上 下
22 / 52
第1章

第二十一話 ~ファーストフードを食べながらこの後の予定を話していった~

しおりを挟む
 第二十一話




「お待たせ。出来たてだから熱々だと思うよ」
「ありがとう、ベル。店員さんもご苦労さま」
『いえ。この位はさせて下さい』

 リーファとツキの待つテーブルに食事を置いたあと、店員さんさ一礼をして仕事場へと戻って行った。

「わぁ、これがハンバーガーとフライドポテトですか!!とても良い匂いがしますね!!」
「俺とツキが頼んだのはテリヤキバーガーって言う、一番人気のやつだな。テリヤキソースとマヨネーズが美味しいんだ」
「私が頼んだのはベーコンレタスバーガーね。テリヤキソースは美味しいとは思うけどちょっと重いのよね」

「なるほど。同族嫌悪という奴ですね」
「……どういう意味よ、ツキ」
「ははは……」

 そんな話をしながら、ハンバーガーが包まれた紙を広げていく。

「こうやって広げて、手に持つとソースで手が汚れないから、真似してご覧」
「はい!!わかりました」

 ツキは俺の持ち方を器用に真似て、ハンバーガーを食べる準備を整える。
 箸の使い方もそうだけど、ツキは飲み込みが早いな。

「口の周りが汚れるのはご愛嬌だと思って、後は恥ずかしがらずに大きく口を開けて食べるのがコツだな」
「なるほど、理解しました!!」

 ツキはそう言うと俺の食べ方を真似して大きく口を開けてテリヤキバーガーを一口頬ばった。

「こ、これは……美味しいですね!!」
「ははは。気に入って貰えて嬉しいよ」

 マヨネーズが嫌い。という人も居るからな。
 ツキが美味しそうにテリヤキバーガーを頬張る姿を見て、俺は安堵の息を吐く。

「ふふふ。口の周りがべちゃべちゃよ。子供みたいね」

 リーファはそう言うと、紙のナプキンでツキの口の周りについたテリヤキソースを拭った。

「あ、ありがとうございます……」
「そんな気にする事はないわよ。私も初めて食べた時はそうなったわ」

 そんな二人のやり取りを見ながら、俺はコーラを一口飲んだ。
 うん。このシュワシュワが美味しいよな。

「次はこのコーラという飲み物ですね。甘くてシュワシュワしてるという話ですが、真っ黒な見た目で沸騰したお湯みたいに泡が出てます。本当にこれは飲み物なんですか……」

 ツキはそう言ってコップに注がれたコーラを見ながら訝しげな表情をしていた。

「ははは。見た目はアレかも知れないけど、飲んでみたら美味しいから」
「わ、わかりました。何事もチャレンジです!!」

 ツキはそう言うと、コップを手に取ってコーラを一口飲んだ。

 すると、彼女の目が驚いたように見開かれた。

「こ、これは……あ、新しい感覚です!!」
「びっくりして吐き出さなかったのは偉いわね」
「そうだな。エリックは驚いて吐き出したからな」

 シルビアとエリックを連れてここに来た時があって、あいつもツキと同じように、俺と同じものを頼んでいた。

 マヨネーズが少し苦手だったというのがわかったのと、コーラの炭酸がダメだったらしく、口から吹き出してしまっていた。

 ははは。あの時は本当に驚いたけどな。

「最初は人の口にする物では無い様な見た目に嫌悪してましたが、一口飲んだら驚きました。こんなに甘くて美味しいんですね。炭酸というのも好きになりました」
「ははは。ちなみに炭酸は時間と共に無くなってしまうから、早めに飲んだ方が良いからな」
「そうなんですね。わかりました!!」

 ツキはそう言うと、コップに注がれたコーラを少し多めに飲んだ。

「あ、そんなに多く飲んだら……」
「え、どうしたんですかベルフォー……けぷっ」

 口から可愛らしいゲップを吐くツキ。
 彼女は恥ずかしそうに顔を真っ赤にする。

 そんなツキを指差しながらリーファが笑う。

「あはは!!コーラを慌てて飲むとゲップが出るのよね。女の子としてはこれは恥ずかしいわよね」
「むー!!煩いですよ、リーファ!!初めてなんですから仕方ないですよ!!」
「ははは。そんなに恥ずかしがらなくても、可愛らしいゲップだったよ」

 俺がそうフォローを入れたが、ツキとしては嬉しくは無かったようで、目を吊り上げながら俺にも声を荒らげた。

「そんなのは嬉しくありませんよベルフォード!!」
「そ、そうか。ごめんなツキ」

 そして、そんなやり取りをしながら俺たちは昼ごはんのファーストフードを食べ切った。



「それで、この後のことなんだけど。ここから俺の故郷までは森の中を進む感じになるんだ」
「ベルの故郷は意外と田舎だって聞いてたけど、馬車が出てないのはやっぱり大変なのかしら?」
「そうだな。でもまぁここから歩いて五時間位だからな。大した距離じゃないだろ」
「ご、五時間ですか!!??」

 俺がサラッとそう言うと、ツキが少し驚いたように声を上げる。

「ははは。やっぱり驚くよな……」
「森の中を五時間進むのは冒険者なら大した事じゃないけど、一般市民には辛いわよね」

 リーファはそう言うと、イタズラっぽい笑みを浮かべながらツキに提案をした。

「ツキは無理しなくていいわよ?刀の姿になれば疲れないと思うから」
「大丈夫ですよリーファ!!それに、刀の姿になったらまたベルフォードに抱きつくつもりですよね!!そうはさせません!!」

 ツキは俺の右腕を抱きしめながらリーファを威嚇していた。

「まぁ、森の中を進めば魔獣と出会うこともあるからな。個人的にはツキには刀の姿で居てもらいたいと思っているけど」
「……そうですか。それでしたら仕方ないですね」

 ツキはそんな台詞を残して刀の姿に戻った。

『あくまでも私がこの姿になるのはベルフォードを魔獣から守る為ですからね!!リーファとイチャイチャすることを容認した訳では無いですから!!』
「ははは。わかってるよ」

 頭の中に響くツキの声に、俺は少しだけ苦笑いを浮かべながらそう答えた。

「それじゃあお腹も落ち着いてきたから店を出ようか」
「ふふふ。そうね。それじゃあベルの故郷へ向かいましょうか」

 リーファはそう言うと、ツキに見せつける様にして俺の腕を抱き寄せた。

『やはり!!やはり!やはりこの女は油断ならないです!!もう既にベルフォードとくっついてるじゃないですか!!』
「邪魔者は居なくなったわ。先を急ぐわよ」
「じゃ、邪魔者は酷くないか……」

 さっきのテリヤキソースを拭うところなんかを見ると、仲良くなれるようにも見えたけど、難しいみたいだな……

 そんなことを思いながら、俺はセルティックの町を後にして、故郷へと向かう為に森の中へと足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...