学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

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第1章

第二話 ⑤ ~初デート・デートの作法は妹に叩き込まれました~

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 第二話  ⑤




「すっごく良かったね!!」

 映画を観終わった彼女が興奮した様子で俺に話しかけてくる。
 うん。やはり良い作品は何回観ても良いもんだ。
 俺はそう思いながら、

「うん。とても良かったね。俺もハラハラドキドキしながら観てたよ」

 と返す。

「じゃあ今観た映画の感想を話し合いながらご飯にしようか?」
「はーい!!」

 俺はそう言うと、遠慮がちに彼女の手を取る。

「それじゃあ行こうか」
「うん!!」

 五分程度歩くと、個人経営の洋食屋さんにたどり着く。

「はい。どうぞ」
「ありがとう」

 店の扉を開け、彼女を先に通す。
 この辺りも雫相手に鍛えられたポイントだ。

「十二時半に予約していた桐崎です。少し早いかもしれませんが、平気ですか?」

 時刻は十二時十五分くらいだった。
 落ち着いた雰囲気の店で、知る人ぞ知る隠れた名店。みたいな店だが、念には念を入れて予約をとっていた。
 せっかくの初デートなのに、昼ごはんでまごついたりしたら台無しだからだ。

「はい。大丈夫ですよ。それでは席まで案内します」
「ありがとうございます」

 快く受け入れてくれた店員さんにお礼を言い、案内された席まで移動する。

 彼女を先に席に座らせてから、自分も腰を下ろす。

 メニューを開いて彼女に見せながら、備え付けられていた手拭きで手を拭う。
 やはり緊張していたのだろう。俺の手は少し…いや、かなり汗ばんでいた。

「お冷です」
「ありがとうございます」

 二人分の水を持ってきた店員さんにお礼を言い、一口だけ水を口に含む。
 キンキンに冷えた水が喉を潤すと、少しだけ緊張がほぐれた。

「ねぇねぇ悠斗くん?」
「なに?朱里さん」

 少しだけ訝しげな表情を浮かべる彼女に、俺は不安を覚える。

 何かやらかしたのだろうか?
 店員さんに横柄な態度はとってない。
 これまでの行動に幻滅されるようなものは無いはずだが……

 なんてことを考えていると、

「随分と女性の扱いに慣れてる気がするぞー。これはもしや私が初めての彼女ってわけじゃないのかな?」

 そんなことを言われる。

「いやいや!!違うよ。その、雫……いや、妹が居てね。中学三年生なんだけど、そいつから結構女性の扱いに対して厳しく叩き込まれてるから……」
「ほぅほぅ妹さん……なるほど、もしかしてオシャレとかも妹さんから?」
「うん。ほら、俺ってかなりオタク趣味で、恥ずかしい話しだけど洋服とか全くわかってなかったから、そういう面では妹にはかなり助けられたよ」

 俺はそう言うと水をまた一口飲む。

「今日も結構からかわれてね。そうそう、妹も朱里さんに会いたがってたから、もし良かったら会ってあげてよ」
「うん、いいよ!!じゃあ機会があったら悠斗くんちに宿題片手に遊びに行こうかな!!」

 と、流し目でそういう彼女に、

「さては妹より、俺の宿題が目当てだな?」

 と、ジト目で返す。

「あははーバレたかー。でも妹さんには会いたいから、呼んでくれると嬉しいな!!」
「それはもちろん!!」
「ありがとう。じゃあそろそろご飯を選ぼうかなぁ……ねぇ悠斗くんのオススメは?」

 そう言われると思っていた俺は、あらかじめ用意していた答えを披露する。

「実はこの店。パスタとかピザが有名なんだけど、予約限定品があってね」
「ほうほう」

 そう、実はこの店を予約していたのはその予約限定を頼むためでもあった。

「予約限定シェフのおすすめとシェフの気まぐれデザートってのがあるから、朱里さんにどうしてもってのが無ければ、それにしようかなって」
「うん!!じゃあそれにしようかな!!」
「了解だ」

 俺はそう言うと、手元にある鈴を鳴らす。

 リーン

 という音が鳴り響くと店員さんがやってくる。

「ご注文をどうぞ」
「予約限定のシェフのおすすめを二つ。あと食後にシェフの気まぐれデザートを二つ」
「お飲み物はいかがなさいますか?」
「あ、やべ。決めてなかった。ごめん朱里さん何飲みたいかな?」
「私はアイスティーでガムシロ多めでお願いします」
「じゃあ俺はアイスコーヒーをブラックで」
「お飲み物はいつ頃お出ししますか?」
「デザートのタイミングでいい?」
「うん、いいよー」
「じゃあ飲み物はデザートと一緒でお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」

 オーダーを確認し終えると、店員さんは裏へと消えていった。

「飲み物忙しちゃってごめんね」
「ううん、そんなん全然いいよー。てか悠斗くん、ブラックコーヒーなんて大人だねぇ」
「いやいや、そんな。甘いもの食べるから、苦いもので中和したいなぁって思っただけだから。あれだよ、和菓子と緑茶みたいな」
「なるほどー私は甘いの好きだからアイスティーにガムシロいっぱいにした!!」
「甘いの好きなんだ?」
「好きだよーと言うか、女の子は多かれ少なかれ甘い物が大好きです!!」
「朱里さんはバスケでいっぱい動いてるから、身体が甘いものを欲してるのかもね」
「ふふふ、あれだけ動いてるからどんだけ甘い物食べても太らないしねーと言うか悠斗くん?」

 少しだけ恥ずかしそうな表情で、彼女が問いかけてくる。

「なに?」
「ちょっと腕触っていいかな?」
「う、腕?まぁ、いいよ」

 そんなこと言ってくるなんて意外だな。
 と思いながらも、俺は右腕を彼女の前に差し出す。

 一年前のヒョロ腕と違い、それなりに鍛えてきた腕を彼女がぺたぺたと触る。
 ちょっとくすぐったいなと思いながらも我慢していると、

「おおーなかなかいい筋肉してるよね。悠斗くん、帰宅部なのに結構鍛えてるよね?なんで?」

 単純に興味本位なのだろう。
 小さく首を傾げる彼女。
 そりゃそうだ、帰宅部なのに筋トレするなんて普通では無いよな。
 でもまぁ、隠す程でも無いし、この際だから言っておくか。

「その、朱里さんに相応しい男になろうって思って、半年くらい前から鍛え始めたんだ」
「……え?」
「オタク趣味で陰キャでヒョロヒョロじゃ相手にされないと思ってさ。その、一念発起して頑張ってきたんだよね」
「……そうなんだ、そう言えばたしかに半年くらい前から随分と印象が変わってきたなぁって。……そのなんか照れるね」

 真っ赤な顔をして俯く彼女。

「好きな人に振り向いてもらえるように頑張りました……」
「……ありがとうございます……」

 と、二人して顔を真っ赤にしていると、

「お待たせしました。予約限定のシェフのおすすめです」

 と、料理が運ばれてきた。

 旬の野菜を贅沢に使ったパスタだった。

「わ、わあ、美味しそう!!」
「じゃ、じゃあ、食べようか」

 いただきます。と二人で声を揃えると、先程までの空気を忘れるかのように料理に舌鼓をうった。
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