学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第三話 ② ~彼女から、正攻法で宣戦布告をされました~

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 第三話  ②



 車通りの少ない道を原付のニケツで走り抜ける。
 幸い警察に見つかることも無く、駅まで無事にたどり着けた。

 前回のニケツの時も、なんだかんだでかなり話題になったし、なんならナンバープレートすら写ってたんじゃないか?と思ったが、警察からは何も来ていない。

 まぁ、あまり褒められたことじゃないけど、救急車みたいなものだと思って大目に見て欲しい。

 駅の駐輪場に愛車のポチを停め、駅へと向かう。

 松葉杖の朱里のスピードに合わせて、ゆっくりと歩く。
 そして、階段の時には手を貸して転ばないように気をつける。

 そして、俺は定期券で、朱里は俺のSuicaで駅の構内に入る。

 電車の時間を確認すると、普通に朝練には間に合う時間だった。

 それでもそこまで時間に余裕がある訳では無いので、油断はしないでおこう。

 しばらくしてやって来た電車に乗り込む。
 少しだけ席が空いて居たので、その席に朱里を座らせる。
 俺は彼女の松葉杖を預かり、側に立つ。

「ありがとう、悠斗」

 と、朱里がお礼を言う。

「このくらい当然だよ」

 と俺は返した。

 そして、しばらくすると学校の最寄りに到着する。

 俺は朱里に松葉杖を返し、彼女に手を差し伸べる。
 彼女が席から立ち上がるのを補佐して、電車から降りる。

 駅から出ると、入り口に彼女を待たせ、俺は自転車を取りに行く。

 荷台付きのママチャリなので、座ってのニケツは可能だ。

 俺は朱里の前まで来ると、家から持ってきていたクッションを彼女に手渡す。

「そのまま座ると痛いと思うから、これを下に敷いてよ」
「なんだか、至れり尽くせりだね」
「ははは。好きな人のためならこのくらいは、ね?」

 と、俺は笑う。そうこの位はやって当然だろう?

 そして、自転車のニケツも警察には見つからなかったが、他に朝練へと向かっていた生徒たちに見つかって、色々とからかわれた。

 俺はとても嬉しかったが、朱里は恥ずかしかったようで、この間と同じように真っ赤になった顔を隠すように、俺に抱きついていた。幸せです。

 そして、しばらくすると学校へと到着する。

 駐輪場に自転車を停めたところで、朱里が言う。

「お疲れ様、悠斗。重くなかった?」
「全然!!むしろ天使の羽かな?って思ってたくらいだよ」
「あはは。それは言い過ぎだよね。でもありがとう」
「どういたしまして。じゃあ朱里。部活頑張って」
「うん。悠斗も教室で待っててね」

 詩織ちゃんとの読書は許してるけど、浮気はダメだからね?

「あはは……大丈夫だよ」
「どっちかと言うと、危ないのは悠斗より詩織ちゃんだけど……」

 と、少しだけ表情を暗くさせながら、彼女が呟く。

「とりあえず。本人からはもう、俺を罠にはめたりだとか、ああいう事しないって言われてるからさ」
「へぇ……そうなんだ」
「うん。『正攻法』で行きます。って言われた」
「正攻法……なるほど」

 詩織ちゃん……かなり悠斗のことわかってるかも
 あなどれない……

 なにか危機感のようなものを感じたように思えたが、何を言ったか聞き取れなかった。

「え……?なんか言った?」
「ううん。なんでもない!!」
「そ、そうか……」

 なんだか、はぐらかされてしまった気がする。

「とりあえず、今日は生徒会の仕事の話をすると思うんだ」

 部活動の予算の作成をお願いしてるから。

「バスケ部の予算は多めでお願いします!!」
「あはは。たとえ愛しの彼女がいる部活でも、それは難しいかな……」

 ただ、朱里が居る女子バスケ部なら、たくさんの『募金』が集まるだろうとは思うけど。

「あまり話してる時間はないんだけど、一つだけ聞いてもいい?」
「うん。いいよ」

 俺がそう言うと、朱里は聞いてきて。

「なんで悠斗は生徒会入ったの?なんか理由がありそうな感じがしたから」

 もしかして……会長が可愛いから?

 なんてことを言う朱里。

「違うよ。なんて言うのかな、とても言うのは恥ずかしいんだけど……笑わないでね?」
「うん。笑わない」

 俺は深呼吸をして、言う。

「肩書きが欲しかったんだ」
「肩書き?」
「うん」

 首を傾げる朱里に続ける。

「バスケ部のレギュラーで、学園でも屈指の美少女と名高い藤崎朱里の彼氏として、帰宅部の俺では並び立てないと思っててね」

 今は生徒会の副会長。まぁゆくゆくは生徒会長あたりの肩書きが欲しいなって思ってるんだよね。

「こんな自分の劣等感なんて、朱里に話すのは恥ずかしかっ……え?」

 困ったような顔をする俺を、朱里が抱きしめる。

「馬鹿だね……悠斗」
「……え?」
「釣り合ってないなんて、本当なら私の方が思っちゃうくらいだよ……」

 悠斗はかっこいいし、優しいし、頭良いし、すごくモテるんだよ?それなのにさらに生徒会までやったらもっとすごくなっちゃうじゃん。

「そう言って貰えるなら嬉しいよ。ただ、これは俺が思ってる事だからさ」
「うん。知ってる。だから、私も頑張るね」

 もっともっと魅力的になって、悠斗をメロメロにしちゃうんだから!!

 そう言って、朱里は俺にキスをした。

「ふふふ。大好きだよ、悠斗!!」
「俺も大好きだ、朱里」

 じゃあ、部活頑張ってくるね!!

 そう言って彼女は松葉杖をつきながら体育館へと向かって行った。



 その後ろ姿を俺はじっと眺めていた。





「朝からラブラブですね?」
「……詩織さん」

 後ろから聞こえてきた声に、俺は振り向く。

 そこにはジトーとした目でこちらを見てる詩織さんが居た。

「ふぅ……まぁ良いですけど。それより、予算の枠組みが出来ましたので、教室で確認して貰えますか?」
「ありがとう。詩織さん。とても早くて助かるよ」

 これは何かお礼をしないとだよね。

 と俺が言うと、

「お礼ですか?それはなんでもいいですか?」

 その言葉に、詩織さんが食いつく。

「あはは。あまり変なのはダメだよ?」

 すかさず俺が釘を刺す。
 しかし、彼女のお願いは少し予想と違っていた。

「……次の中間テスト。私と点数で勝負してください」
「……え?」
「一年時の期末テスト。7教科の合計は私が698点。悠斗くんは695点でした」
「……良く覚えてるね」
「はい。同じクラスで、いつもすぐ下に名前がありましたので」
「ふぅ……それで、勝負するだけじゃないよね?」

 俺のその言葉に、詩織さんが首を縦に振る。









「その勝負。私が勝ったら、一日だけでいいです。悠斗くんと二人きりで恋人同士のようなデートをしてください」

 そう言った。
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