41 / 292
第1章
第六話 ⑦ ~LHR・黒瀬さんが予想外の行動に出ました~
しおりを挟む
第六話 ⑦
「武藤くんの叫び声が体育館まで聞こえてきてたよ」
体育の授業を終え、着替えを済ませた俺に朱里さんが笑いながら言ってきた。
「奴の打率十割に遂にピリオドを打ってやったよ」
「お、悠斗くん。それはすごいね」
「まぁ、右打席だったけどね。次は本気の左打席を抑えてみせるよ」
「おい、悠斗。帰宅部ってのは嘘だろ?」
「何言ってんだよ、健。俺はお前に言われた初心者向けのトレーニングをしてるだけだぞ?」
「初心者向け?何言ってんだ悠斗。あれは俺が考案した、」
さいきょーのおとこになれるとれーにんぐ。だぞ?
「普通のやつなら根を上げてギブするレベルだ。それを半年以上やってるならそりゃあ変わるだろ?」
「お、お前……だからあれは最初の頃ホントきつかったのか……今はまぁそれなりにこなせるけど」
「それなりにこなせるってのがもう既にあれなんだがな」
健とそんな会話をしていると、
「うーし、お前ら席につけー。そろそろロングホームルームの時間だぞ」
山野先生が教室に入ってくる。
はーい。と言って席に着くと、チャイムが鳴った。
「よし。それでは朝に話したように女子の学級委員と各委員を決めて行くぞ。桐崎。司会進行はお前がやれ」
「はーい」
このくらいの使いっ走りはいつものことだ。
俺は席を立つと教壇へと向かう。
そして、
「はい。では最初に。俺が学級委員で賛成の方は拍手をください。ここで拍手が少なければ別の方に山野先生の使いっ走……」
パチパチパチパチパチパチ!!!!!!
「はい。皆の気持ちは良くわかりました!!おい、健!!お前の拍手が一番でけぇな!!では、今年も頑張らせていただきます!!」
俺はやけくそのようにそう言うと、
「では、俺の仲間になりたい女子の方は挙手をお願いします。居なければ山野先生が大好きな『クジ引き』になります。ちなみに、あまり無いかと思いますが、複数名いた場合もクジ引きになります」
では、女子の学級委員に立候補したい方は挙手をお願いします。
俺はそう言うと、前を向く。
「……え?」
そこには、手を挙げる朱里さんと
「黒瀬さん……なんで……」
呆然とした表情で問いかける朱里さん。
お、俺も同じ気持ちだ。
多分。クラスのみんなも同じだろう。
教室が少しざわついている。
「藤崎さん。大変申し訳ございません。桐崎くんとお話をしていたのは知っていましたが、学級委員に興味が出たので立候補させていただきました」
凛とした表情で理由を説明する黒瀬さんが居た。
「はい。皆さん静粛に。俺も少し驚きましたが、ここは一旦静かになりましょう」
手をパンパンと叩き皆の視線を自分に集める。
そして、俺がそう言うと、みんなは少し静かになった。
「はい。皆さんご協力ありがとうございます。まずは立候補して頂いた黒瀬さん、朱里さん、ありがとうございます。ですが、学級委員は男子一名、女子一名です。残念ながら俺が降りることで二人が学級委員になる。という訳には行きません」
俺は残念そうに首を振る。
「ですので、先程も言ったように、お二人にはくじを引いてもらいます。えーと。こういうこともあろうかと、各委員を書いたくじを用意してあります。そこには学級委員も当然あります」
俺はそう言うと、『白紙』のくじと『学級委員』と書かれたくじのふたつを二人に見せる。
そしてそれを二つに折る。
そしてそれを箱の中に入れる。
「どちらも同じように折りました。二人にはこれを引いてもらい、学級委員と書かれたくじを引いた人が、女子の学級委員です」
俺は軽く箱を振る。
「どっちから先に引きますか?」
俺がそう問いかけると、
「私が先でいいかな?」
「いいですよ。残り物には福がある。ということわざもありますし」
「先手必勝って言葉が私は好きだから」
「いいですね。そういう返し、私は嫌いじゃありません」
朱里さんが先に引くことになった。
朱里さんは席を立ち、俺の元に来る。
「どうぞ」
「悠斗くん。私が引くから」
朱里さんはそう宣言して、一枚のくじを引く。
「まだ見ないでね?」
「うん」
そう言って朱里さんは中身を見ないまま、席に戻る。
そして、次は黒瀬さんが俺の元に来る。
「どうぞ」
「ありがとうございます。桐崎くん、先に謝って起きます」
あなた達ふたりの邪魔をして申し訳ございません。
と、
「ですが、私にも理由がありますので」
「わかった。ちなみに、どっちがなったとしても、俺は全力を出すって約束するよ」
「ありがとうございます」
黒瀬さんはそう言うと残ったくじを引き抜き、中身を見ないようにして席に戻った。
「では、二人とも、中を確認してください」
どうぞ。
俺がそう言うと中を見る二人。
「……っ!!」
「……ふふ、そうですか」
悔しそうな、訪れた絶望を噛み締めるような、そんな表情の朱里さんと、
与えられたその運命に微笑んだ黒瀬さん
どっちが何を引いたのかは、明白だった。
「……ごめん、悠斗くん」
そう小さく呟いた朱里さんの声が、俺の耳にはやけに大きく聞こえてきた。
「武藤くんの叫び声が体育館まで聞こえてきてたよ」
体育の授業を終え、着替えを済ませた俺に朱里さんが笑いながら言ってきた。
「奴の打率十割に遂にピリオドを打ってやったよ」
「お、悠斗くん。それはすごいね」
「まぁ、右打席だったけどね。次は本気の左打席を抑えてみせるよ」
「おい、悠斗。帰宅部ってのは嘘だろ?」
「何言ってんだよ、健。俺はお前に言われた初心者向けのトレーニングをしてるだけだぞ?」
「初心者向け?何言ってんだ悠斗。あれは俺が考案した、」
さいきょーのおとこになれるとれーにんぐ。だぞ?
