学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第1章

第六話 ⑦ ~LHR・黒瀬さんが予想外の行動に出ました~

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 第六話  ⑦





「武藤くんの叫び声が体育館まで聞こえてきてたよ」

 体育の授業を終え、着替えを済ませた俺に朱里さんが笑いながら言ってきた。

「奴の打率十割に遂にピリオドを打ってやったよ」
「お、悠斗くん。それはすごいね」
「まぁ、右打席だったけどね。次は本気の左打席を抑えてみせるよ」
「おい、悠斗。帰宅部ってのは嘘だろ?」
「何言ってんだよ、健。俺はお前に言われた初心者向けのトレーニングをしてるだけだぞ?」
「初心者向け?何言ってんだ悠斗。あれは俺が考案した、」

 さいきょーのおとこになれるとれーにんぐ。だぞ?

「普通のやつなら根を上げてギブするレベルだ。それを半年以上やってるならそりゃあ変わるだろ?」
「お、お前……だからあれは最初の頃ホントきつかったのか……今はまぁそれなりにこなせるけど」
「それなりにこなせるってのがもう既にあれなんだがな」

 健とそんな会話をしていると、

「うーし、お前ら席につけー。そろそろロングホームルームの時間だぞ」

 山野先生が教室に入ってくる。

 はーい。と言って席に着くと、チャイムが鳴った。

「よし。それでは朝に話したように女子の学級委員と各委員を決めて行くぞ。桐崎。司会進行はお前がやれ」
「はーい」

 このくらいの使いっ走りはいつものことだ。

 俺は席を立つと教壇へと向かう。

 そして、

「はい。では最初に。俺が学級委員で賛成の方は拍手をください。ここで拍手が少なければ別の方に山野先生の使いっ走……」

 パチパチパチパチパチパチ!!!!!!

「はい。皆の気持ちは良くわかりました!!おい、健!!お前の拍手が一番でけぇな!!では、今年も頑張らせていただきます!!」

 俺はやけくそのようにそう言うと、

「では、俺の仲間になりたい女子の方は挙手をお願いします。居なければ山野先生が大好きな『クジ引き』になります。ちなみに、あまり無いかと思いますが、複数名いた場合もクジ引きになります」

 では、女子の学級委員に立候補したい方は挙手をお願いします。

 俺はそう言うと、前を向く。

「……え?」

 そこには、手を挙げる朱里さんと

「黒瀬さん……なんで……」

 呆然とした表情で問いかける朱里さん。
 お、俺も同じ気持ちだ。
 多分。クラスのみんなも同じだろう。
 教室が少しざわついている。

「藤崎さん。大変申し訳ございません。桐崎くんとお話をしていたのは知っていましたが、学級委員に興味が出たので立候補させていただきました」

 凛とした表情で理由を説明する黒瀬さんが居た。






「はい。皆さん静粛に。俺も少し驚きましたが、ここは一旦静かになりましょう」

 手をパンパンと叩き皆の視線を自分に集める。
 そして、俺がそう言うと、みんなは少し静かになった。

「はい。皆さんご協力ありがとうございます。まずは立候補して頂いた黒瀬さん、朱里さん、ありがとうございます。ですが、学級委員は男子一名、女子一名です。残念ながら俺が降りることで二人が学級委員になる。という訳には行きません」

 俺は残念そうに首を振る。

「ですので、先程も言ったように、お二人にはくじを引いてもらいます。えーと。こういうこともあろうかと、各委員を書いたくじを用意してあります。そこには学級委員も当然あります」

 俺はそう言うと、『白紙』のくじと『学級委員』と書かれたくじのふたつを二人に見せる。

 そしてそれを二つに折る。
 そしてそれを箱の中に入れる。

「どちらも同じように折りました。二人にはこれを引いてもらい、学級委員と書かれたくじを引いた人が、女子の学級委員です」

 俺は軽く箱を振る。

「どっちから先に引きますか?」

 俺がそう問いかけると、

「私が先でいいかな?」
「いいですよ。残り物には福がある。ということわざもありますし」
「先手必勝って言葉が私は好きだから」
「いいですね。そういう返し、私は嫌いじゃありません」

 朱里さんが先に引くことになった。

 朱里さんは席を立ち、俺の元に来る。

「どうぞ」
「悠斗くん。私が引くから」

 朱里さんはそう宣言して、一枚のくじを引く。

「まだ見ないでね?」
「うん」

 そう言って朱里さんは中身を見ないまま、席に戻る。

 そして、次は黒瀬さんが俺の元に来る。

「どうぞ」
「ありがとうございます。桐崎くん、先に謝って起きます」

 あなた達ふたりの邪魔をして申し訳ございません。

 と、

「ですが、私にも理由がありますので」
「わかった。ちなみに、どっちがなったとしても、俺は全力を出すって約束するよ」
「ありがとうございます」

 黒瀬さんはそう言うと残ったくじを引き抜き、中身を見ないようにして席に戻った。

「では、二人とも、中を確認してください」

 どうぞ。

 俺がそう言うと中を見る二人。

「……っ!!」
「……ふふ、そうですか」

 悔しそうな、訪れた絶望を噛み締めるような、そんな表情の朱里さんと、
 与えられたその運命に微笑んだ黒瀬さん

 どっちが何を引いたのかは、明白だった。

「……ごめん、悠斗くん」

 そう小さく呟いた朱里さんの声が、俺の耳にはやけに大きく聞こえてきた。
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