学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第1章

第五話 ③ ~彼女の覚悟と俺のエゴ~

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 第五話  ③




「あのね、悠斗くん。私から話してもいいかな?」

 自転車を走らせてから少しして、会話のプランを考えていた俺に先んじて朱里さんがそう切り出す。

「うん、いいよ。まずは朱里さんの考えを聞いてから俺の考えを言うよ」

 俺はそう言って首を縦に振る。

「ありがとう。えっとね、まず最初なんだけど、」

 昨日はあんなこと言ってごめんね。

 と、少しだけ申し訳なさそうな表情で言う。

 あんなこと。と言うのは『あまり聖女様と仲良くならないで欲しい』という言葉だろう。

「私ね、悠斗くんが聖女様と仲良くなったら、私の事より聖女様を好きになっちゃうかもって思っちゃったんだ……」

 そんな事ない!!

 と言おうとする俺を朱里さんは手で止める。

「うん、わかってるよ。悠斗くんは私のこと好きでいてくれるって。だけどね、その時考えたんだ……」

 悠斗くんは私に振り向いてもらうために頑張ったけど、私はなにか頑張ったのかな?って

「そう考えた時にね、私も悠斗くんの彼女として、隣に居るに相応しいような女の子になれるように頑張らないとって思ったんだ」

「……」

 俺はその台詞に言葉に出来ないくらいの嬉しさを感じていた。

「私ね、聖女様……ううん。黒瀬さんと仲良くなろうと思う」

 自転車を止め、朱里さんはこちらを振り向く。

 俺もそれに合わせて自転車を止める。

「悠斗くん。君も黒瀬さんと仲良くなって欲しいな。私も黒瀬さんと仲良くなれるように頑張る。例え、悠斗くんにどれだけ黒瀬さんが近付いたとしても、私の所にしっかり戻ってきてもらえるって、言えるようにする」

「わかった」

 俺は朱里さんの覚悟を受け取った。

「ありがとう。その、悠斗くんはなんて言おうとしてたのかな?」

 そう訪ねてくる彼女に俺は、

「いや、そこまで考えてくれてた朱里さんに対して、俺が考えてたことなんて失礼極まりないから、言いたくないかな……」
「ううん。いいよ。言って欲しい」
「……わかった」

 俺はそう言うと、

「俺は、朱里さんに嫌な思いをさせるくらいなら、黒瀬さんと仲良くなるのは辞めようと考えてたんだ」
「うん」
「俺にとって一番大切なのは朱里さんで、正直な話、それ以外はどうでもいいとすら思ってる」
「……うん」
「そう考えた時、黒瀬さんの為に何かをするより朱里さんの心情を慮った方が良いと思ったんだ」

 俺は、誰よりも朱里さんが大好きだから、絶対に傷つけることはしたくないって思ってるから。

「でも、これって俺の思い上がりだったんだなって」
「え?」

 首を傾げる彼女に続ける

「朱里さんは、俺が守らなきゃって思ってたんだ。でも、それって俺の思い上がりでさ、朱里さんは自分の意思でしっかりと考えて答えを出せる人だったんだって」

 その、朱里さんの意思や決意を無視して君を守ろうだなんて、思い上がりも甚だしいよね。

「と、俺は少し恥ずかしい気持ちでいっぱいだよ」

 と、ここまで話すと、朱里さんは少しだけ頬を赤く染めながら、

「でも、悠斗くんが私のこといっぱい好きだってわかったから嬉しいかな」

 と言う。

「……愛が重いって自分でも思うよ」

 そう言うと、俺は自転車を前に向ける。

「さて、そろそろ行こうか。じゃないと朱里さんの朝練に間に合わないかもしれないし」
「うん。じゃあ行こうか」

 そう言って二人で再び自転車を走らせる。

「ねぇ、朱里さん」
「なに、悠斗くん?」
「明日からもこうして一緒に学校に行けないかな?」
「え……悠斗くん、平気なの?」
「早起きは苦手じゃないし、別に教室に早く着いても本とか読んでれば時間はいくらでも潰せるからね」
「ありがとう悠斗くん。嬉しいよ。じゃあ……明日からも一緒に通学しようか!!」
「おっけー!!じゃあ明日からは六時半くらいに朱里さんの家の裏の公園で待ち合わせようか」
「私が駅まで行かなくていいの?」
「流石に朱里さんがそれは遠回りかなって、だから俺がそっちに行くよ」
「わかった、じゃあ明日から六時半に公園で!!」

 俺たちは明日以降も通学を共にする約束をすると、朝より少しだけ軽く感じるようになったペダルを回し、学校へと向かった。









































 この時までは、本当に楽しい時間を、二人で過ごせていたんだ。
 一体俺は、どこで間違えてしまったんだろうか……
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