Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶

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第1章

第二十六話 ~俺の結婚に対して、お袋と親父から耳の痛い言葉を貰った~

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 第二十六話



「カトレアおばさんにミゲルおじさん。お久しぶりです。ラルフさんは先週会ったばかりよね」
「そうだね。契約書類の確認印を貰いにレイドさんを訪ねた時に挨拶をさせてもらったかな」

 ミルクはそう切り出すと、俺たちの前に出て話を始めた。

「まぁこうしてベルが結婚するって話は私もついさっき知ったことよ。全く。私と結婚するって約束してたのに、王都でこんな綺麗な女性を手篭めにしてるとは思わなかったわ」
「あはは……」

「でもベルからは私も妻にしてくれると言う話を貰ったわ。これに関してはリーファもツキも容認してることよ。まぁ誰が正妻で誰が側室かはこれからじっくりと話し合いが必要になってくるとは思うけどね」

 ミルクはそう言うと、俺たちの方を向いてニヤリと笑う。

 それを受けたリーファとツキは『受けて立つわよ』と言うような表情で応えていた。

「あと、今夜は私がベルと一緒に寝ることになってるの。ふふふ。ベルは特別なことはするつもりは無いとは言ってるけど、別に誘惑しちゃいけないとは言われてないからね?」
「ベルフォードは私と『初めて』をすると契約をしてますからね。それを反故にするような真似はしないと信じてますよ?」
「ツキの信頼を裏切るような真似はしないと誓うよ。それに、リーファやミルクにも言えることだけど、結婚をするまでは一線を超えることはしないと決めてるんだ」
「理性的なのか、本能的なのかベルはよくわからないわね」

 り、理性的な人間でありたいとは常々思ってるよ……

 俺がそう思っていると、今まで沈黙をしていたお袋が口を開いた。

『リーファさんにツキさん。私はベルフォードの母親のカトレアと申します』

 そう言って立ち上がり、一礼をしたお袋にリーファとツキは礼を返す。

『冒険者としての息子を身近で支えてくれた二人には母親として感謝の言葉しかありません。こうして息子が五体満足でここに居られるのは貴女方を含めた色々な人たちの助けあっての事と思います』

 そうだな。こうして五体満足で引退出来たのは、色々な人の支えがあっての事だ。
 だからこそ、引退した身だから出来ることをしたいと思っている。
 これまで受けてきた恩を少しでも返していきたい。

『ベルフォードは冒険者としては最高位のSランクを拝命するなど一流かと思います。ですが、家庭を持つ男としては未熟かと思います。家族に対して手紙すら出さない。優しいと言えば聞こえが良いかもしれませんが、優柔不断な性格の人間です。そんな息子をこれからもよろしくお願いします』

 ははは……痛いところをつかれてる……
 と言うか連絡をしなかったのは本当にダメだったみたいだ……
 気を付けないとな。

「彼とは二十年の時を冒険者として共に過ごしてきました。ベルの良い所も悪い所も知っているつもりです。お互いを補えるような家庭を作っていきたいと思います」

 リーファは珍しく敬語でそう言うと、お袋に言葉と礼を返した。

「リーファは家事が出来ない女性ですからね。私がベルフォードに美味しい食事を毎日振る舞いたいと思います。『お義母さま』もしよろしけれ、ラドクリフ家の味というのを教えて貰っても良いですか?」
『ふふふ。良いですよ。ベルフォードは子供の頃からハンバーグが好きな子でしたからね。秘伝のソースの作り方も教えましょう』
「ありがとうございます。それはとても嬉しいです!!」

 ツキはお袋から料理を教えて貰う約束を取り付けていた。

 とりあえず、上手く行きそうでよかったな。

「なぁ、親父からは何かあるか?」

 俺がそう言うと、親父は苦笑いを浮かべながら言葉を返す。

『突然の事だったから驚いていたけど、ようやく事の次第が飲み込めたよ』

 親父はそう言うと、椅子から立ち上がってリーファ達の前に立った。

『ベルフォードの父親のミゲルです。家督は息子のラルフに譲っているから今はのんびりと余暇を過ごしている感じかな』

 話をそう切り出したあと、気まずそうに親父は言葉を続ける。

『まぁ、ベルフォードについてはカトレアさんが語りきってしまったからね。私からは特に言うことは無いかな。情けない話だけど、ベルフォードがこの家に居る時は仕事に追われていて、育児に携われなかった。私よりも君たちの方が息子のことを知っているとすら思っている』
「気にするなよ親父。そうして仕事をきちっとやってくれたからこそ、俺もラルフも何不自由無い生活をさせてもらったんだからな」
『ははは。そう言ってくれると救われるよ』

 そして、親父はリーファとツキとミルクに頭を下げる。

『カトレアさんが言っていたベルフォードのダメなところ。優柔不断なところは私に似てしまったんだと思う。しかしね、息子がしっかりと悩んで出した答えは間違ってはいないと思うんだ。だからこうして息子が君たちと結婚すると言う結論を出したのは間違いでは無いと思ってる』

 親父はそう言ったあと、少しだけ視線を逸らして言葉を続ける。

『だけど、もしかしたら君たちのことを悪くいう輩は居るかもしれない。ハーレム野郎と罵る人間が出てくるかもしれないね』
「ははは……ありえないな話じゃないな……」

「結果としてはベルフォードのハーレムを認めてしまってます。とても遺憾です」
「まぁ、英雄色を好むとも言うわ。ある程度は許容してるわよ」
「私はベルの隣に居られるなら、そこに何人居ても良いとは思ってるわ!!」

『でも、私たちは君たちのことを心から祝福しているという事を、知っていて欲しい。結婚おめでとうベルフォード。幸せな家庭を築いて欲しい』
「ありがとう親父。その言葉はとても嬉しい」

 こうして、俺は両親に結婚の報告をすることが出来た。

 そして、レオンさんが用意してくれたシチューに舌鼓を打ち、俺の冒険者時代の話などもしながら楽しく夕飯を食べ終えた。

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