十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第3章

永久side ②

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 永久side ②



『私の愛しい霧都との……蜜月の時間の話を……ね』


 教室のスピーカーから聴こえてきた凛音さんの声。

 私は自分の予想が当たっていたことを知りました。

「はぁ……凛音ちゃん。これは手段を選ばな過ぎじゃないかな……」

 凛音さんの言葉に軽く額を押えながら、雫さんがそう呟きました。
 そして、流さんもそれに同意を示しました。

「俺もそう思うかな……でも、かなり強力な一手ではあると思ってる」

 そうです。教室には私たち三人しか居ませんが、校舎やグラウンドには依然たくさんの生徒たちが残っています。この放送はきっとほぼ全校生徒に聞かれると見て間違いありません。

 すると、スピーカーからは耳を覆いたくなるような会話と行為の音声が流れてきました。

『ねぇ、霧都。もう一度あの日の言葉を言ってくれるかしら?』
『……わかった』

 あの日の言葉。きっと霧都が凛音さんに『告白』をしたシーンのことでしょうね。

『俺、お前のことがずっと好きだったんだ。ただの幼馴染じゃなくて、お前と恋人同士になりたい。だから俺と付き合ってくれ』
『ふふふ。嬉しいわ。霧都。あの時は自分の気持ちがわかってなかったの。だから霧都に辛い気持ちをさせてしまったわ。反省してるわよ』
『……そうか』
『今は……いえ十年前から……私も霧都が好きよ。愛してる。私は霧都と『本当の家族』になりたいと思ってるわ』

『本当の家族』ですか。
 凛音さんの独りよがりの考えの『血の繋がった家族』では無く、本当の意味で霧都と家族になる。
 つまり霧都と『結婚』をするという事。

『……そうか』
『ねぇ、霧都。いつものようにキスをして欲しいわ』

『いつものようにキスをして欲しい』
 つまり、この言葉は『凛音さんとのキスはこれまでに何度もしてきた』という意味。
 放課後。家が隣同士の二人ですからね。
 私がいないところではやりたい放題ですね。

『……わかった』
『愛してるわ霧都』
『……俺も愛してるよ凛音』

 そして、スピーカーからは二人がキスをする音が流れて来ました。

「いや……凛音ちゃん。これは流石に反省文じゃ済まないと思うんだけど……」
「南野さんがここまで覚悟してるとは……その、北島さん。霧都が本意じゃないってのはわかってるんだよね……」
「はい……きっとこういうことになってるんだろうな。とは予想してました。覚悟もしてました。だからこそ……」

 私はそう言って、スピーカーに視線を向けました。
 そこからは、絶え間なく凛音さんと霧都が『形だけの愛の言葉』を口にしながらキスをする音が流れています。

「霧都の口から……話をして欲しかったんです。こういうことになってるんだ。って話を」
「そうだよね……でも桜井くんの気持ちも、何となくわかるかな」
「そうだね……霧都の性格だから、北島さんに対して『申し訳ない』って気持ちだったんだと思う。決して『保身』だけじゃないと思うんだ」

 私はそう言うお二人に、しっかりと首を縦に振りながら言葉を返しました。

「はい。それはわかってるつもりです」
「それで、永久ちゃんはこの後どうする?お兄ちゃんから連絡があって……桜井くんは凛音ちゃんの居る放送室に向かったみたいだね」

 スマホを見た雫さんが、霧都の向かった場所を教えてくれました。

「はぁ……私、桜井くんを悪く言いたくは無いけど、向かう場所を間違えてないかなぁ……」

 雫さんはそう言うと少しだけ視線を外に向けました。

「永久ちゃんがここに居るってのは桜井くんも知ってるんだよ?だったらさ、真っ先にくるべき場所はここだと思うんだけど」
「……まぁ、霧都には霧都の考えがあっての事かもしれないから。でも雫さんの言うように、来るべき場所はここだったと俺も思ってる」
「とりあえず。私は凛音さんの居る放送室へ向かいます。ここに居ても霧都に会うことが出来ませんからね」

「うん。確かにそうだね。永久ちゃん。私たちは何があっても二人の味方だからね!!」
「俺も雫さんと同じ気持ちだよ。それと霧都もこれから大変だと思うからね。俺は霧都のフォローをしていくよ」
「雫さん、流さん……本当に……本当に……ありがとうございます……」

 私は親友の言葉に涙が出てきました。
 そして、その涙を拭ったあと、席から立ち上がり、凛音さんの居る放送室へと向かうため教室を後にしました。

「頑張って、永久ちゃん!!」
「俺たちは二人がちゃんと仲直り出来ると信じてるから!!」
「はい!!必ず霧都と二人で……ここに帰ってきます!!」

 こうして私は『初めての校則違反』の『廊下を走る』という行為をして放送室へと走りました。
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