学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第1章

第六話 ⑩ ~先生との会話。黒瀬さんとは.....仲良くしようと思います~

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 第六話  ⑩




「おい、桐崎。なんでお前の方が遅いんだ?」
「すみません。ちょっと色んな人に捕まって……」

 進路指導室の前にたどり着くと、既に山野先生が待っていた。
 鍵は俺が持っていたので待ちぼうけをさせてしまった感じだ。

「はぁ、まぁいい。早く開けろ」
「はい」

 俺はそう言って部屋の鍵を開ける。

 扉を開けると先生が先ず入る。
 そして俺が入り、いつものように扉に鍵をかける。

「桐崎、吸うからな」
「いいですよ。気にしないでください」

 先生はそう言うとポケットから電子ではない紙のタバコを取り出して火をつける。
 電子だと吸った気になんないんだよ。と言っていた。

「さて、桐崎。私に何か言いたいこと、言わなければならないことがあるんじゃないか?」

 ふー……と煙を俺に当たらないように上に吐きながら、山野先生が切り出す。

「越権行為を認めていただきありがとうございます」
「違うだろ?何故それをしたのかを話せと言っているんだ。大丈夫。私はわかってる。ただ、お前の口から話して欲しいだけだ」

 その言葉に俺は、この先生はほんとに良く見てると思った。

「藤崎朱里さんと交際をしています。彼女と共に学級委員をやろうと計画しておりましたが、黒瀬さんというイレギュラーがあり、計画が頓挫しました。あの様子の彼女は流石に見てられなかったので、せめて一緒に委員ができるよう、体育祭実行委員というポジションを用意しました」
「よし。いいぞ。全部話したな」
「はい。それで、俺の越権行為を受け入れたんです。俺は一体何をすればいいですか?」

 この人とはいつもそう言うやり取りをしている。
 何かをしてもらう代わりに何かをする。
 何かをするから何かをしてもらう。
 一年間続けて来たことだった。

「黒瀬と仲良くしろ」
「……何故ですか?」

 朱里さんと交際をしている話は既にした。
 その上で何故それを?

 そんな俺の疑問に答えるように、先生が答える。

「去年のアイツはずっと一人でいた。それも『聖女様』だなんて言われてな」
「はい」
「そもそもあいつは他人に対して期待をしていない。まぁそう言う家庭の事情もあるんだが、その話はいいだろう。なぁ桐崎」

 ひとりで居る。という事は、イコールひとりがいい。では無いんだ。

「あいつはあぁ見えて寂しがり屋だ。人との会話に飢えていると言っても良い」

 そんなあいつの心の隙間を埋めてやってくれ。

 そんなことを言ってくる。

「……困ります」
「何故だ?」
「もし彼女に俺が好かれたらどうするんですか?」
「ほぅ?ずいぶんと自信過剰なセリフだな」
「いえ、そう言う可能性を示唆しただけです」
「まぁ、自分の心の隙間を埋めてくれる男に惚れるなんてのはよくある話だからな」

 そう言うと、山野先生はタバコをもみ消す。

「ならこうしよう」
「……聞きます」
「少しだけ、気にかけてやってくれ」
「それなら、もともとそうするつもりでしたので平気です」

 俺は彼女が学校で過ごしやすいようにしたい。そう思ってましたから。

 と、続けた。

「藤崎はなんて?」
「了解してくれてます」

 ただ、あまりその言葉を過信しないようにしてますが。

「まぁ、彼氏があんな美少女とよろしくやってたらそりゃあな」
「でも俺は朱里さん一筋ですので」
「ははは!!ここで惚気を入れてくるか」

 先生はそう言うと立ち上がる。

「あまり女を泣かせるなよ?」

「頑張ります」

 俺はそう言うと、椅子から立ち上がり扉の鍵を開ける。

「帰ります」
「あぁ、気をつけて」

 私はもう一本吸ったらここを出るよ。

 そういう先生を部屋に残し、俺はその場を後にした。

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