学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第2章

第一話 ⑫ ~バイトを終えて家に帰ったら、雫に叩かれました。本日二度目~

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 第一話  ⑫




「ふう……疲れたなぁ」

 バイトを終えた俺は、合鍵を使って家の中に入る。

 親父は今日は職場に泊まるらしいので、家には雫しかいない。
 今朝の一件があったのであれだが、まあもう寝てるだろう。
 明日はバイトが休みなので、山野先生と朱里の両親に少し許可を頂いて家に呼ぼうかなあ。

 なんてことを考えながら廊下を進むと、居間に電気が着いていることに気がつく。

 親父はいないし、雫の消し忘れか?

 なんて思いながら居間に入ると。

「おかえり、おにぃ」
「雫……?まだ起きてたのか」
「……うん」

 もう二十二時半だ。睡眠時間を大切にする雫にしては遅くまで起きている。
 と言うか、『おにぃ』って呼んでくれてる。

「ねぇ、私はさ、確かにおにぃの良いところは、本気で好きになった人のために頑張れるところだ!!って言ったけどさぁ……」

 雫がユラりと立ち上がる。

「とぅいったーの動画でおにぃと朱里ちゃんがキスしてるシーンを見て」
「あ、はい」

 そうだ。司さんがバズってたって言ってたな。
 そりゃあ雫の目にも入るか。

「いやー気分が高まっちゃって」

 と呑気に言う俺。

 しかし、雫は続ける。

「おにぃ……これを見てほしいかな?」

 と、詩織はスマホにニュース動画を映す。

「ニュース……?」

 俺は少しだけ意外そうにその画面を見る。

 すると、

『今日のバズ動画』

 と言うタイトルでニュースコーナーが始まった。

 背中に嫌な汗が流れる。
 え、まじ?

『今日のバズ動画のコーナーです。このコーナーでは視聴者がとぅいったーに投稿した動画を紹介するコーナーです』

 …………。

『本日のバズ動画は。こちらです』

『通学路の中心で愛を叫ぶ』


 ちょ……っ!!え!!??

 スマホに映し出されたのは、今朝の俺と朱里の一幕。


『俺は!!二年一組の桐崎悠斗は!!二年一組の藤崎朱里を!!世界で一番!!愛してまーす!!!!!!』

 チュッ!!

『わあああああ!!!!』

『ゆ、悠斗のバカぁ!!!!』

 バシーン!!


 そして、画面はニュースキャスターの二人に戻る。


『高校生の二人ですね』
『いいですねぇ。私もこう言う青春を送りたかったです』
『彼氏さん。かなりガチで叩かれてましたね』
『いやー彼女さんの気持ちも分かりますよ?』
『まぁこうして全国に放送されてしまったわけですが、彼氏さんがまた叩かれないことを願いましょう』


 ピッ

 雫のスマホから動画が消える。

「はい。これが今日の夜のニュースです。これは全国放送です」
「……はい」
「私のRAINにはクラスメイトからおにぃのことに対しての質問がたくさんきてます」
「……申し訳ございません」
「ニュースキャスターの二人は、『朱里ちゃんには』叩かないで欲しいと言ってました」
「そ、そうですね……」

 震える俺に、雫が笑いかける。

「叩けない朱里ちゃんに変わり、私がおにぃを叩きます」
「ま、待って!!もう今日だけで三発は食らってるの!!流石にちょっと……っ!!」
「歯を食いしばれ!!おにぃ!!」
「……っ!!」

 雫が思いっきり、右手を振りかぶる。

「自分の行動をもう少し考えろぉ!!!!」

 バシーーーン!!!!


「ぐふぅ……」

 流石に四発はきつい……

 俺は思わず膝を着く。

「まあでも、朱里ちゃんと仲直り出来て良かったね!!」
「雫……」

 見上げた雫は、笑っていた。

「今日の夕飯は雑炊です」

 口の中が切れてると思うからね。

 あまり噛まなくても良いものにしたよ。

「じゃあ私は寝るね。食べ終わった土鍋は洗っておくか、水につけておいてね」

 おやすみなさい。

 と言って、雫は居間を後にした。


 俺は冷めている雑炊をコンロで火にかけ温める。


 と、とりあえず。すぐにでも、もう一度朱里に謝ろう。
 お詫びになにかデートとかに誘おうかな……

 てか、昨日とは違う意味で教室が騒然となりそうだな。
 始まったばかりの高校二年生。
 いきなり波乱万丈過ぎるだろ……

 そんなことを考えながら、俺はぐつぐつと温まり始めた土鍋を眺めていた。
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