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第2章
第二話 ③ ~どうやら、生徒会は致命的な人手不足みたいでした~
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第二話 ③
「さて、ご飯を食べながらでいいから聞いて欲しいんだよね」
と、会長は俺たちに向かってそう切り出した。
「まぁ、なんとなく何を言われるのかは予想出来ますが、お話いただけますか?」
と言う俺。
「あはは。まぁ桐崎くんにはわかってるだろうけどね。その、現状の生徒会の話からしようか」
今の生徒会は、致命的な人手不足なんだ。
「人手不足ですか」
「まるでライトノベルのような展開ですね。悠斗くん。予想が出来ました。私たちはこの後、生徒会に勧誘を受けるのですね?」
「あはは。黒瀬さん。その通りなんだよ」
と、蒼井さんが苦笑いを浮かべる。
「現状。生徒会には会長の僕と、今はこの場に居ないけど、書記の同級生の女の子が一人だけなんだ」
「……なんでそんなことになってるんですか?」
俺の質問に蒼井さんが答える。
「副会長は、今まで前任の会長が僕を支える名目で卒業まで一緒に居てくれたんだ。そして、会計と庶務も三年生だったんだ。そして、残念ながら僕たち以外の同級生や君たちの学年が生徒会に入ってくれることが去年は無かったんだ」
山野先生が言ってたな。知名度がある人間が生徒会に欲しい。と。きっと、今の生徒会に必要なのは、人員以上に生徒間での実情の理解なのかもしれないな。
人手不足なんて今、初めて知ったし。
「山野先生は、バスケ部の顧問と、生徒会の顧問を兼ねてくれている。だから、この実情を知っていてね。どうにかして欲しいと泣きついた次第だよ」
と、蒼井さんはそこまで話すと、メンチカツをひと口齧り、ご飯を頬張る。
「それで、部活に入ってない自分と詩織さんに白羽の矢を当てた感じですか?」
俺の問いに、彼女は口の中のご飯を飲み込み。そして、水をひと口飲む。
「僕の中では桐崎くんに副会長をやってもらいたい。そして、わがままを言わせてもらうなら、黒瀬さんに会計をしてもらいたいかな」
庶務に関しては、いたら助かる。という感じだからね。
「副会長……ですか」
俺はウインナーを咀嚼しながら考える。
時間的に出来ないことは無い。
バイトが無い日に生徒会業務をする。
そういうことも可能だろう。
それに、俺の目的にも合致する。
問題は……
「ねぇ、いーんちょー。会長も女の子。書記も女の子。会計も黒瀬さん。めっちゃハーレムじゃん?」
「やりましたね、悠斗くん。生徒会ハーレムなんてライトノベルですよ」
「悠斗……浮気はダメだよ?」
「あの……まだ、やるって決めたわけじゃ……」
「そうは言っても悠斗ならやるんだろ?」
もう、カツ丼を食い終わっていた健は、爪楊枝を咥えながらそう言う。
「はぁ……少しだけ、考えさせてください」
俺はそう言うと、最後のご飯を口に入れて咀嚼する。
「それは構わないよ。なんとなくだけど、良い返事が貰えると思えるからね」
「あはは。まぁそうですね」
「ちなみに私は、悠斗くんが生徒会に入るなら入ります。入らないなら理由が無いので入りません。そのつもりでお願いします」
「あはは。了解だよ黒瀬さん。それじゃあ僕はかなり本気で桐崎くんにアプローチを掛けないといけないね」
「あ、アプローチ!!??」
と、反応する朱里。
「あはは。大丈夫だよ、藤崎さん。僕は彼女が居る男の子に手を出すような人じゃないよ?」
「あ……すみません……」
しゅん……となる朱里。
蒼井さんは語るべきことは終えた感じだったので、食べ終わっていた食器を持って立ち上がる。
「それじゃあ桐崎くん。いい返事を待ってるよ」
「はい。とりあえず。今日の放課後に伺わせてもらいます」
返事はその時に。
「それなら、私も悠斗くんと一緒に生徒会に伺わせてもらいますね」
と、詩織さんも追従してきた。
「ありがとう。それじゃあ美味しいお菓子と紅茶を用意して待ってるよ」
蒼井さんはそう言い残すと、席を立って食器を返しに歩いて行った。
「悠斗は、副会長になるつもり?」
と、蒼井さんの背中を見ていた俺に、朱里が尋ねてきた。
「そうだね。副会長の打診を受け入れると思うよ」
俺はその問いに首を縦に振る。
「ゆくゆくは生徒会長ってのになろうかなって思ってたのもあるから」
「そうなの?」
「うん」
バスケ部のレギュラーで、学年でも指折りの美少女の朱里の彼氏として、帰宅部では情けないなぁとは思っていた。
なにか肩書きのようなものが欲しいと思っていたのだ。
まぁ、そんなことは言うつもりは無いけどね。
生徒会に入会。副会長から会長と言う流れは、個人的には悪くないなとは思っていた。
「そっか。じゃあ私も応援するね!!」
と、言って朱里が拳を握る。
「それでは、私が会計ですね」
ふふふ、バスケ部の予算は私の手の中です。
「ちょっと!!詩織ちゃん!!??」
「黒瀬さん、それは職権乱用!!」
「ふふふ。冗談ですよ?冗談」
なんて言って笑いあってる三人。
「なぁ、悠斗」
「なんだよ?」
健が、その様子を見ながら、俺に言う。
「女って、わかんねぇな」
「……まぁな」
ちょっと前は険悪だったのに、今ではもう笑ってる。
心のうちはわからないけど、女心ってわかんないな。
