Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶

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第1章

第十二話 ~人の姿になったツキのことを一体何人に説明すれば良いのかわからないと思った~

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 第十二話



「お疲れ様でしたベルフォード。ふふふ。私の国籍が貰えるというのはとても嬉しいことですね」
「そうだな。これでツキと結婚することが法的に出来るようになったな」

 謁見の間を後にした俺とツキは、そんな会話をしながら城の中を歩いていた。
 ツキは刀の姿には戻らずに、人の姿で俺の腕を抱くようにしている。

 刀とは思えないような柔らかさが腕から伝わってくるので、とても理性に良くない……

 まぁ、こんな城の中で何かをするということは無いが、この姿を見られるのは少し面倒だとは思ってしまう。

「べ、ベルフォードさん!!そ、その……綺麗な女性はどちら様ですか!!??」
「……やっぱりこうなるか」

 何となくこうなる気はしてたんだよな。
 と言うより、ツキはこうしようと思ってた節があるな。

 目を見開いて俺たちの前に姿を現したスフィ。
 それを見たツキはスっと身体を彼女の前に出した。

「お初にお目にかかります。スフィア王女。私はベルフォード・ラドクリフの『妻』のツキです。以後お見知りおきを」
「つ、つ、つ、妻ですか!!??ベルフォードさん!!一体どういうことですか!!!!」

 ふわりと微笑みながら優雅に一礼したツキを見たスフィは、驚愕の表情を浮かべながら詰め寄ってきた。

「彼女は俺の愛刀の月光なんだ。俺と結婚するためにこの姿になったんだよ」
「ちょっと言ってる意味がよくわかりません!!」
「ははは……まぁ、確かにそう思うよな」

 スフィの言いたい事はよくわかるが、こうとしか言いようがないからな。

「ベルフォードの言っていることは真実ですよ。そして、貴方のお父様のリーベルト国王から国籍を頂けることになりました。そうなれば名実ともにベルフォードの妻になれますね。ふふふ。今から楽しみです」
「ほ、本当にベルフォードさんの刀なんですか……し、信じられないです……」
「まぁ俺も最初は驚いたよ。ちなみにツキがこの姿になったのを見せたのは、スフィが三人目だよ」

 俺がそう言うと、彼女は少しだけ苦笑いを浮かべながら言葉を返す。

「そ、それは喜んでいいのかよくわかりませんね。ですがそうですか……わかりました」

 スフィはそう言うと、ツキの前に歩いて行きふわりと頬笑みを浮かべた。

「ツキさん初めまして。この国の王女のスフィアと申します。ベルフォードさんには『長きに渡りたくさんお世話になりました。それと素敵な思い出も数え切れないほどあります』」
「…………なるほど。そうですか」

 彼女の言葉に、ツキはニヤリと笑った。

「今後もベルフォードさんには色々とご指導ご鞭撻を頂きたいと思ってますので、よろしくお願いします」

 そう言ってスフィはツキに向かって手を差し出した。

「こちらこそよろしくお願いしますね。スフィア王女」

 ツキもそう言って彼女の手を取り握手をした。

 ……なんだろう。一見すると和やかなのに、火花が見える。

「ではこの場は失礼しますね。スフィア王女」
「はい。わかりました。では何時でも来てくださいね、ベルフォードさんにツキさん」
「さよなら、スフィ。またな」


 そして、そんなやり取りをした後、俺とツキは城を後にした。

 城門の衛兵にもツキの事を尋ねられたが、同じような説明をした。
 彼らは驚きはしたものの納得はしてくれたようだった。


「ふふふ。スフィア王女はなかなか見所のある女性ですね。私は嫌いではありませんよ」
「そうか。ツキがそんなことを言うなんて珍しいな」

 自宅へと向かう途中でツキは少しだけ笑いながらそう話をしていた。

「きちんと私の目を見て話をしてましたからね。ふふふ。負ける訳には行きませんね」
「ツキが楽しそうで良かったよ」

 そして、そんな話をしていると自宅の前までやって来た。

「……ん?家の前にリーファが居るな。何かあったのか?」
「…………ち、女狐が居ますね」

 め、女狐って……

 俺とツキの目の前に、私服姿のリーファが姿を現した。
 そして、彼女は俺とツキを見てかなり不機嫌そうに目を細めた。

 まぁ……その対応は普通だよな……

「……ねぇ、ベル。その女性は一体誰なのかしら?」

 苛立ちを隠せないリーファのその言葉に、ツキは微笑みながら言葉を返す。

「この姿では初めましてですね、リーフレットさん。私はベルフォードの『妻』のツキです。よろしくお願いします」
「妻ですってぇぇぇえ!!!???」

 ツキの自己紹介に、案の定驚愕の表情を浮かべるリーファ。

 一体あと何回このやり取りをすればいいんだろうな……

 俺は少しだけため息をつきながら、今後のことを考えて頭が痛くなってきた。
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