生徒会がどの程度の募金を集められるかだが、

「悠斗くん。この100万円ですが、有って無いようなものだと思ってます」
「そうだね。俺もそう思うんだ」
「きっと、出来高をクリアしてくる部活は少なくないと思います。そうなると、やはり金銭面の問題は解決されてないように思えます」

 その辺はどうする予定ですか?

 やはり、詩織さんも同じことを考えていた。

 出来高制なら、下手したら前年以上の予算を払う可能性もあり、野球やサッカーやバスケの部活はその可能性が非常に高い。そのためのお金をどう工面するか。
 いくらか綺麗どころが揃っているとはいえ、無策では集まらないだろう。

「一応。考えてることがある」
「なんですか?……私も身体を売りますか?」

 と、詩織さんが冗談ぽく言う。

「あはは。詩織さんには頼まないよ。ただ、会長には身体を売って貰おうと思ってる」
「……え?」

 俺の言葉に、詩織さんが口をポカンと開ける。
 お、その表情は初めて見た。可愛いな。

「今回は予算の会議を、リアルタイムのオンラインで配信しようと思ってるんだ」
「配信……ですか?」
「そう。みんなが見てるってなれば、部長たちも無茶な要求はなかなか難しいと思う」
「そうですね」
「そして、俺が頃合いを見て言うんだ。このままだと予算が足りなくて皆さんに出来高が払えないと、そうなると見目麗しい蒼井会長が、不足したお金を夜の街で……って言えばたくさんの募金が入ってくると思うんだ」
「……悠斗くん、なかなか酷いです……」
「あはは。まぁお金が足りないのは事実だからね。蒼井さんには一芝居打って貰おうかと」
「まぁ……そうですね。ちなみにその話は蒼井さんにはするんですか?」
「しないでおこうかと思う。サプライズの方がリアリティのある驚きがあると思うからね」
「なるほど。……悠斗くんにも黒い部分があるとわかって、私は少し嬉しいです」
「あはは。俺は聖人君子じゃないからね」

 と、俺は笑いながら言う。

「とりあえず、放課後に新聞部に行って、色々と交渉をしてくるよ。まずはそこが第一関門だからね」
「そうですね。頑張ってください、悠斗くん」
「うん。ありがとう」




 さて、どうやったら新聞部をやる気にさせられるか考えておかないとな。

 俺はそんなことを思いながら、授業を過ごしていった。
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