俺はお姉さんからもらったプリンを食べながら、副会長になったら何するのかなぁ……なんてことを考えていた。
「さて、ご飯を食べながらでいいから聞いて欲しいんだよね」
と、会長は俺たちに向かってそう切り出した。
「まぁ、なんとなく何を言われるのかは予想出来ますが、お話いただけますか?」
と言う俺。
「あはは。まぁ桐崎くんにはわかってるだろうけどね。その、現状の生徒会の話からしようか」
今の生徒会は、致命的な人手不足なんだ。
「人手不足ですか」
「まるでライトノベルのような展開ですね。悠斗くん。予想が出来ました。私たちはこの後、生徒会に勧誘を受けるのですね?」
「あはは。黒瀬さん。その通りなんだよ」
と、蒼井さんが苦笑いを浮かべる。
「現状。生徒会には会長の僕と、今はこの場に居ないけど、書記の同級生の女の子が一人だけなんだ」
「……なんでそんなことになってるんですか?」
俺の質問に蒼井さんが答える。
「副会長は、今まで前任の会長が僕を支える名目で卒業まで一緒に居てくれたんだ。そして、会計と庶務も三年生だったんだ。そして、残念ながら僕たち以外の同級生や君たちの学年が生徒会に入ってくれることが去年は無かったんだ」
山野先生が言ってたな。知名度がある人間が生徒会に欲しい。と。きっと、今の生徒会に必要なのは、人員以上に生徒間での実情の理解なのかもしれないな。
人手不足なんて今、初めて知ったし。
「山野先生は、バスケ部の顧問と、生徒会の顧問を兼ねてくれている。だから、この実情を知っていてね。どうにかして欲しいと泣きついた次第だよ」
と、蒼井さんはそこまで話すと、メンチカツをひと口齧り、ご飯を頬張る。
「それで、部活に入ってない自分と詩織さんに白羽の矢を当てた感じですか?」
俺の問いに、彼女は口の中のご飯を飲み込み。そして、水をひと口飲む。
「僕の中では桐崎くんに副会長をやってもらいたい。そして、わがままを言わせてもらうなら、黒瀬さんに会計をしてもらいたいかな」
庶務に関しては、いたら助かる。という感じだからね。
「副会長……ですか」
俺はウインナーを咀嚼しながら考える。
時間的に出来ないことは無い。
バイトが無い日に生徒会業務をする。
そういうことも可能だろう。
それに、俺の目的にも合致する。
問題は……
「ねぇ、いーんちょー。会長も女の子。書記も女の子。会計も黒瀬さん。めっちゃハーレムじゃん?」
「やりましたね、悠斗くん。生徒会ハーレムなんてライトノベルですよ」
「悠斗……浮気はダメだよ?」
「あの……まだ、やるって決めたわけじゃ……」
「そうは言っても悠斗ならやるんだろ?」
もう、カツ丼を食い終わっていた健は、爪楊枝を咥えながらそう言う。
「はぁ……少しだけ、考えさせてください」
俺はそう言うと、最後のご飯を口に入れて咀嚼する。
「それは構わないよ。なんとなくだけど、良い返事が貰えると思えるからね」
「あはは。まぁそうですね」
「ちなみに私は、悠斗くんが生徒会に入るなら入ります。入らないなら理由が無いので入りません。そのつもりでお願いします」
「あはは。了解だよ黒瀬さん。それじゃあ僕はかなり本気で桐崎くんにアプローチを掛けないといけないね」
「あ、アプローチ!!??」
と、反応する朱里。
「あはは。大丈夫だよ、藤崎さん。僕は彼女が居る男の子に手を出すような人じゃないよ?」
「あ……すみません……」
しゅん……となる朱里。
蒼井さんは語るべきことは終えた感じだったので、食べ終わっていた食器を持って立ち上がる。
「それじゃあ桐崎くん。いい返事を待ってるよ」
「はい。とりあえず。今日の放課後に伺わせてもらいます」
返事はその時に。
「それなら、私も悠斗くんと一緒に生徒会に伺わせてもらいますね」
と、詩織さんも追従してきた。
「ありがとう。それじゃあ美味しいお菓子と紅茶を用意して待ってるよ」
蒼井さんはそう言い残すと、席を立って食器を返しに歩いて行った。
「悠斗は、副会長になるつもり?」
と、蒼井さんの背中を見ていた俺に、朱里が尋ねてきた。
「そうだね。副会長の打診を受け入れると思うよ」
俺はその問いに首を縦に振る。
「ゆくゆくは生徒会長ってのになろうかなって思ってたのもあるから」
「そうなの?」
「うん」
バスケ部のレギュラーで、学年でも指折りの美少女の朱里の彼氏として、帰宅部では情けないなぁとは思っていた。
なにか肩書きのようなものが欲しいと思っていたのだ。
まぁ、そんなことは言うつもりは無いけどね。
生徒会に入会。副会長から会長と言う流れは、個人的には悪くないなとは思っていた。
「そっか。じゃあ私も応援するね!!」
と、言って朱里が拳を握る。
「それでは、私が会計ですね」
ふふふ、バスケ部の予算は私の手の中です。
「ちょっと!!詩織ちゃん!!??」
「黒瀬さん、それは職権乱用!!」
「ふふふ。冗談ですよ?冗談」
なんて言って笑いあってる三人。
「なぁ、悠斗」
「なんだよ?」
健が、その様子を見ながら、俺に言う。
「女って、わかんねぇな」
「……まぁな」
ちょっと前は険悪だったのに、今ではもう笑ってる。
心のうちはわからないけど、女心ってわかんないな。
俺はお姉さんからもらったプリンを食べながら、副会長になったら何するのかなぁ……なんてことを考えていた。
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