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第1章
第七話 ② ~早朝の通学路で妖精と出会いました~
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第七話 ②
『おはよう!!今朱里さんの家の前に到着したよ!!』
電車を乗り継ぎ、駅から自転車を走らせる。
時刻は六時半少し前。
俺は朱里さんの家の前に到着すると、彼女に向けてメッセージを飛ばした。
『わかった!!今行くね!!』
俺のスマホに彼女からのメッセージが届いた数十秒後。
玄関の扉がガチャリと開き、朱里さんが姿を現す。
「おはよう、悠斗くん!!」
「おはよう、朱里さん」
……少し、空元気って感じがする。
でも、少しは落ち着いたかな?
「どうしたの、悠斗くん?」
「ううん、何でもないよ。今日は天気が良いなぁって思ってた」
少しだけ訝しげな彼女にそう返す。
いけない、いけない。
俺の方が表情に出してどうする。
一番あのことを気にしてるのは朱里さんだぞ。
俺は気を引き締める。
「それじゃあ行こうか悠斗くん!!」
「おっけー」
自転車に股がった朱里さんと一緒に、俺は学校へと向かった。
「そう言えばさ、悠斗くん」
「なに、朱里さん?」
学校へと向かう途中。朱里さんが問いかけてくる。
「悠斗くんがやってたトレーニングって今も続けてるの?」
「あぁ、それね。うん。少し変化はしてるけど、トレーニング自体は続けてるよ」
俺はそう答えると、今も続けてるトレーニングの一部を話す。
「前は早朝にランニングで一時間程走ってたけど、これは今はしてないよ。こうして朱里さんと通学したからったからね」
「一時間!!??」
「え?うん。まぁ運動部の人に比べたら全然少ないけど……」
「そ、そうなんだ」
まぁ、最初の頃はだいぶ歩いちゃったけど、一時間動き続けるってのはずっと続けてきた。
「それで、今も続けてるのはコンビニのバイトと、風呂上がりの体幹トレーニングかな」
「体幹鍛えてるんだ!!本格的だね!!」
「うん。とりあえず、健に言われたのは腕立てと腹筋と背筋とスクワットを100回ワンセットでそれを5回やれって言われた」
「え?」
「その後はなんかバットの素振りが300回って書いてあったから、わざわざ素振り用の木のバットを買って振ってたよ。ほら、バッティングセンターで『それなりに』打てたのは素振りのお陰だね」
「絶対そんなの体幹トレーニングじゃない……そんなの初心者にいきなり押し付ける武藤くん……馬鹿でしょ……」
「最初は辛くてね、とても全部はこなせなかったんだよね。でも慣れてきたら予習に当ててる時間までには何とかこなしてたよ」
「その後勉強までしてるの!!??」
「え?うん。だって身体を鍛えた代わりにバカになりましたじゃ、情けないでしょ?だから毎日一時間は予習に当ててる」
「な、何時に寝てるの?」
「三時くらいかな」
「そ、そんな遅い時間なんだ……」
「それで、次の日はランニングがあるから六時には起きてたね」
「そ、それを半年続けたんだ」
「うん。まぁ、趣味に使ってた時間をトレーニングに当てたってだけだから。元々睡眠時間は少ない方だったし」
「え、てことはさ悠斗くん」
今日の睡眠時間っていくつなの?
「あぁ、大丈夫大丈夫。五時起きだから、トレーニングはいつもより減らして二時には寝てるよ。三時間寝れば俺は平気なタイプだから」
「それでも私より三時間遅い……」
「あはは……」
実は昨日はラノベがいい感じになってて、寝たのが四時だってのは秘密にしておこう。黒瀬さんに夜更かしするなって言われたのは無視しちゃったなぁ
なんて事を考えながら自転車を走らせてると、そろそろ学校かなぁというところで、
「あのね、悠斗くん」
「なに、朱里さん」
少しだけ神妙な顔をする朱里さん。
何を言おうとしてるのか、俺は察した。
「学級委員、なれなくてごめんね。でも、体育祭の実行委員って場所を用意してくれてありがとう」
「うん。学級委員になれなくても気にしなくていいよ。なんて言葉だけじゃ、朱里さんにはなんの慰めにもならないってわかってたから、行動で示した」
「えへへ、ありがとう。やっぱりあれって大変だったんじゃない?」
「まぁ、山野先生には色々と突っ込まれたけど、まぁ想定内だよ」
「あ、やっぱりあの後咲ちゃん先生に呼ばれてたんだ。なんて言われたの?」
俺は、黒瀬さんと仲良くしろって言われたのは彼女に伏せて、それ以外を話す。
「理由を聞かれたからそれを話した感じだね。その、朱里さんと付き合ってるって話もしちゃってね」
「あぁ、まぁ、それは仕方ないよね」
「ははは、ごめんね。その、彼女と一緒に学級委員をしたかったんだけど、出来なくなったから少し強引だし違う委員だけど、同じになれるようにしました。って言った」
「そうなんだ。咲ちゃん先生はなんて?」
「ははは、笑われたよ。なんて言うか、俺たちが付き合ってるのもわかってたみたい。その上で俺の口から理由を話させたかったみたいだね。あの先生、そういう所あるから」
「やっぱり咲ちゃん先生って生徒のことよく見てるね!!」
「うん。いい先生だと思うよ」
そうこうしてる内に、学校へと到着する。
駐輪場に自転車を停めると、朱里さんは体育館へと向かう。俺はそのまま教室だ。
「悠斗くん!!」
「なに、朱里さん」
「私、実行委員頑張るからね!!」
また後でね!!
彼女はそう言うと、俺に向かって手を振りながら体育館へと走っていった。
その後ろ姿を見ながら、
少しは空元気ではなくなったかな?
