学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第1章

第七話 ③ ~早朝の教室で黒瀬さんと読書をしました~

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 第七話  ③




 朱里さんと別れたあと、俺は一人で教室へと向かう。

 教室の扉を開けると、やはり誰も居なかった。

 昨日同様に、ひとりきりの教室を堪能する。

 ゆっくりと自分の席に向かい、本日使う教科書とノートをカバンから取り出して机の中にしまう。

 そして、まだ手をつけてないライトノベルをカバンから一冊取り出して机の上に置く。

 昨日キリのいいところまで読んだ、ライトノベルの第七巻だ。主人公がヒロインの気持ちに気が付いた。その後の展開がこの巻で描かれている。
 ダブルヒロインで描かれているこの作品。
 主人公がどっちのヒロインを選ぶのか、その展開に心が踊る。

「さて、俺はみみみ推しなんだよな……」

 なんて事を呟きながら読み進めていく。



 ……。

 …………。

 ………………。

 うぅ、みみみ……めっちゃいい女……っ!!


 そんなことを感想を抱きながら読んでいると、

 ガラリ

 と教室の扉が開く

「おはようございます。桐崎くん」
「おはよう、黒瀬さん」

 なんとなく想像していた。
 多分、このくらいの時間に来るだろうと。

「昨日同様早いですね」
「うん。まぁね」
「読んでいるのはライトノベルですね」
「うん。昨日結構いいところまで読んだから、その続きだね」

 俺がそこまで言ったところで、黒瀬さんがスッと近づいてくる。

 そして、俺の顔をじぃっと見つめ、目の下あたりに指を触れる

「く、黒瀬さん……っ!!」

 突然近づくその距離に、俺は顔を赤くしながら後ずさる。

「桐崎くん。目の下にくまが出来ています。私の忠告を無視して夜更かししましたね?」
「ぐぅ……」

 朱里さんにも気が付かれなかった夜更かしが、黒瀬さんにはバレてしまっていた。

「夜更かしは健康によくありませんよ。まぁ、私たち女性より、男性にとっては夜更かしに対しての危機感みたいなものは少ないのでしょうが」
「へぇ、黒瀬さんは何時に寝てるの?」
「私は桐崎くんにメッセージをした後勉強をして寝ました。二十三時には寝てます。五時には起きてるので、六時間程は寝るようにしてます」
「早い」
「いえ、私は遅い方ですよ?本来は美容の為には七から八時間が理想だそうです」
「黒瀬さんも美容とか気にするんだ」

 俺のその迂闊なひとことに、黒瀬さんの目がジトりと形を変える。

「桐崎くん。あなたは私をなんだと思ってるんですか?」

 私だって、美容の為に努力します。お化粧をしたり、自分を綺麗に見せるための行為には時間をかけます。

 と、言う黒瀬さん。

 なるほど、やはりその美しさは普段の努力あってこそだったんだな。

「ごめんね、黒瀬さん。失言だった。発言を取り消すよ。黒瀬さんの綺麗さは普段の努力の上にあったんだね」

 と、俺が言うと

「き、綺麗……わ、わかればいいんです……っ!!」

 と、黒瀬さんはぷぃっと赤く染った顔を背ける。

「そ、それで桐崎くん!!」

 貸していただけるライトノベルはどちらですかね?

 と、話を変えるように黒瀬さんが切り出してくる。

「あぁ、用意してきたよ。これだね」

 俺はそう言うと、カバンの中からライトノベルを入れた紙袋を取り出す。

「わぁ……五冊も貸していただけるのですか?」

 目を輝かせながら中身を確認する黒瀬さん。
 興味津々だ。

「ライトノベルは一冊の文量がそれほど多くないから、黒瀬さんみたいに文字を読むことに慣れてる人なら一冊二時間くらいで読めるよ」
「いえ、せっかく桐崎くんに貸していただいたんです。じっくり読み進めていきます」

 紙袋を大切そうにギュッと抱きしめながら、黒瀬さんはそう言った。

 喜んでもらえて何よりだ。

 そして、俺は再びライトノベルに目を落とす。

「それじゃあ黒瀬さん。俺はまた読書に戻るよ」
「はい。桐崎くん。私もさっそく貸していただいたライトノベルを読んでみようと思います」

 そう言って黒瀬さんはカバンの横にあるポケットから、花柄の栞を取り出す。

「素敵な栞だね」
「はい。小学生の時に作ったものを使ってるんです」

 黒瀬さんはそう言うと、紙袋の中から一冊のライトノベルを取りだし、栞を最初のページに挟む。

「多少汚しても構わないからね?そう言うの、気にしないし」
「いえ、貸していただける以上は決して汚すことの無いように大切にして読みます」

 黒瀬さんはそう言うと、砂糖たっぷりのラブコメライトノベルを読み進めていった。

 楽しんで貰えたらいいな。

 そう思い、俺は黒瀬さんから視線を外し、ライトノベルの世界へと戻って行った。











 学年首席で聖女様と呼ばれる美少女と、学年次席で女子人気がそれなりにある男。
 二人は同じクラスの学級委員。
 更には隣合う席。
 誰も居ない朝の教室。
 そんな状況で並んで読書をする。

 その光景が、他人から見たらどんな憶測を呼ぶかなんて、俺はその時全く考えていなかったんだ。
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