学園の聖女様と俺の彼女が修羅場ってる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
2 / 292
第1章

第一話 ① ~半年間好きだった女の子に告白しました~

しおりを挟む
 第一話 ①




「好きです!!俺と付き合ってください!!」

 高校一年も終わり、終業式の日。
 俺は一年間共に学級委員として過ごした彼女、藤崎朱里(ふじさき あかり)に告白した。

 茶色く染めたセミロングの髪型に、バスケ部で鍛えた無駄のない肢体。胸は少し控えめだが、コートを縦横無尽に走る肉付きの良い脚は異性の目を捕らえて離さない。
 性格は明朗快活で男女問わず友達も多い。

 オタク趣味で陰キャ気味の俺にも優しくしてくれて、チョロイン宜しく惚れてしまった。
 少しでも彼女にふさわしい男になろうと、半年前からバイトを始め、筋トレや早朝のランニングで身体を鍛えた。帰宅部だからと言って、だらしない身体では彼女に見向きもされない。
 清潔感やオシャレにも気を配り、自分なりの男磨きを半年かけてやってきた。

 告白が成功すれば薔薇色の春休み。
 失敗すれば漆黒の春休み。

 自分なりにやるだけのことはやってきたつもりだったが、成功するかは微妙だろうと思っていた。
 たとえ振られても気持ちをスッキリさせよう。
 それくらいの心持ちでいた。
 俺の告白を受けた彼女は、少しだけ頬を赤く染めながら言葉を返す。

「桐崎くん以外にも好きな人が居るけど大丈夫?」

 俺以外にも好きな人が居るけど大丈夫?

 どういう意味だろうか……
 二番目に好き。とか言うあのラノベみたいな話なのだろうか?
 首を傾げる俺に彼女が続ける。

「私、聖女様が大好きなの!!あ、でも男の人の中だと桐崎くんが一番好きだよ!!それでもいいなら付き合おう?」

 そう言うと、彼女は右手を前に突き出した。
 なるほど。そう言う意味か。
 俺は少しだけ思案するが、まぁ男の中では俺が一番なわけだし、ある意味『推しのアイドル』みたいなものだろう。
 そう結論を出し、

「宜しくお願いします!!」

 俺はその言葉と共に、彼女の右手を力強く握りしめた。

 これが俺、桐崎悠斗(きりさき ゆうと)に産まれて初めての彼女が出来た瞬間だった。

「それじゃ桐崎くん……ううん、悠斗くん、一緒に帰ろうか!!もちろん、家まで送ってくれるんだよね?」
「もちろんだよ。藤崎さ……
「朱里でいいよ」
「……え?」

 そう言ってふわりと微笑む彼女。
 そう、俺はこの笑顔が好きになったんだ。

「せっかく付き合い始めたんだし、呼び捨てでいいよ?」

 そうは言われてもいきなり呼び捨てはハードルが高い。俺は少し考えたあとに、

「……朱里さんでお願いします」

 と答えた。

「ふふ……悠斗くん、可愛いね!!」
「ぅぐ……」
「まぁ、呼び捨ては慣れてきたらでいいよ!!」

 そう言うと彼女は俺の手を掴み、
「よし!!じゃあ、行こう!!」
 前を向いて歩き出した。

「うん、行こうか。朱里さん」

 少しだけ赤く染まった彼女の耳を見つめながら、俺はこの付き合いがきっとうまく行くだろうと、この時はそう思っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」 春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。 そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか) 今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。 「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」 そう言う俺に、 「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」 と笑顔で言い返して来た。 「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」 「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」 パタン 俺は玄関の扉を閉めた。 すると直ぐに バンバンバン!!!! と扉を叩く音 『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』 そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。 はぁ……勘弁してくれよ…… 近所の人に誤解されるだろ…… 俺はため息をつきながら玄関を開ける。 そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。 腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

偶然PTAのママと

Rollman
恋愛
偶然PTAのママ友を見てしまった。

処理中です...