学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
42 / 292
第1章

第六話 ⑧ ~LHR・なんとか彼女と同じ委員を出来るようにしました~

しおりを挟む
 第六話  ⑧




「はい。結果が出たようですね」

 俺がそう言うと、二人が頷く。

「私が学級委員に選ばれました」

 黒瀬さんはそう言うと、『学級委員』と書かれたくじを俺に向けてくる。

「では、皆さん。学級委員を引き受けてくれた黒瀬さんに拍手をお願いします」

 俺のその言葉に、誰よりも早く拍手をしたのは、朱里さんだった。

 悔しいだろうし、悲しかっただろうし、泣きたい気持ちだろうし、そう言うのを全部受け止めて、彼女は拍手をしていた。

 俺はそんな彼女を見て、一つのプランを自分の中で組み立てていく。

 大丈夫だよとは言えないけど、朱里さんと一緒に『委員』をやる方法はまだある。それを提示して実行させるのが、俺の仕事だ。

 そんな思惑は表に出さないようにして、俺は黒瀬さんに声を掛ける。

「黒瀬さん。早速だけど前に来てもらって書記をお願いしても良いかな?」

「はい。かしこまりました」

 彼女はそう言うと席を立ち、朱里さんに一礼してからこちらに来た。

 そして、黒板に

 学級委員  桐崎悠斗・黒瀬詩織

 と記入した。

 とても綺麗な文字だった。

「黒瀬さんありがとうございます。ではこれから各委員を決めていきます。『基本は』各委員、男女一名ずつの選出になります。自分のように去年の経験を活かした委員をやるのも良いですし、黒瀬さんのように新しいことにチャレンジをするのも良いと思います。ですが、我々は高校二年生です。部活動では既にレギュラーだったり、レギュラーが目前と言う人も少なくないです。そう言う方が所属する委員には『自分がフォロー』に入ります」

 そのための帰宅部のエースですから。

 俺がそう言うとクラスに笑いが起きる。

「ではまず図書委員から……」

 俺が司会進行をして、決定事項を黒瀬さんが黒板に記入する。
 まるで長年連れそった夫婦のように、上手い具合にハマっているような気がしてしまった。

 各委員の選出は『思った通り』早くに決まった。

 クラスを見た時に『カップル』が多いクラスだと思っていた。
 それも主に『去年の委員を共にした人同士』と言うものだった。

 となれば、自分らのように去年と同じ委員を恋人同士でやりたいと思うのは必然だろう。

 黒板には男女のカップルで形成された各委員がズラっと並んだ。

 俺は時計を見る。
 ロングホームルームはまだ時間が残ってる。
 よし、計算通りだ。

 先程から元気の無い朱里さん。
 絶対に俺が助けてみせる。

「さて、皆さん。スムーズな委員の選出にご協力いただき、ありがとうございます。イチャイチャし過ぎないようにしてくださいね?」

 と俺は冗談ぽく言う。
 みんな何となくわかって居たのでクスクスと笑いが起きる。

「山野先生」
「なんだ?」

 俺は計画を実行するために、先生に問いかける。

「皆の協力で早く委員がきまりました。なので、残った時間を使って、来週のホームルームで決める予定の『男女二名ずつの体育祭実行委員』を決めようと思います」

 俺のその言葉に朱里さんが、ハッ!!っと顔を上げる。

 俺はそんな朱里さんに軽くウィンクを飛ばす。

「来月の五月には体育祭があるので、来週には委員を決めるようです。うちのクラスは優秀なので、今週の内に決めておきましょう」

 そう提案する。

「いいぞ、桐崎。と言うか、そう切り出すという事は、もう案があるんだろ?」

 と、先生がニヤっと笑う。

「はい。そうですね。俺が推薦する形になりますが、クラスのみんなにはそれを承認してもらう感じですね」

 俺はそう言うと、実行委員へ推薦するクラスメイトを記入した紙を黒瀬さんに渡す。

「桐崎くんは……優しい人ですね……」

 黒瀬さんは小さくそう呟くと、黒板に記入していった。



 体育祭実行委員  武藤健・佐藤優子・桐崎悠斗・藤崎朱里


 名前が記入されたことを確認し、俺は声を上げる。

「はい。ここに記入された人に実行委員をお願いしたいと思います。ここの人達は、俺以外、『各委員に所属していない』『体育が得意』『明るくコミュニケーション能力に長けている』と実行委員に必要な能力を持ち、状況的にも恵まれてます。しかし、先程俺は言いました。『レギュラーもしくは、それに準ずる人においては自分がフォローに入る』です。言葉の責任はとりますし、数学の根岸先生曰く、俺は『健の保護者』らしいので、暴走しがちな奴のストッパーになろうと思います」

 みんなに笑いが起きる。

 朱里さんも笑ってくれている。

 良かった……笑顔が少しは戻ったかな。


「健、佐藤さん、朱里さん、引き受けてくれないかな?」

「いいぜ!!」
「いーんちょーのお願いならしかたないなー」
「うん。私も頑張るよ」

 三人はすぐに首を縦に振る。

 それを見て、俺は

「では皆さん。実行委員に賛成の方は拍手をお願いします!!」

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!!!!!!!

 今までで一番大きな拍手に教室が包まれた。

 黒瀬さんも拍手をしていた。

 良かった。これで少しは朱里さんのフォローが出来た。

 俺は安堵の息を吐きながら、少しだけ黒板にもたれかかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」 春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。 そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか) 今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。 「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」 そう言う俺に、 「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」 と笑顔で言い返して来た。 「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」 「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」 パタン 俺は玄関の扉を閉めた。 すると直ぐに バンバンバン!!!! と扉を叩く音 『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』 そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。 はぁ……勘弁してくれよ…… 近所の人に誤解されるだろ…… 俺はため息をつきながら玄関を開ける。 そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。 腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...