学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
117 / 292
第2章

第二話 ⑪ ~ラブコメラノベの偉大なる先輩たちは、自身の性欲に打ち勝ってきたんだよな。尊敬します~

しおりを挟む
 第二話  ⑪




 チュン……チュン……


「ふぅ。もう朝か……一睡も出来なかったけど、俺は手を出さないで我慢できたぞ……まったく、無防備な顔で寝やがって……」

 俺は自室で、『まだ真っ暗な外』を見ながらそう呟いた。

「ねぇ、悠斗。まだ夜だよ?」

 車の中に予備があったというパジャマ(なんであるんだよ……)に着替え、ベッドの上に座っている朱里が、少し困ったような声で俺にそう話しかけてきた。

「……だよねぇ」

 チュン……チュン……

 なんて幻聴が聞こえるくらいには、俺は追い込まれていた。

 自室の下では、三人の大人が楽しそうに飲んでる。
 隣の部屋では雫が音楽を聴きながら勉強をしてる。

 そして、俺の部屋には……朱里が居る。

 いや、春休みの昼に、雫と一緒に俺の部屋に居た。

 ということはあったが、こんな夜中に、二人きりで、一緒に寝る。

 そんなことは無かった。

「なぁ、朱里。その俺は……」
「俺は床で寝るから、朱里はベッドで寝てくれ。なんて言われても断るからね?」
「うぐ……」

 ジトーっと睨みつけてくる朱里。

「もー悠斗?ラブコメラノベの主人公はみんな同じこといってるよ?そして断られてるんだよ。ほら、一緒に寝るよ?」

 明日も早いんだし。

「あ、朱里は……その、平気なのか?」

 なんだか落ち着いてる気がする。焦ってるのは俺だけ?みたいな。

「平気だよ。だって悠斗だもん。私が嫌がることはしないって信じてるし」
「まぁ……」
「それに、好きな人と一緒に寝られるとか、幸せだよね。悠斗は違うの?」
「いや、違わないけど……」
「それにね、悠斗。聞いてほしいんだけどさ」

 と、朱里は息を吸って、吐く。

「もし、本当に、悠斗が、いろいろと我慢出来なくて、そういうことになったとしても、私は嬉しいよ?」
「……っ!!」




「好きな人に求められて、嫌な女の子はいないよ」




「……それでも、俺は朱里との初めては、もう少しこだわりたい」

 俺は絞り出すようにそう言った。

「初めてのキスは0点だったから、こっちの初めては100点にしたい」
「ふふふ。そっか。じゃあ、期待してようかな?」

 朱里はそう言うと、俺のベッドに寝転ぶ。

「えへへ。悠斗の匂いがする。悠斗には悪いけど、良く寝れそうな気がする」

 可愛い……

 この世にこんな可愛い女の子が存在しても良いのだろうか?

 学園の二大美少女?何言ってんだ。世界で一番の美少女じゃないか!!

「ほら、悠斗。おいで」

 朱里はそう言うと、掛け布団を持ち上げて俺を誘う。

「あ、はい」

 俺は花の蜜に誘われるように、フラフラとそこに足を運ぶ。

 そして。朱里の腕に包まれるように、布団の中に入る。

「お邪魔します」

「ふふふ。なにそれ面白い」

 背中を向けるようにしてベッドに入った俺を、朱里は後ろから抱きしめる。

「悠斗の背中。大きいね」
「ねぇ!!朱里!!誘ってるよね!?」

 俺は思わず叫んでしまう。

「えへへ。誘ってる」
「…………」

 プツン……

 と、何かが切れた気がした。

 俺はくるりと身体を回転させて、彼女の身体を抱きしめる。

「……電気。消すよ」
「……うん」

 パチ、パチ

 真っ暗だと寝れない俺は、玉電をつけていつも寝ている。

 オレンジ色の光に、朱里の顔が染る。

「キスしたい」

 俺のその言葉に、朱里が頷く。

「いいよ」

 唇を重ね合う。

 暖かい。

 強く、強く、彼女を抱きしめる。

「……悠斗、好き」
「うん。俺も好きだよ……朱里」


 舌を入れ、唾液を絡め合う。

 誰も見ていない、二人だけ空間に、隠微な音が響く。









 そうして、夜が明ける。








 チュン……チュン……


「ふぅ。もう朝か……一睡も出来なかったけど、俺は手を出さないで我慢できたぞ……まったく、無防備な顔で寝やがって……」

 そう、俺は手を出さなかった!!

 キスはした!!でも我慢した!!

 長男だから!!

 俺の隣にはすやすやと寝息をたてる可愛らしい朱里。

 自身の宣言通り、良く寝てる。

 キスをして、愛を囁いて、理性が崩壊しかけた時に、朱里の寝息が聞こえてきた。

 そしたら、もう無理だった……


 寝てる女の子に手を出すなんて最低なことは出来ない……

 ただ、寝ることすら出来ず、俺はずっと我慢の数時間を過ごしたのだった……


「……偉大なるラブコメラノベの先輩たち……俺も、あなた達のように、頑張りました……っ!!」

 朝焼けに染る外を見ながら、俺はそう呟いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」 春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。 そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか) 今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。 「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」 そう言う俺に、 「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」 と笑顔で言い返して来た。 「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」 「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」 パタン 俺は玄関の扉を閉めた。 すると直ぐに バンバンバン!!!! と扉を叩く音 『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』 そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。 はぁ……勘弁してくれよ…… 近所の人に誤解されるだろ…… 俺はため息をつきながら玄関を開ける。 そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。 腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

処理中です...