と安心感を覚えた。
『おはよう!!今朱里さんの家の前に到着したよ!!』
電車を乗り継ぎ、駅から自転車を走らせる。
時刻は六時半少し前。
俺は朱里さんの家の前に到着すると、彼女に向けてメッセージを飛ばした。
『わかった!!今行くね!!』
俺のスマホに彼女からのメッセージが届いた数十秒後。
玄関の扉がガチャリと開き、朱里さんが姿を現す。
「おはよう、悠斗くん!!」
「おはよう、朱里さん」
……少し、空元気って感じがする。
でも、少しは落ち着いたかな?
「どうしたの、悠斗くん?」
「ううん、何でもないよ。今日は天気が良いなぁって思ってた」
少しだけ訝しげな彼女にそう返す。
いけない、いけない。
俺の方が表情に出してどうする。
一番あのことを気にしてるのは朱里さんだぞ。
俺は気を引き締める。
「それじゃあ行こうか悠斗くん!!」
「おっけー」
自転車に股がった朱里さんと一緒に、俺は学校へと向かった。
「そう言えばさ、悠斗くん」
「なに、朱里さん?」
学校へと向かう途中。朱里さんが問いかけてくる。
「悠斗くんがやってたトレーニングって今も続けてるの?」
「あぁ、それね。うん。少し変化はしてるけど、トレーニング自体は続けてるよ」
俺はそう答えると、今も続けてるトレーニングの一部を話す。
「前は早朝にランニングで一時間程走ってたけど、これは今はしてないよ。こうして朱里さんと通学したからったからね」
「一時間!!??」
「え?うん。まぁ運動部の人に比べたら全然少ないけど……」
「そ、そうなんだ」
まぁ、最初の頃はだいぶ歩いちゃったけど、一時間動き続けるってのはずっと続けてきた。
「それで、今も続けてるのはコンビニのバイトと、風呂上がりの体幹トレーニングかな」
「体幹鍛えてるんだ!!本格的だね!!」
「うん。とりあえず、健に言われたのは腕立てと腹筋と背筋とスクワットを100回ワンセットでそれを5回やれって言われた」
「え?」
「その後はなんかバットの素振りが300回って書いてあったから、わざわざ素振り用の木のバットを買って振ってたよ。ほら、バッティングセンターで『それなりに』打てたのは素振りのお陰だね」
「絶対そんなの体幹トレーニングじゃない……そんなの初心者にいきなり押し付ける武藤くん……馬鹿でしょ……」
「最初は辛くてね、とても全部はこなせなかったんだよね。でも慣れてきたら予習に当ててる時間までには何とかこなしてたよ」
「その後勉強までしてるの!!??」
「え?うん。だって身体を鍛えた代わりにバカになりましたじゃ、情けないでしょ?だから毎日一時間は予習に当ててる」
「な、何時に寝てるの?」
「三時くらいかな」
「そ、そんな遅い時間なんだ……」
「それで、次の日はランニングがあるから六時には起きてたね」
「そ、それを半年続けたんだ」
「うん。まぁ、趣味に使ってた時間をトレーニングに当てたってだけだから。元々睡眠時間は少ない方だったし」
「え、てことはさ悠斗くん」
今日の睡眠時間っていくつなの?
「あぁ、大丈夫大丈夫。五時起きだから、トレーニングはいつもより減らして二時には寝てるよ。三時間寝れば俺は平気なタイプだから」
「それでも私より三時間遅い……」
「あはは……」
実は昨日はラノベがいい感じになってて、寝たのが四時だってのは秘密にしておこう。黒瀬さんに夜更かしするなって言われたのは無視しちゃったなぁ
なんて事を考えながら自転車を走らせてると、そろそろ学校かなぁというところで、
「あのね、悠斗くん」
「なに、朱里さん」
少しだけ神妙な顔をする朱里さん。
何を言おうとしてるのか、俺は察した。
「学級委員、なれなくてごめんね。でも、体育祭の実行委員って場所を用意してくれてありがとう」
「うん。学級委員になれなくても気にしなくていいよ。なんて言葉だけじゃ、朱里さんにはなんの慰めにもならないってわかってたから、行動で示した」
「えへへ、ありがとう。やっぱりあれって大変だったんじゃない?」
「まぁ、山野先生には色々と突っ込まれたけど、まぁ想定内だよ」
「あ、やっぱりあの後咲ちゃん先生に呼ばれてたんだ。なんて言われたの?」
俺は、黒瀬さんと仲良くしろって言われたのは彼女に伏せて、それ以外を話す。
「理由を聞かれたからそれを話した感じだね。その、朱里さんと付き合ってるって話もしちゃってね」
「あぁ、まぁ、それは仕方ないよね」
「ははは、ごめんね。その、彼女と一緒に学級委員をしたかったんだけど、出来なくなったから少し強引だし違う委員だけど、同じになれるようにしました。って言った」
「そうなんだ。咲ちゃん先生はなんて?」
「ははは、笑われたよ。なんて言うか、俺たちが付き合ってるのもわかってたみたい。その上で俺の口から理由を話させたかったみたいだね。あの先生、そういう所あるから」
「やっぱり咲ちゃん先生って生徒のことよく見てるね!!」
「うん。いい先生だと思うよ」
そうこうしてる内に、学校へと到着する。
駐輪場に自転車を停めると、朱里さんは体育館へと向かう。俺はそのまま教室だ。
「悠斗くん!!」
「なに、朱里さん」
「私、実行委員頑張るからね!!」
また後でね!!
彼女はそう言うと、俺に向かって手を振りながら体育館へと走っていった。
その後ろ姿を見ながら、
少しは空元気ではなくなったかな?
と安心感を覚えた。
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