「普通のやつなら根を上げてギブするレベルだ。それを半年以上やってるならそりゃあ変わるだろ?」
「お、お前……だからあれは最初の頃ホントきつかったのか……今はまぁそれなりにこなせるけど」
「それなりにこなせるってのがもう既にあれなんだがな」
健とそんな会話をしていると、
「うーし、お前ら席につけー。そろそろロングホームルームの時間だぞ」
山野先生が教室に入ってくる。
はーい。と言って席に着くと、チャイムが鳴った。
「よし。それでは朝に話したように女子の学級委員と各委員を決めて行くぞ。桐崎。司会進行はお前がやれ」
「はーい」
このくらいの使いっ走りはいつものことだ。
俺は席を立つと教壇へと向かう。
そして、
「はい。では最初に。俺が学級委員で賛成の方は拍手をください。ここで拍手が少なければ別の方に山野先生の使いっ走……」
パチパチパチパチパチパチ!!!!!!
「はい。皆の気持ちは良くわかりました!!おい、健!!お前の拍手が一番でけぇな!!では、今年も頑張らせていただきます!!」
俺はやけくそのようにそう言うと、
「では、俺の仲間になりたい女子の方は挙手をお願いします。居なければ山野先生が大好きな『クジ引き』になります。ちなみに、あまり無いかと思いますが、複数名いた場合もクジ引きになります」
では、女子の学級委員に立候補したい方は挙手をお願いします。
俺はそう言うと、前を向く。
「……え?」
そこには、手を挙げる朱里さんと
「黒瀬さん……なんで……」
呆然とした表情で問いかける朱里さん。
お、俺も同じ気持ちだ。
多分。クラスのみんなも同じだろう。
教室が少しざわついている。
「藤崎さん。大変申し訳ございません。桐崎くんとお話をしていたのは知っていましたが、学級委員に興味が出たので立候補させていただきました」
凛とした表情で理由を説明する黒瀬さんが居た。
「はい。皆さん静粛に。俺も少し驚きましたが、ここは一旦静かになりましょう」
手をパンパンと叩き皆の視線を自分に集める。
そして、俺がそう言うと、みんなは少し静かになった。
「はい。皆さんご協力ありがとうございます。まずは立候補して頂いた黒瀬さん、朱里さん、ありがとうございます。ですが、学級委員は男子一名、女子一名です。残念ながら俺が降りることで二人が学級委員になる。という訳には行きません」
俺は残念そうに首を振る。
「ですので、先程も言ったように、お二人にはくじを引いてもらいます。えーと。こういうこともあろうかと、各委員を書いたくじを用意してあります。そこには学級委員も当然あります」
俺はそう言うと、『白紙』のくじと『学級委員』と書かれたくじのふたつを二人に見せる。
そしてそれを二つに折る。
そしてそれを箱の中に入れる。
「どちらも同じように折りました。二人にはこれを引いてもらい、学級委員と書かれたくじを引いた人が、女子の学級委員です」
俺は軽く箱を振る。
「どっちから先に引きますか?」
俺がそう問いかけると、
「私が先でいいかな?」
「いいですよ。残り物には福がある。ということわざもありますし」
「先手必勝って言葉が私は好きだから」
「いいですね。そういう返し、私は嫌いじゃありません」
朱里さんが先に引くことになった。
朱里さんは席を立ち、俺の元に来る。
「どうぞ」
「悠斗くん。私が引くから」
朱里さんはそう宣言して、一枚のくじを引く。
「まだ見ないでね?」
「うん」
そう言って朱里さんは中身を見ないまま、席に戻る。
そして、次は黒瀬さんが俺の元に来る。
「どうぞ」
「ありがとうございます。桐崎くん、先に謝って起きます」
あなた達ふたりの邪魔をして申し訳ございません。
と、
「ですが、私にも理由がありますので」
「わかった。ちなみに、どっちがなったとしても、俺は全力を出すって約束するよ」
「ありがとうございます」
黒瀬さんはそう言うと残ったくじを引き抜き、中身を見ないようにして席に戻った。
「では、二人とも、中を確認してください」
どうぞ。
俺がそう言うと中を見る二人。
「……っ!!」
「……ふふ、そうですか」
悔しそうな、訪れた絶望を噛み締めるような、そんな表情の朱里さんと、
与えられたその運命に微笑んだ黒瀬さん
どっちが何を引いたのかは、明白だった。
「……ごめん、悠斗くん」
そう小さく呟いた朱里さんの声が、俺の耳にはやけに大きく聞こえてきた。
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説


十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~
味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」
春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。
そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか)
今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。
「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」
そう言う俺に、
「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」
と笑顔で言い返して来た。
「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」
「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」
パタン
俺は玄関の扉を閉めた。
すると直ぐに
バンバンバン!!!!
と扉を叩く音
『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』
そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。
はぁ……勘弁してくれよ……
近所の人に誤解されるだろ……
俺はため息をつきながら玄関を開ける。
そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。
腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる