学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

聖女様side ① ~ひとりきりの夜~

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 聖女様side  ①


 聖女様視点





 パチパチパチ……

 私は蒼井さんから借りた去年の予算のデータをノートパソコンにコピーし、悠斗くんが話した計算式を打ち込み、今年の予算を組んでいきます。

 一律一万円✖️部員数

 なので、計算式を入れて、オートSUMで各部の合計を出せば簡単に作れます。

 きっとそう言うのも見据えてくれてたのでしょう。

「ふふふ。優秀な人って好きですよ」

 二時間ほどで今年の予算の枠組みが出来上がりました。

 私はくるりと肩を回すと、データを保存したUSBを引き抜きます。

 ノートパソコンの電源を落とし、パタリと画面を閉じました。

 時計を見ると時刻は二十三時です。

 少しくらいはライトノベルを読む時間がありますね。

 私はそう結論を出すと、悠斗くんから借りた紙袋の中から一冊のライトノベルを取り出します。

 私が最初に読んだライトノベルの最終巻です。

 主人公の幼なじみの女の子と、主人公がいじめにあってた所を助けた女の子。
 紆余曲折の末、主人公の男の子はどちらの女の子にも、一定以上の好意を持ってると言えます。そんな彼がどちらを選ぶのか。この最終巻で決着です。

 どちらも選ばない。

 というエンディングがあるのも知ってますが、この作品の特性上。必ず一人を選ぶはずです。

 前巻のラストでは、いじめにあってた女の子が、主人公に告白をした。という所で終わっていました。
 主人公の男の子が初めてされた告白だったのです。
 こんな所で終わっておいて、すぐに次の巻を読ませてくれないなんて!!悠斗くんもなかなか意地悪ですよね。

 私は物語の中にどんどん引き込まれていきました。

 そして、一時間ほど掛けてこの最終巻を読み切りました。

 当初はじっくりと三時間かかってたライトノベルですが、この最終巻は本来のスピードで読んでしまいました。そのくらい早く先を知りたかったのです。

「そうですか……」

 彼は選びました。

 どちらを選んだのかは……ネタバレになるので辞めます。

 選ばれなかった方も、彼を諦めて二人を祝福しています。
 悔いはないような雰囲気でした。

 そうですか。

 私には、理解出来ません。

「私は……悠斗くんが好きです」

 恋人、嫁、家族

 そういうポジションは最悪全て、朱里さんに渡しましょう。

 ですが、それ以外のポジションでも、悠斗くんのそばに居ることは出来るのです。

 友人、親友。は序の口です。

 愛人や浮気相手でもいいです。

 世の中にはセフレという、性行為をする友人関係もあるそうです。

 ふふふ……私は朱里さんより、胸が大きいですからね。彼女には出来ない方法で彼を喜ばせることも出来ると思います。

 それに、もし仮に二人が結婚して、子供が出来たら家政婦になっても良いですね。

 悠斗くんの子供を育てる。

 ふふふ……とても魅惑的です。

 そう、こんなにも選択肢はあるのです。

 にもかかわらず、好きな人のそばに居ることを、こんな高校生のうちから諦めてどうするんですか?

 もしかしたら、破局するかもしれない。

 もしかしたら、選んだ相手に不幸が起きるかもしれない。

 そんなときに、彼のいちばん近くに居なければ、他の人に取られてしまうかもしれない。

 人生は百年近くあります。

 まだ八十年以上残った人生。

 十年後、二十年後、二人の関係がどうなるかなんてわかりません。

 ですが、わかる事が一つだけあります。

 それは、


「私の気持ち」


 そう、この、悠斗くんが好きという気持ちだけは、未来永劫変わらないと言えましょう。

 私は死ぬまで彼の隣に居続けましょう。

 年老いて、ヨボヨボになって、縁側でお茶を飲みながら、ライトノベル片手に悠斗くんとお話をする。

 その隣に、朱里さんが居てもいいですよ?

 大切なのは、自分の隣に悠斗くんが居ること。

 彼の隣に何人居ようと、私が隣に居られればそれでもいいのです。

 そして、朱里さんより長生き出来れば、その時には私が彼の一番になれるはずです。

 まぁ、男性より女性の方が寿命が長いので、もしかしたら悠斗くんの方が先に死んでしまうかも知れません。

 ふふふ、そしたら朱里さんと二人で、悠斗くんとの思い出話をしながら余生を過ごしましょう。

 そうです。このように、私は絶対に諦めません。

 私の言う『正攻法』とは、別に彼の性欲に訴えかけるようなものではありません。
 そういう方法もとるとは思いますが……ね?

 ただ、決して諦めることなく、何年でも、何十年でも、彼の隣に居続ける覚悟。

 今は、二番でも構わない。

 一瞬でも一番になれる瞬間があるなら、そこに人生の全てをかけましょう。



「ふふふ……悠斗くん……大好きです」




 私は……彼の住んでいる家の方を向いて、そう呟きました。
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