学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第1章

第九話 ⑰ ~波乱の一日・夜~ 後編 聖女様視点

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 第九話  ⑰



 聖女様視点



『藤崎朱里』


 彼のスマホに映ったその文字を見た瞬間。私は、歓喜に包まれました。
 彼女が悠斗くんに電話をするということは、あのシーンの写真を見たのでしょう。
 これはその真意を確かめるための電話。
 そして、私にとって最重要だったのは、この藤崎さんからの電話に立ち会うこと。
 この電話を使って、藤崎さんにとどめの一撃を与えること。
 これが私にとっての本日最後の攻撃。

 しかし、悠斗くんがなかなか電話に出ませんね。

 これではせっかくのチャンスが不意になってしまいます。それでは困りますね。

「……出ないのですか?」

 私はしびれを切らして言ってしまいました。

「……っ!!」

 慌てて電話に出る悠斗くん。

 その様子を見ると、会話の内容なんて、容易に想像出来ますね。



『ねぇ、悠斗くん。今どこに居るの?』
「……え?」

 今どこに居るの?そんなことをきかれたんじゃないですかね?

 悠斗くんは驚いた表情で、私を見てきました。
 そんなに見つめないでください。照れちゃいますよ。

「ふふふ……」

 私は恥ずかしさのあまり、少し笑ってしまいました。

『黒瀬さんの家、かな?』
「……っ!!??」

 息を飲む悠斗くん。私の家に居ると言い当てられたのでしょうね。ふふふ……家じゃない、家の前だ。なんて言える雰囲気では無いですね?

『……黒瀬さんと悠斗くんが仲良さそうに帰ってる写真がね、女子のグループに流れてるの』
「…………」

 これは、私たちの写真が女子のグループに流れているという話を聞いたようですね。
 愕然として表情で私を見ています。

『ねぇ、悠斗くん……なんで、そういうこと、しちゃうのかな……』

 優しい悠斗くんが好き。でも、誰にでも優しい悠斗くんは……きらいだよ……
 私は、私だけに優しくして欲しいって、思っちゃうよ……
 ねぇ、悠斗くん……私って、重い?

 藤崎さんはかなりのダメージを受けていると確信しました。

 そして、私は賭けに出ます。

 力なくスマホを掴む悠斗くんから、スマホを奪いに掛かります。

「……え!?」

 やりました!!成功です!!

 私は手にした悠斗くんのスマホから藤崎さんへと話しかけます。
 そして、通話形態をスピーカーに変えます。

「もしもし、藤崎さんですね?」

『……え?黒瀬さん?』

 ふふふ、びっくりしてますね?

 まるで彼氏の失態に手を貸す本命彼女のようなムーブに見てるでしょう?
 私は申し訳なさそうな声色で藤崎さんに言います。

「大変申し訳ございません。悠斗くんには私が無理を言って送って貰ったんですよ?」
『……っ!!白々しい……』
「あ、申し遅れましたが、今の通話はスピーカーになっておりますので」
『なっ!!』
「悠斗くんに聞かれている。というのを前提にお話しましょうか?」
『黒瀬さんと、話すことなんて、ないよ』

 冷たい声色の藤崎さん。

 ですが、最後の一撃に向けた言葉を吐きます。

「ふふふ、そうですか、それは残念です。私はお話したかったのですが。では藤崎さん。最後にひとつだけ。聞いていただけますか?」

















『辛いですよね?苦しいですよね?でも、私は悠斗くんを諦めません。あなたが彼と付き合ってる限り、私はこうして彼にアプローチをかけ続けます。あなたが彼と別れるまで』

















 悠斗くんには聞こえていないでしょうが、藤崎さんには聞こえていたようです。
 息を飲む音が聞こえました。

 ふふふ……

 あはは……

 これが、私のとどめの一撃です。

 悠斗くんから藤崎さんへ別れを告げることは無いでしょう。

 あるとしたら、藤崎さんから彼へしかありません。

 ですので、あなたの心を削らさせて頂きました。

 悠斗くんとあなたが付き合い続ける限り、私はこういうことを何度でも、何度でも、何度でも、何度でも、何度でも、何度でも、何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも……ふふふ……続けましょう。

「悠斗くん。今日は送っていただいてありがとうございました。また明日からも仲良くしてくださいね」

 私は彼にスマホを返し、マンションへと向かいました。

 ふふふ、その後の彼と朱里さんの会話は、先程彼にしがみついた時に仕込んだ『盗聴器』で聞くことにしましょう。
 私は耳にイヤホンをセットします。

 すると、悠斗くんの制服の胸ポケットに忍ばせた盗聴器から、彼と藤崎さんの会話が聞こえてきました。

「……朱里さん」
『ねぇ、悠斗くん。私ね、今日部活で捻挫しちゃったんだ』

 なるほど、藤崎さん、あなた怪我までしてたんですね……

『あぁ、心配しないでいいよ?バスケと捻挫なんて友達みたいなもんだし。まぁ一週間は安静かな』
「……そうなんだ」
『それでね、一週間くらいはお父さんかお母さんの車で送って貰う予定なんだ』

 だから、朝一緒に登校しなくていいよ。

「…………」

 悠斗くんは黙っています。ふふふ……そうでしょう。
 今まで一緒にいるのが当たり前だったのに、そのハシゴを外されたのですから。

「……あ、あの!!朱里さ……」
『でもね、悠斗くん』

 悠斗くんの言葉を遮るように藤崎さんがいいます。

『明日だけは登校前に時間を貰えないかな?』
「時間?」
『うん。朝は早いけど六時に、私の家の前の公園に来て』

 そこで、話したいことがあるから。

 へぇ……六時にあの公園……
 行かない理由は……無いですね……

「……そうか」
『うん。早いけど、頑張ってきてね。じゃあ切るね』

 あとさ、考えをまとめたいから、このあとメッセとか電話とかおやすみとかいらないから。

「……わかった」
『さよなら。悠斗くん』

 プツ

 という音と共に、電話が切れました。

 悠斗くんは黙ったままです。

 ふふふ…

 あはは……

 はははははははははははは!!!!!!

 勝った!!

 私は勝ちました!!

 明日の六時。きっと藤崎さんは悠斗くんに別れを告げるでしょう。

 そして、そのまま学校へと向かうはずです。

 そこには、打ちひしがれている悠斗くんが一人残されます。

 そこに私が出ていって彼を慰めます。

 最初は拒絶されるかもしれませんが、関係ありません。

 もう、悠斗くんはフリーなのですから!!

 じっくり時間をかけていきましょう。


 私は自室の扉を開け、明日は寝坊しないようにもう就寝しようと決めました。

 寝付きの悪い私ですが、今夜はぐっすり寝れそうですね。


 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!
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